第8話 食べないよ
『これあげるの』
ポトリと落とした物を見ると、拳大の石と兎の牙らしき物だ。
どうやらオレを食べるつもりではなく、お裾分けをしてくれるようだ。
『これなら食べれるの』
え?これ食べるの?
血塗れだし遠慮したい。
『えとね、魔石は魔力を食べるの。牙はガジガジすると気持ちいいなの』
ああ、魔石から魔力を抜き出して、自分の中に取り入れる事が出来るんだったな。
こうすると魔力が上がる事があるのだが、低ランクの魔石だと何十個もしないと駄目なんだよ。
この大きさなら確実にAランク以上だから、1個で魔力が上がるかもしれない。
牙は歯磨きガムのような役割りなの?
思い出して鑑定してみると魔石と牙としか出ないので、クリーンで綺麗にしてから収納する。
取り出して再度鑑定をかける。
【名前】ヘルラビットの魔石(S)
【備考】ヘルラビットの魔石。魔力が多くて固い。
【名前】ヘルラビットの牙(S)
【備考】ヘルラビットの犬歯。鋭く尖って切り裂く事も出来る。
あの兎はヘルラビットって名前なんだな。
しかもSランクって事だよ。
て事はフェンリルはSランク以上の強さなのか?
もう一度鑑定してみる。
【名 前】
【種 族】フェンリル
【年 齢】8歳
【性 別】雌
【レベル】127
【能 力】咆哮Lv.3 牙突Lv.5 噛砕Lv.4 爪撃Lv.5
&%$;! 氷魔法Lv.6 ?@:=#¥ 回復魔法Lv.5
全異常耐性Lv.5 念話Lv.2
【契約者】フィカス
お?種族が見えるようになってる。
鑑定のレベルが上がったからかな。
本当にフェンリルだったんだ。
レベルが127に上がってるな。
念話もLv.2になっているし、ヘルラビットの経験値は高いんだろうな。
契約者ってのは、オレの契約獣と対になっているんだろう。
テンプレなら名付けをしたら契約とかなんだが、何にもしてない内に契約になっているから全く実感がわかない。
『フィカス食べないの?』
オレが一向に食べないのを見て、ソワソワと尻尾を振っていたフェンリルが出したままの魔石と牙を押し付けて来た。
「ああ、後から使うから貰っておくよ」
とりあえず収納にいれておく。
「なあ、名前を付けても良いか?」
契約してる事だし順番が逆な気もするが、いつまでもフェンリルと呼ぶのも何なので提案してみる。
『フェンリルの名前なの?』
「そうだよ。フェンリルは種族だから、他のフェンリルもフェンリルになるからややこしいだろ?」
『フェンリルはフェンリルしかいないよ?』
「そうなのか?」
『そうなの。ママは死んじゃったなの』
耳と尻尾が下がっている。
「そうか…それじゃあ、ずっと独りだったのか?」
『そうなの』
「寂しくなかったか?」
『さみしいなの?よくわからないけど、フェンリルは強いから大丈夫なの』
さみしいがわからないのか…
「なら、やっぱり名前は必要だな」
『そうなの?』
「そうだよ。これからはオレが一緒にいるから、名前がないと不便だろ?」
『フィカスが一緒にいるなの?』
「ああ」
『名前いるの!』
物凄く嬉しそうに尻尾を振っている。
「それじゃあ、ネージュで良いか?」
単純だけど雪と言う意味はフェンリルに似合うよな。
『ネージュなの!嬉しいなの!』
「そうか。喜んで貰えてオレも嬉しいよ。うわっ」
飛び付かれて顔をベロンベロン舐められた。
やめて顔を舐められるのは嫌いなんだよ。
犬は好きだけど、それとこれとは別だよ。
でも舐められるのが嫌いな理由は不潔な事だから、生活魔法の
ネージュが落ち着いてから鑑定したら、ちゃんと名前になっていた。
特にステータスに変化はなかったけど。
「ところで、ネージュは何でオレの契約獣になっているんだ?」
『えとね、フィカスの匂いが気持ち良かったから一緒にいたくなったなの』
ふんふん。
え?それだけ?
「一緒にいたいと思ったら契約獣になるのか?」
『わからないけど、一緒にいたいと思ったらオデコをくっつけるってママが言ってたなの』
フンスフンスしてた時にオデコがくっついたから契約しちゃったって事?
まぁ、良いか。
結果的に心強い仲間が出来たんだしモフモフだし。
そろそろ日が傾いて来たから、この後どうするか考えないとな。
ネージュに色々聞いた結果、世界樹の根元に戻って来た。
やはり周りの森にはヘルラビット並みの魔物が沢山いるらしい。
狐は火を吹くそうだよ。
ネージュも森の外には出た事がないので、どちらに行けば人が住んでいるのかは知らないそうだ。
世界樹を中心に2日くらいの圏内が行動範囲で、その半径は推定100キロメートルくらいかな。
ネージュなら数時間で縄張りを出そうなんだけど、どうやらネージュの言う2日とはブラブラしながら獲物も狩ったりして、寝て起きたら1日と数えてるっぽい。
だから直接距離じゃないし丸2日でもないんだよ。
世界樹の北側には川が流れていると言うから、川下へ行けば人里に着くかもしれない。
地球の文明でもそうだが、水場の近くに人は住むものだからな。
それから何故かは知らないが、世界樹の周りの草原には魔物は入って来ない。
フェンリルは魔物ではなく神獣だから入れるそうだ。
神獣と魔物の違いは知性のあるなしだと人族なんかは思っているが、どうやら根本的な違いがあるようだ。
どんな違いなのかはネージュも知らないみたいで、これ以上の情報は期待出来ない。
以上の事から暫く世界樹の周りでレベル上げをしてから、人里を目指して川を下る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます