第12話 鮭&兎 実食!

「いただきます」


 焼けた鮭を一口食べてみると、パサつきもなくて美味い。


『ネージュも食べたいの!』

「ちょっと待て。ネージュには別のを焼いてやるから」


 焼けた魚と交換でネージュ用の串を置いていく。

 こっちの肉はそろそろ大丈夫かな?


 少し焦げ目が出来てる肉を取って、しげしげと眺める。

 兎なんて食べた事がないし、ジビエとかは独特の臭みがあると言うから不安なんだよな。


 しかし、こっちをメッチャ見てるネージュに食べさせる訳にもいかない。


 この世界では家畜自体が少ないから、これから先もジビエが基本になるのだからと思いきってかぶりつく。


 旨い!これが兎なのか。

 少し弾力があって固めの肉だが、肉に甘味があって臭みが全くない。

 特に胡椒のピリッとした味がアクセントになって、旨味を引き出している。


『フィカスずるいなの!ネージュも食べるの!』

「ああ。悪い。ネージュのも焼いてやるからな」


 慌ててネージュ用の魚と肉を回転させる。

 枯れ木を追加で入れて火の調整もする。


 生で食べてるくらいだから、ネージュは半生くらいでも大丈夫だろう。

 串から外してラップルの葉に乗せてやる。


「ほら。熱いから気を付けろよ」

『大丈夫なの!フェンリルは強いなの!』


 バクバクと食べるネージュを見たら、どうやら焼いた物でも大丈夫みたいだな。


 追加で新しい串を焼きながら、自分の分を食べる。

 少し冷えてしまったが、それでも美味しいなんて、もう干し肉に戻れない。


 そろそろ蒸し焼きの方も出来たかな?

 木の枝を使って、魚の方の包みを取り出すと石で粘土を割る。


 これ粘土で器を作れば食器も出来そうだな。

 焼けた土の固さに、土器の可能性が見えた。


「熱っ」


 ラップルの葉の熱さに中にも火が通っているのがわかる。


 箸代わりの枝でサーモンを解してみると、ホロッと崩れる柔らかさだ。


 おお~美味い。

 焼いたサーモンとは違った柔らかさで、これも良いね。


 レモンに似た果実もあったので、少し絞ってみる。

 これは合う。

 醤油がないのが残念だが、現状で出来る最高の調理方法だ。


 兎の方も取り出してみる。


 こっちは臭みがあるかもと思って、ハーブっぽい草と一緒に入れたんだよな。


 ナイフで切ってみると中まで火が通っていたから、そのまま口に入れる。

 おお~これも美味い。


 ハーブっぽい草を入れたのは当たりだな。


 結局、保存食にしようと思ってた分も全て食べてしまった…ネージュが。


 そしたらもう1匹サーモンを捕ってきたから捌いてもらって、岩塩を振って乾燥させてみた。


 干し肉より美味しかったので、半身は乾燥させて保存食にして、残りはラップルに包んで明日食べる事にした。


 そして忘れていたステータスを確認したら、レベルは27で能力は土魔法と戦闘術と回復魔法がLv.3になり、なんと火魔法を覚えていた。


 やはり生活魔法は万能かもしれない。

 他の属性も積極的に使えば魔法を覚える可能性が高い。

 次はカッターで風魔法を目指そうかな。


 ネージュはレベルは変わらないけど、能力は爪撃がLv.6になっていた。

 サーモンも一撃だもんね。


 せっかくなので食器とかも作ってみようかな。


 土器は焼くのに時間がかかりそうだし、やり方がよくわからない。

 焚き火で直接焼いても出来るとは思うが、素焼きだと水漏れしそうだしな。


 今回は生活魔法の石で作ってみる。

 先ずは簡単な皿だな。

 手の平くらいのサイズの小皿をイメージする。


「おお、出来た!」

『フィカス何してるなの?』


 満腹になってゴロゴロしてたネージュが興味津々で聞いてくるので、得意満面で教えてやる。


「ふふふ。これはご飯を食べる時に使うお皿だよ」

『ご飯の時に使うなの?どうしてなの?』


 確かに野生動物には不要な物だから理解出来ないよな。


「人間は道具を使う生き物だから、ご飯も食器を使って食べるんだ。それにここに乗せた分は自分の物だと言う事で、他人は取ってはいけないルールもあるんだよ」


『そうなの!?ならネージュもお皿が欲しいなの!』

「もちろんネージュのも作ってやるよ。でもネージュなら自分で作れる気がするけど」


 オレがそう言うと、ハッとしたように言った。


『そうなの!ネージュは自分で作るなの!』


 うんうん。

 ネージュ用なら大きな皿にしないとだから、ちょっと魔力を使うんだよな。


『うう~、えいなの!』

「うわ!」


 デカイよ!

 大きな皿がいいとは思ったけど、これは高知の皿鉢さわち料理サイズだ。


 まぁネージュなら、それくらいペロリと食べるんだけどさ。


『フィカスみたいに白い石にするのが難しかったなの』


 そう、オレが作った皿は白なんだよ。

 何にも考えないとグレーの石しか出ないんだけど、魔法はイメージだからね。


「ネージュは凄いな」


 よしよしと撫でて褒める。


 それから少し大きめの皿と箸とコップを作った。


 コップの持ち手を着けるのが神経を使ったよ。

 やはり細かい造形は石では難しい。


 さて、大物に取りかかる前に念のため魔力を回復しておく。

 そう、魔力が回復する草があったのだよ。


「うぐぐ。不味い」


 青汁なんて目じゃないな。

 なんせ鑑定結果がこうだ。


【名前】マジカル草(A)

【備考】食べると魔力が回復する。清らかな場所に生える。不味い。


 備考に不味いって書かれるって事は、書かずにいられないくらい不味いって事なんだと解った。


 では、いよいよ作るぞ。

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