第一話 1-11

 次の瞬間、覚えたばかりの雷撃魔法がアベルの全身を貫いていた。

 その雷撃は本来初級魔法に分類される、ごく微弱な電流で相手を麻痺させる、あるいは痺れによって動作を鈍らせ反撃の意思を削ぐ程度のもので、軽い子供のいたずら程度のものだと魔術師の間では認識されている。

 しかしながら魔法を食ったアベルはその後一昼夜、意識を失った。明らかに魔力が暴走していた。

 一時、あまりの威力にネイア自身、気が動転して失神したアベルの周りを右往左往していたが、修道女の手当てで命に別状がないとわかり、力が抜けたようにその場に座り込んだ。


「……ったく、ひどいや。せっかく励ましてやったのに……」


 翌日意識が戻ったアベルは、全身にまだ残る軽い痺れを感じながらそう、憎まれ口を叩いたりしたが続く言葉で、


「でも、やっぱりネイアはすごいや。きっと偉い魔術師になれるって」


 そう言って、いつもと変わらない笑顔を受けた。

 それ以来、吹っ切れた位は勉学に勤しむようになった彼女は、メキメキ頭角を現し、その秘められた才能を開花させていった。

 そんなネイアに対して、からかいや中傷の言葉を浴びせた者たち、大半がその能力や容姿に嫉妬を覚えた貴族の子弟(大半が男)は悉く、ネイアの【魔法実験】の被験者、或いは標的となり後日【雷の愛娘】の名を広く、学院内外に伝播させていくこととなる。

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