後;~西宮潤子サイト~

 私の名前は、西宮潤子。24歳、会社員です。


 突然ですが私には、彼氏がいます。同期入社で、同じ部署。自然とお互いに惹かれあって、直ぐにお付き合いを始めさせていただいておりました。


 そんな彼とは、休日はよく二人で旅行に行くのが趣味でした。

 その日はレンタカーを借り、高速道路に乗りドライブ旅行を楽しんでいたのですが……。


 飲酒運転の暴走トラックに巻き込まれ、乗っていた軽自動車は大破。

 何十トンという鉄のかたまりには、安全基準が高い日本の軽自動車だとしても、太刀打ちできません。事故車は原型などとどめておりませんでした。


 ……特に助手席は完全に押し潰されておりました。


 悲壮な事故から2ヶ月が経過し、なんとか車イスを使えば、外を出歩くくらいは可能になっていました。

 それもあって、私は会社に行きました。


 するとどうでしょう。

 私のデスクの周りに、友人たちが集まり、泣きながら話しかけてくれました。

 一方、彼のデスクの周りには……。

 彼の同僚が来たりしましたが、何も語ることはなく、ただ机を眺め、去っていきました。


 改めて、心が痛みました。彼が提案したドライブデートに喜んで賛成したのですから。


 レンタカーの調達も彼がしました。

 ペーパードライバーでも運転しやすい、小回りが効く軽自動車を選んでくれたことは、悔やんでも悔やみきれません。


 そして時折、事故の時の記憶をフラッシュバックします。あまりに悲痛な現実を受け入れられず、私は居心地が悪くなりました。


「……」

 それでも暫く会社にいると、多くの人が私に労いの声をかけてくれました。



(……良かった、これで一安心だ)



 誰にも聞こえないはずの、彼の声が聞こえた気がしました。そして私は、早々にその場を後にする彼の姿が、見えた気がしました。


 その場で私は泣き崩れ、さらに自責の念に駈られました。


 ドライブデートを了承したこと。

 軽自動車を借りたこと。

 高速道路に入ったこと。

 そして、いつも任せっきりな彼を思っての、運転前のこと。


「私が運転するなんて、言わなきゃよかった」


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ドライブデートの悲劇 黒片大豆 @kuropenn

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