有名配信者の配信
夜。空が暗澹としている中、突然その配信は始まった。
プロゲーマーであり有名配信者でもある『桜ヤミ』のゲリラ配信に視聴者の多くはコメント欄で盛り上がりを見せ始める。
【待機っっ!】
【マジで待ってた】
【今日のプレイ楽しみ】
好意的なコメントが押しよせる中、桜ヤミは声高に挨拶した。
視聴者に向けて、自分の配信を待ってくれていたファンに向けて。
「待機コメントありがと~皆。こんヤミ! 今日もFPSやってこうと思うよ」
桜ヤミのFPSの実力は紛れもない本物。
ヤミは前線で攻撃特化のスタイルを取るプレイングを取るため、その好戦的な行動に魅せられる視聴者の数も少なくない。
現にコメント欄では—――。
【うおおおおおおおおお】
【画面、酔わない様に頑張る(笑)】
【ヤミちゃんのプレイング助かる】
など、加速を見せそのコメントのどれもが期待に満ちている文言である。
ヤミはコメントに感謝の言葉を伝えながら、FPSの画面へと移行した。
配信者、プロゲーマー、そしてFPS。
この三つが揃えば話は自然と今トレンドとなっている『配信者大会』について意見を求めるコメントが多く散見される。
【そういえばメンバー集めは順調ですか?】
誰と組むことになったのか。
視聴者が一番気になるのはそこだろうが、それを聞くのは例年タブーとされているためそのことを聞く様な視聴者はいなかった。
ヤミは『う~ん』と唸りながらも配信者大会について言及する。
「メンバー集めは……うん、順調。楽しみにしといて。ここまででこの話は終わりするけど……皆、聞いてくれない?」
配信者大会についての話を切り上げつつ、ヤミは話を自身のプライベートなものへと変えた。
視聴者もどこかテンションの高いヤミの話を聞きたいのか、【聞かせて】とコメント欄の意見は統一される。
それを確認してから、ヤミは柔和な笑みを浮かべた。
「ありがと。皆。それじゃあ話すんだけど――」
ヤミの話したことは、絶交した友達と再会してしまったこと。
それから、ある女性が現れ助けてくれたこと。
生意気だと思ったけど、それが嬉しかったこと。
そう、今日に起きた久道との一件をヤミは視聴者に共有したのだ。
ある女性、とぼかしているのは企業に属している配信者であるため色々と発言には制約が設けられるからに他ならない。
【良かったね】【その女性ヒーローじゃん】といった意見が押し寄せられ、ヤミは少し羞恥に顔を染めた。
気持ちを高揚感に包みながら、ヤミはFPSのゲームで活躍を見せ、次の試合に移行しようとしたところで、唐突に転機は訪れるのだ。
「えっ……!?」
コメント欄の盛り上がりに、桜ヤミは反応する。
試合前に味方となるプレイヤー名。それが、視聴者の多くが知っている配信者ザクのIDであったのだ。
【神回きたこれw】
【ザクやんけ(笑)】
【コラボしてくれたら嬉しいな】
など、コラボして欲しいとの意見が寄せられていた。
ヤミもザクの名は知っていた。人の名前を中々覚えられないヤミでもそれは当然のこと。配信者大会に突然参加することになった配信者。
そう、ヤミはザクのことを認識していた。
「許可取れたら、ね。無理強いはできないから……」
そのヤミの発言に視聴者の多くは【やった】と嬉しがる意見を見せる。
その反応からヤミはザクに発言できるかの旨をメッセージで伝えるのだ。
……まさか、それが両者の墓穴を掘ることも知らずに。
♦♢♦
「ん? VCできるかってメッセージが届いてるな。相手は配信中か……」
と、ここで気軽にVCをつける久道であるのだが……このときはまさかその相手は鈴香であるなんて思いもしないのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
今回は少し短めです。
次回はコラボ回となります‼︎
『最凶の悪役貴族に転生したけど、美人令嬢達に目をつけられて詰んだ件』
https://kakuyomu.jp/works/16817330652056427406
こちらも書いておりますので、よろしければお願いいたします。
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