　この話は、二〇一八年十一月に起こった出来事である。この出来事に関しては、よく見るYouTuberの動画を見ていた時に起こったことだから、めずらしく出来事の時期がピンポイントで分かるのである（その動画は今でもYouTube上にあるため、その動画を調べて投稿日を確認できるのである）。

　実をいうと、私は諸事情で高校卒業と同時にニートになり、そのまま今でもニートでい続けているのだが。心霊現象が起こった当時も、二十四歳にしてニートだったため、平日だったが家で動画を見ていたのである。

　事の発端となる動画を見ようと思ったきっかけは些細なことで、単純に「投稿されたばかりの心霊系動画だったから」としか言いようがないのだが。元々心霊系コンテンツが好きな私は、その程度の動機でも十分に「動画を見よう」という理由になりえるのだ。動画の内容としては、ついさっき奇妙な金縛りをしたという動画で、急いで撮影し、急いで投稿された動画だった。

　別にその動画自体になにかが映っているとか、なにか音がするとか、心霊現象と呼ばれるものは一切ないのだが、なぜかその動画を見ていた私に心霊現象が起こったのだ。心霊現象といっても、自分がいた部屋の外（閉め切った部屋の扉の向こう側）に誰かの気配を感じ、その気配を感じた瞬間に身震（みぶる）いが起きた程度であるため、たいした現象ではないのだが。私が今まで生きてきた中で、心霊系コンテンツを見聞きしただけで心霊現象が起きたのはこれが初めてだったから、正直なところ、驚いたのだ。

　今まで体験した心霊現象といえば、心霊系コンテンツには全く触れず、なおかつなんの前触れもなく心霊現象が起きていたのだが、この体験に限っては心霊系コンテンツに触れている時に起こったのだ。他の話でよくある、心霊系コンテンツを扱うと幽霊が寄ってくる──という話はよく見聞きしていたのだが、いざ私の身に起こると、なんで寄ってきたん？という意味の驚きになり、不思議に思ったのだ。

　不思議に思うもなにも、他の話でそういう話があるのなら自分自身にも起こるでしょ、という話なのだ。私自身ですら、冷静に考えると「そりゃそうだ」としか思わない。だが、あの当時はなぜか心霊現象が起こることに驚き、疑問に思ったのだ。

　その日以降、霊感が開花するとか、心霊現象が多発するようなことは一切なく、ただひたすら普通の日が続いているのだが。この時の体験だけは、今までの心霊現象とは少し違うきっかけで起きたため、めずらしく心霊現象で驚いた体験だった。