虫の知らせ?
二〇二〇年だったか、二〇二一年だったか、どちらかは忘れたが、少し暑い初夏だったのは覚えている。当時、持病があった母方の親戚(ちなみに年配男性である。仮に
その日は、なんの変哲もない普通の日だったのだが、朝の六時頃、目が覚める直前に突然「あまり若くなさそうな男性(誰かは分からない)がなにかを吐いている音」が私の耳元で大音量で流れたのだ。その音で驚いて飛び起きてしまったほどの大音量だったため、一瞬なにが起こったのか分からなかったが、すぐに幻聴だと察しがついた。実家暮らしだが片親(母親のみ)であるため、同居する男性は一人もおらず、しかも一人部屋で寝起きしているゆえに、私の耳元で年配男性が嘔吐するなんてあり得ない状況だった。
まぁ、正直なところ幻聴を聞いた時は佐々木さんの訃報なんて聞くとは思っていなかったため、単純に寝ぼけていたのだろうと思い、すぐに二度寝をしたのだが。結局のところ、幻聴を聴いてから約一週間経った頃、佐々木さんの訃報を耳にすることになった。
何度も言うが、簡易的で質素だったものの葬式自体に変わったところはなく、普通に始まって、普通に終わった。私の親戚は誰かの葬式がない限り集まることはない(比喩ではなく実際に『誰かの葬式』の時しか集まらない)ため、佐々木さんの葬式が終わってから、親戚同士による世間話の時間が始まってしまったのだが。葬式後に世間話をするような相手がいなかった私は、ぼーっとしつつ親戚同士の世間話に耳を傾けていたら、ふとこんな話が聞こえてきた。
「佐々木さん、持病のせいか、死ぬ少し前はご飯を食べれんかったらしいなぁ」
「そうそう、食べてもすぐに吐いてたらしいねぇ。そのせいかガリガリに痩せてしまって……」
「可哀想にねぇ……」
ぼーっとしながら話を聞いていたせいか、最初は「へぇ、そうなんだ」くらいにしか思っていなかったのだが、ふいに私自身が体験したことを思い出した。そういえばあの時の幻聴は年配男性が嘔吐する声(音)だったなぁ──と。実際のところ、あれは佐々木さんの声だったのかは分からないが、こんな偶然もあるのだなぁ、と思った。
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