第5話 テーマ「雪」

「ユキってさあ、かわいいよね」

「ああ、うん。まあ、そうかも」

「白くてふわふわしてるし」

「まあ、そうだね」

「本当、いるだけでテンション上がる」

「そうだけど、嫌いっていう人もいるけどさ」

「嫌いって、そんなはっきり言う?なんで」

「冷たいし、邪魔なんじゃないの?」

「なにその悪口!聞こえたらどうすんの?」

「聞こえるって、何言っての?」

「ああ、まあ今はいないか」

「いないって窓の外見てみなよ。ユキ、あるじゃん」

「え、どこどこ?」

「どこっていや、そこら辺に」

「そこら辺って、どこら辺だよ」

「そこら辺って、そこら辺」

「いないじゃん」

「は?」

「まあ、いいや。いや、ユキのこと嫌いな人間がいるなんて初めて知ったわ。誰が言ってたの?」

「えー具体的に言えって言われてもなあ。……あ、高校の時の友達が嫌いだったわ」

「高校?高校の同級生がユキのこと知ってるの?」

「知ってるよ。っていうかユキのこと知らない人間なんていないでしょ」

「はあ?ユキってそんな有名なの?」

「有名っていうか自然に理解するよね」

「いや、なにそれ」

「私、ユキ好きだけどね」

「ここで嫌いって言われたらどう反応すればいいかわからないわ」

「きれいだからね。ああ、あとユキって種類で名前変わるじゃん!いいよねえ。日本って感じで」

「はあ?ユキはユキでしょ」

「いや、牡丹ユキとか、ゆかユキとか」

「え、ユキってそんな風に名乗ることあるの?」

「名乗るっていうか、そう呼ばれるっていうか」

「は?」

「あと私ユキ合戦も好きだよ」

「合戦⁈」

「ユキをさあ、めっちゃ握って固くして投げるの」

「いや、ユキをなんだと思ってるの!」

「何って……遊び道具?」

「ちょ、ひどっ。ユキのことそんな風に思ってたの⁉」

「そんな風って、ユキってそういうものでしょ」

「ユキのこと人間だと思ってる?」

「人間?ユキは人間じゃないでしょ」

「は?最低!そんなこと思ってたんだ」

「じゃあ、なんなの?」

「ユキは友達でしょ?」

「……友達?」

「じゃあ、なんなの?赤の他人?」

「他人って、ユキに対してそんな感情抱かないでしょ」

「……そんな最低な人間だとは思わなかった」

「最低って、ユキって無機物じゃん!降ってくる自然のものじゃん!」

「……無機物?」

「……待って、ユキって、柏木有希のこと言ってる?」

「……え、違うの?」

「……え、私あの、白い積もる方の雪かと」

「……」

「……」

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