第18話 Aランク昇格!
※サウム視点です
「ウェスタも復帰したことだし、久々に気楽なクエストでもやろう」
酒場にて、わたくしたち三人にセント様が告げました。
人物に関する記憶を失い、どうなるかと心配しましたが、パーティーは存続のようです。
セント様も、少しずつわたくしたちのことを覚えくださってくれています。
「いいけどセント、あんた大丈夫なの? 親のことも忘れちゃったんでしょ? 実家に連絡するとか、一度帰省するとかした方がいいんじゃない?」
「別にいいよ」
「そ、そう」
「それよりお前ら気づいてたか? 地下城をクリアして、晴れて俺たちはAランクに昇格する権利を得たんだ。あとで手続きしよう。……これでギルドマスターへの道が見えてきた。みんな、この調子で頑張ろう!」
うぅ、セント様が自らわたくしたちを鼓舞してくださっている。
セント様の恋人として、このサウム、どこまでもついていきます!!
「でさ、話は戻るけど、巨大人食いクマ退治のクエストをやろうと思う。Bランククエストだし、いまの俺たちなら余裕だろ」
「いつやるんですか?」
スーノさんが問いました。
「そうだな、今日は昇格の手続きで遅くなるし、明日」
ウェスタさんが「うーん」と唸りました。
「ごめん無理。明日はお母さんの誕生日だからさ、一日尽くしてあげたいんだ。みんなで行ってきなよ」
「じゃあ明後日でもいいよ。ウェスタがいないと意味ないだろ」
「え? あ、うん」
妙な違和感を覚えました。
いや、違和感と表現するほどではないのですけど、少し引っかかったのです。
いまのセント様の口調、どことなく冷たかったような。
いまのセント様の視線、どことなく苛立ちを孕んでいたような。
な、なにを考えているのでしょう、わたくしは。
「イステさんも来るのですの?」
「あいつは来ないよ。俺たちだけ」
どうしてセント様は、わたくしたち四人に拘るのでしょう。イステさんとはずっと同じパーティーですのに、共にクエストを受けたのは、地下城のみです。
もしかして、わたくしを取られるんじゃないかと心配しているのですか!?
わたくしの心はセント様に捧げてますのに!!
「ところでさセント、ダブのことなんだけど……」
ウェスタさんが話を切り出して、場の空気が一瞬で重くなりました。
ダブ。ウェスタさんのお姉さんを攫った盗賊団。
そしておそらく、お姉さんは悪魔崇拝者たちに買われ、わたくしを召喚する生贄となった。
確定ではありません。ですが、可能性は高いのです。
近いうちに、ちゃんと調べる必要があります。もしわたくしの予想が正しければ、わたくしは……。
「わかってる。あいつらにかけられた賞金はまだ有効だ。情報が入り次第また追おう。次こそちゃんと倒すんだ」
「うん、忘れてないなら、よかった」
「どんな連中だったか、詳しくは忘れたけどな。まあ安心しろよ、次期に気にならなくなる」
「?」
やっぱりセント様、どこか変ですわ。
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