第2話 能力の選択
『○○✕△さん、あなたのフォロワー数は0人ですので、抽選回数は0回です』
え?
…何て言った?
……0回?
0回だって?
『これで能力の抽選は終わります』
待ってくれ!
オレは何の能力も貰えないのか!?
『今回の抽選は世界にどれだけの影響を与えたのかと言う事を基準にしています。それがフォロワー数による選別です。あなたは何も残さず何も影響を与えなかったので、抽選をする資格がありません』
何も残さず何も影響を与えない…
資格がない……
プツンと何かが切れた気がした。
そうだよ。
オレの人生なんてそんなに大したものじゃないさ。
だけど、何でフォロワー数で人生を決められなくちゃならないんだ!
ただ目立たず真面目に生きているだけではダメなのかよ!
フォロワー数や再生回数を伸ばすために、犯罪行為をするような人間の方が偉いのかよ!?
フォロワーが0人なんて、SNSを全くやってない人間なら当たり前だ!
誰もがそれをやるなんて決めつけでしかないだろう!
それこそ枠にはめて、レッテルを貼って、○○だからこうしなければ、✕✕だから駄目なんだと言ってるのと同じだろうが!
芸能人やスポーツ選手なんかは全員がSNSをやっているとでも言うのか?
やってない人だっているだろうが!
世界の有名人が全て生きている内に有名だった訳じゃない!
そんな人達だとしても何も残さないから資格がないと言うのか!?
『今回の選択はフォロワー数と言うカテゴリーでしたが、あなたの言う事も尤もです』
何が尤もなんだ。
カテゴリーで分けて人を差別して、最後にはただの運任せで放り出す。
それくらいなら全員何も能力なんて与えずに放り出せば良かったんだ!
あんたの言う所の何かを残した人達なら、異世界でも何かを残すだろうさ!
『なるほど。しかし抽選は女神の決められたルールであり、私には変更する権限がありません』
ハッ、自分が決めた訳じゃないから責任はないって言いたいのか?
『そうではありません。ですが、私の権限が及ぶ範囲で干渉する事は可能です』
は?
あんたがオレに何かしてくれるとでも?
『そうです。これまで何度も抽選を行って来ましたが、あなたの様に反論してくる人はいませんでした。ここでは「そういうものだ」と皆が納得するようになっているからです』
なんだって?
洗脳でもされているのか?
『どちらかと言うと自我が薄くなって判断力が低下している状態ですね。能力を植え付ける為には、強い自我があると上手くいかないのです』
じゃあ何でオレは自我があるんだ?
『それはわかりません。女神の気まぐれか、あなたの魂の力が強いからでしょうか』
そう言えばあんたは女神じゃないのか?
それに魂の力?
『私は女神の代理に過ぎません。魂の力は能力を覚えるための容量です』
オレは魂が強くて容量が多いのに能力が貰えないって事か。
なんて皮肉な話しだ。
『そうですね。通常であれば強い魂の持ち主であれば、世界になんらかの影響を与えるはずなのですが、何故かあなたは何も残さなかった』
嫌味かよ。
神様ならオレの人生も知っているんだろう?
『いいえ私は神ではありませんし権限がありませんので、あなたの人生を知ることは出来ません』
神じゃないなら何だ?
『それはあなたが知る事は出来ません』
そうかよ。
それじゃあ質問を変えよう。
異世界へ行ったら自我はどうなるんだ?
『あちらへ行けば自我がハッキリするでしょう。更に能力を植え付ける時に、あちらの世界の情報を刷り込む様になっています。その能力の植え付けと、情報を刷り込む権限があるのが私なのです』
それを使って何かをしてくれると言う訳か。
『はい。抽選で選んだ能力は、女神の力で魂の強さに関係なく覚えられますが、本来は魂の強さで覚える能力が変わるのです。ですから、あなたは本来の魂の強さに合わせた能力を覚える事が出来ます』
それじゃあ、一番下の能力だった人は、抽選じゃない方が良かったのでは?
『女神の力ですから一番下の能力であっても、通常の能力よりも特殊な力を持っています』
そう言う事か。
なら、オレが覚える能力は女神の力がない普通の能力って事か?
『そうです。通常は才能の他に経験や修練を重ねて覚えるものですが、ここで覚えれば習熟する時間が短縮出来るでしょう。あなたの魂でしたら下級なら9~10個、中級なら4~6個、上級は他の情報を削れば1個覚えられるかどうかですね』
上級が1個覚えられるかどうかなのに魂が強いと言うのか?
『そうです。普通の魂ですと下級なら5個、中級を2個覚えたら良い方です。他の情報を全て削っても上級を覚える事は難しいでしょう』
それは下級と中級の両方を覚えられるのか?
上級を覚えるために削る情報って何だ?
『下級と中級にするなら組み合わせ次第で数が変わります。能力の一覧表を出すので聞いて頂ければお教えします。削るのは異世界の情報または前世の記憶ですね』
…前世はともかく異世界の情報は必要だな。
こんな事をして女神に罰を受けたりしないのか?
『私の権限の範囲ですから問題ありません。ここは外と時間の流れが切り離されていますので、何日でも考えて貰って構いません』
抽選の時の様にずらっと出た一覧表に、何日もかかるのかと苦笑いが出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます