第15話 白兎襲来

 あれから7日が経った。

 今のステータスがこれだ。


【名 前】フィカス

【年 齢】10歳

【性 別】男

【レベル】52

【能 力】鑑定Lv.6 収納Lv.6 隠蔽Lv.6 回復魔法Lv.5

 戦闘術Lv.5 生活魔法MAX 念話Lv.4 土魔法Lv.5

 火魔法Lv.4 風魔法Lv.4 光魔法Lv.4 水魔法Lv.4

 聖魔法Lv.2 精神耐性Lv.3 苦痛耐性Lv.5

【契約獣】フェンリル エンシェントラビット



 新しく水魔法と聖魔法と精神耐性と苦痛耐性を覚えたよ。

 水魔法はウォーターを、聖魔法はクリーンを使ってたからだと思うけど、精神耐性と苦痛耐性は契約獣が増えた事と関係する。


 そう、あれは3日前、いつもの様にネージュと一緒に探索と狩りに出掛けた時の事だった。


 レベルが40を越えた辺りから、ネージュに乗らなくてもある程度の速さで走れるようになったので、少し遠出するようになったんだよ。


 その周辺に出て来る魔物は同じヘルほにゃららでもレベルが低いせいか、鑑定が少し出来るようになっていた。


 レベルは80~100くらいで、もちろんオレ1人では倒せないから、相変わらずネージュに弱らせて貰ってから攻撃をするやり方で、レベル上げをしつつ素材採取をしていた。


「ストーンバレット!エアスラッシュ!」


 火魔法だとヘルベアーの毛皮が傷むから、最後はエルダートレントの枝から切り出した棒で撲る。


「グアアッ!」


 ドカッと音を立てて頭に棒が当たると、ヘルベアーが苦しそうな声を出す。


 ようやくダメージを与えられるようになっていたが、まだまだオレの攻撃では倒れない。


「はぁ、はぁ…ネージュ、お願い」

『わかったなの』


 爪撃の一撃で事切れたヘルベアーを見ながら、罪悪感が出て来る。

 これじゃあ、徒に嬲り殺しにしてるみたいだ。


 攻撃が通らなかった時は感じなかったが、血が出たり叫んだりされて、やっと生き物を殺している事を実感した。


 ネージュが倒した時も、ライオンが狩りをしているのを見てる様な感覚で、死体の状態を見て吐いたりはしたが、罪悪感なんてなかった。


 魔物は生き物を見ると襲ってくるから倒さなければならないと解っているし、オレが生きるためでもあるのは解っていても割り切れない。


『フィカス元気ないなの。ネージュが元気になる物をあげるなの』

「ネージュ…」


 こんな情けないオレを慰めてくれるのか。


『クマのコレ食べたら元気出るなの!』


 ネージュが切り取ったブツを見て叫ぶ。


「ぎゃー!!」


 そりゃ日本人も熊肉を食べてた頃もあったかもだけど!

 でもオレは絶対に食べないからな!


 睾丸なんて!


 感傷的な気分が吹っ飛んで、ある意味元気になったけどさ。


 熊の立派なタマタマはネージュが食べてしまったので、暫くオレを舐めるの禁止だと言い聞かせてしまった。


 覚えたばかりの聖魔法の浄化で、口の中を綺麗にしても気分の問題だからね。


「キュキュ」


 だからその声が聞こえた時は完全に油断してたんだ。


「え?」


 ドンッ!

 衝撃と共に吹き飛ばされる。


「あがぁッ」

『フィカス!』


 何だ?何が起きたんだ?

 頭がクラクラする。


『この!白ウサギのくせにフィカスに何するなの!』


 白兎?

 確かめたいのに身体が動かない。


「あ、あぐ…」


 熱い…痛い……

 後から物凄い痛みが襲って来た。

 熱さと痛みを感じる箇所に何とか目を向けると、腹から下が千切れかけている。


「あ、あ、あ…」


 溢れ落ちる内臓の色は非現実的なのに、痛みは本物で息が出来ない。

 …こんな所でオレは死ぬのか?


『フィカス!死んじゃ嫌なの!』


 ネージュ…ごめん…一緒にいるって言ったのに…


 …………

 ………

 …


 ふと目が覚める。


「あれ?」


 オレは死んだんじゃなかったのか?

 思わず起きようとしたが力が入らない。


『フィカス!良かったなの!』

「あ?ネージュ、オレはどうしたんだ?」

『白ウサギにやられたなの!でもネージュが治したの!』


 そうか、ネージュの回復魔法で助かったのか。

 回復魔法で傷を治すと体力を使うから、力が入らないのも頷ける。


 震える手でなんとか腹を触ると血糊がベットリ…ではなく、よく気が付くネージュさんがクリーンで綺麗にしてくれていたので、破れた服から覗く肌はちゃんとくっついていた。


 ホッと息をついて、ネージュに感謝する。


「ありがとな。ネージュのお陰で死なずに済んだよ」

『違うのなの。ネージュのせいなの。白ウサギの気配に気付かなかったから、フィカスが怪我をしたなの』


 泣きそうなネージュに胸が痛む。


「そんなのネージュのせいじゃないよ。そもそもネージュがいなきゃ、もっと早くオレは死んでいたよ。その白兎どころか狐や熊にだって勝てないんだから。ネージュのお陰で生きてるんだよ」


『フィカスは死なないなの!ネージュが守るなの!』

「ああ。頼りにしてるよ。だから泣かないでネージュ」


『ぐずっ。泣いてなんかないなの!ネージュは強いフェンリルなの!』

「そうだな。ネージュは強くて可愛いフェンリルだよ」


 あ…舐めるなって言ったのに…

 まぁ、しょうがない。

 今回は我慢しよう。

 でもクリーンと浄化をするのは許してね。

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