第一話 1-8

 入学当初、またまた他の魔法・魔術技能も未熟であった頃は、そのことを同学年の者達にからかわれ、なまじ入学時に首席であったことに対する他者の劣等感、特に有力の貴族の師弟が多く通う学院の特色上、豪商の令嬢とは言え、一般庶民に過ぎない彼女に対して、陰湿ないじめへと発展していくのは無理からぬことだろう。

 自信を無くし、意欲も失いかけた頃。夏休みを利用して生前の母が管理運営していた、シルメニア孤児院に避暑を兼ねた休暇を過ごす為、出かけた時のことである。

 ネイアは優秀な治癒術師だった母との思い出が深いこの場所で、自分を見つめ直すつもりでいた。

 母に憧れ、自分も治癒術師として誰かの役に立ちたい、そう夢を描き、長じて志となって入学した学院だったが、いまだに初級魔法すら満足に扱えない。

 そんな自分を不甲斐なく思い、孤児院に住む幼馴染の男の子、アベルについ何の気無しに漏らしてしまった。


「ふ〜ん……案外つまんなさそうだねえ、魔法学校ってさ」


 2歳ほど年下のアベルは学校には通っていない。

 孤児院の敷地内にある寺院。そこに勤める修道女に、普段は読み書きをおそわっている。

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