第16話 オコな狼と哀れな白兎

 ドロドロになった顔を綺麗にして、収納から薬草を取り出す。


【名前】スタミナーダ草(S)

【性能】回復力150・耐久力95

【備考】体力が回復する。聖域の中でしか育たない。美味しい。


 色々と実験して判ったが、耐久力はパーセントっぽくて、素材の場合は0になると粉々になってしまう謎仕様だ。


 ここら辺はゲームチックで、ポーション等を作る時に粉々にしてしまうと失敗ファンブルとなるのだ。


 耐久力をなるべく減らさず擂り潰すと、回復力を維持出来るから、この辺りが能力の有無で変わるのかも。


 あの激マズなマジカル草をどうにかしようと試してみたんだけど、やはり調薬や錬金術を持っていないと劇的な改善は無理だった。


 でも青汁くらいの味にはなったから、好きな人なら大丈夫だよ。


 スタミナーダ草は何故かオ●ナミン●のような味なので、そのまま食べる。


 漸く起き上がれる状態になったので、さっきから見ないようにしていた問題に向き合う事にした。


「えーと、ネージュさん?そのさっきからゲシゲシしてるそれは?」

『アホバカ白ウサギなの!』

「あ、うん。兎なのは見たら判る(?)んだけど……なんで蹴ってるのかな?」


 オレの知ってる兎よりかなり大きいけど、形はロップイヤータイプの兎だね。


『フィカスに怪我をさせたなの!だからお仕置きなの!』

「そうなんだ…でもほら、いつもなら一撃でバサッとしてるでしょ?」

『これは美味しくないなの!だから殺しても食べられないなの!』


 あ、うん。ネージュの殺す基準は、食べられるか食べられないかなんだね。


 ネージュに蹴られて、上空に打ち上げられては落ちてくる兎に、何とも言えない気持ちになる。


 この兎のせいで死にかけたから殺して欲しいと言う訳ではないが、こんな風に嬲るような事をするのなら一思いにやって欲しいんだよな。


 キューキューと哀れに鳴いているのも居たたまれないし。


「ネージュ、オレは結果的に生きてるし、それくらいで止めてやってくれないか?」

『嫌なの!ネージュの気がおさまらないなの!』


 おおう。オコなネージュたんが可愛いんですが。

 狼だからシュッとしてるはずの顔を、プンスコとホッペを膨らませているのだ。


 クッ…オレの中の封印が目覚めてしまう。


 ネージュの可愛さにヤられている場合ではない。

 兎が大分弱っているのだ。


「ネージュ。強者は弱者をいたぶるような事をしないんだよ。寛容に許してやる余裕がカッコいいんだ」

『むむ……ネージュはカッコいい強者なの!だから白ウサギの事もカンヨーに許してやるなの!』


 ホッ、何とか言いくるめられたようだ。


「キュ…」


 白兎はボロボロになってるが、骨も折れてないし血も出ていない。

 コイツ打たれ強いな。


 弱っている今なら鑑定出来るかも。


【名 前】

【種 族】エンシェントラビット

【年 齢】16歳

【性 別】雌

【レベル】136

【能 力】突進Lv.8 牙突Lv.4 噛砕Lv.2 跳躍Lv.7 !@¥=#*

 身体強化Lv.6 回復強化Lv.5 気配隠蔽Lv.6 毒耐性Lv.5 %§&<¢

【契約者】フィカス



 ふんふん。名前がないのは野生だと当たり前みたいだから良いとして。


 白兎はエンシェントラビットなんだね。

 エンシェントって何か凄そうなんだけど…

 てっきりヘルラビットの亜種かと思ってたわ。


 16歳はネージュより歳上なんだけど、エンシェントって割りに若くない?

 いや、種族名なだけで長生きしたからエンシェントな訳ではないのだろう。


 雌か…魔物にも性別があるんだ…まぁそこはどっちでも良いか。

 レベルがネージュより高いのに、ネージュの方が強いんだな。

 いや年齢が兎の半分なのに、レベルがそれ程変わらないネージュが凄いのか?


 能力のレベルは年齢の分かどうか知らないが高いな。

 この突進でオレは吹き飛ばされたのか。


 身体強化と突進のコンボで即死しなかったのは運が良かったよ。

 レベルを上げといて良かったわ。

 流石に即死したら回復魔法ではどうにもならないだろうし。


 兎のくせにネージュと同じ牙突や噛砕があるのが怖いな。

 ヘルラビットも同じような牙があるから、この能力を持ってるんだろうなぁ。


 未だに魔物の鑑定は知ってる魔物なら名前とレベルが見えるくらいで、死んでしまうと◯◯の死体となってステータスは消えてしまうので、能力とかは知らないんだよな。


 回復強化があるから、こんなに打たれ強いのか…


 跳躍とか兎っぽいのもあるが、やっぱり文字化けがあるのは何でだ。

 まだ鑑定レベルが足りないのか。


 この気配隠蔽のせいでネージュに気付かれずに攻撃出来たんだな。

 不意打ちされたら簡単に死ねるから、今後は注意しないと…ネージュさん頼りですが。


 毒耐性って、毒を使う魔物がいるならヤバいな。

 毒を持つ草や果実は今のところ見てないが、あるなら気をつけないと。


 それから…見なかった事にして良いかな?

 駄目?


 ……何で契約しちゃってるの!?

 オデコ?突進でオデコが触ったからなの!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る