第5話 犬派だもの
リストに草とかの名前が出ているのは納得いかないが、そう言う仕様なんだと飲み込もうじゃないか。
でも初心者セットって何だよ!
こんな所に入れるなよ!
神様サービスはないと思ったわ!
一頻り怒った後に、初心者セットを出して中を開けてみた。
干し肉10、パン10、岩塩1、水筒1、ナイフ1、シャツ2、ズボン1、下着2、靴下2、タオル2、革の袋2が入っていた。
おお!色々入ってる。
これで数日は生きられるな。
革の袋を開けて見ると手の平ほどの袋の方は、財布だったみたいで大銀貨が10枚入っていた。
60センチくらいの袋は採取した物を入れるのに使えそう。
しかし大銀貨の価値がわからないぞ。
硬貨の種類は情報に入ってるが物価がわからないんだよ。
通貨の単位はミラムだ。
銅貨1枚が1ミラムで、大銅貨1枚が10ミラム、銀貨1枚が100ミラム、大銀貨1枚が1000ミラム、金貨1枚が1万ミラム、大金貨1枚が10万ミラムだ。
全部10倍だから覚えやすいな。
本物だと思うが鑑定してみる。
【名前】大銀貨(大陸共通硬貨)
【備考】銀の含有率72%
大陸共通硬貨は、この大陸にあるほとんどの国で使えるお金だ。
名前になっている金属の含有率が70%以上と決められているから、本物に間違いない。
ま、人里に行くまで使えないから、今は置いておくか。
とりあえず元の袋に戻しておく。
ぐうう~。
結構歩いたから腹が減ったな。
せっかく食べ物を手にいれたのだから腹ごしらえをするかな。
水筒の水を飲むと、冷たくて美味しい。
思わずゴクゴク飲んでしまった。
オレは生活魔法の
人生初の干し肉を食べる。
…固い。
しかも運動した後だから一口目は良かったが、しょっぱいから喉が渇く。
パンを食べてみると、こちらも固いし口の中の水分を持っていかれる。
水筒の水を飲むと、なんと元の量に戻っているではないか。
そう言えば鑑定してなかったな。
【名前】無限水筒(限定品)
【備考】飲んでも水が減らない。
ほほう。流石は神様サービス。
いい仕事してますね。
限定品と言うのが何かはわからないが、もしかしたら転生者限定とかかもな。
水でふやかしながらパンと干し肉を交互に食べて、何とか飲み込んだ。
これしかないから仕方ないけど、腹が減ってなければ食べたくない代物だな。
これがこの世界のレベルだったら、日帰り冒険者にしかなれないかも。
炙ればマシになりそうだが、火起こしの道具が初心者セットに入ってないんだよな。
火がつけられなければ、ずっとこの状態の物を食べる事になるのか。
生活魔法の
指先に蝋燭くらいの火を出すイメージだったんだが、木屑や枯れ葉なんかに直接火を着ける魔法なんだよな。
それにしても良い風が吹いてる。
暑くも寒くもない気温で、緑の匂いと言うか花の匂いのような風が気持ちいいんだ。
目が覚める前にも感じた心地よさだ。
歩き疲れたせいか眠気に逆らえない。
ちょっとだけ、ちょっとだけだから…
…ふと目が覚めて、寝すぎた事に気付く。
魔物が出るかもしれないのに、本当に気を抜き過ぎだよ。
しかし聖域だからか魔物も現れないし、布団もないのに全く寒くなかった。
この苔がフカフカでモフモフだからかな?
ん?モフモフ??
寝る前と違う感覚に恐る恐る背後を見る。
「うわっ」
白い…犬?
「くぅん?」
いつからそこに居たんだ。
てか本当に犬なのか?
どう見ても2メートルを超えているんだが…
まさか魔物?
いや、魔物は生き物を見たら襲いかかって来るから、魔物ではないだろう。
「わふわふ」
「わあっ」
ベロンと顔を舐められて、仰け反った勢いでコロンと転がる。
根っ子と根っ子の間に挟まってしまって抜け出せない。
バタバタと情けなく足をバタつかせているが、手が万歳をするみたいに前に出てしまった為に、肩が綺麗に填まってしまっている。
どんなに身体をよじっても抜け出せなくて、その内に疲れて来た。
「うぅ…」
何だこれは。
ちょっとピンチになっただけで泣けて来るなんて。
そう言えば、触っただけでかぶれる植物があると知っているのに何かわからない草に触ったり、魔物がいるとわかっているのに暢気に昼寝をしたり、やけに子供っぽい行動をしている。
オレはもっと冷静な判断が出来る人間だと思っていたが、身体の年齢に引きずられているのか?
羞恥と動けない怖さで呻いていると、急に身体が引っ張られるのを感じた。
お腹辺りの服を咥えた犬にぶら下げられてるシチュエーションに涙も引っ込んだ。
「離して!」
思わず叫ぶと、そっと降ろしてくれた。
シュンとした感じの犬に敵意は見えない。
もし襲うつもりなら寝ている間にも出来たし、根っこに挟まってる時にも出来たはずだ。
助けてくれたとは言え、元々この犬が驚かせたりしなければ、あんな恥ずかしい事にならなかったのだと思えば腹立たしい気持ちもある。
だが、このあざといまでの上目遣いでこちらを窺う様子とか、フワフワの白い毛といいフサフサの尻尾といい、犬派のオレに抗う術はなかったのだ。
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