第6話 ゴブリン退治!!
Bランククエストのゴブリン退治を受けることにした。
ただのゴブリン退治ではない、大きなボスゴブリン率いる群れを駆除するのだ。
なんでも最近、洞窟に住み着き、人里に降りては好き勝手暴れているらしい。
「みなさん、頑張りましょう」
ふん、とスーノが気合を入れる。
どうやらボスゴブリンは黒魔法について記された書物を盗んでいるみたいなのだ。
それが手に入れば攻撃魔法を覚える方ができるかもしれない。だからやる気マンなんなわけである。
洞窟を目指し、俺たちはひたすら森を進んだ。
「攻撃魔法を覚えたら、褒めてくださいね、セントさん!」
「ん? あぁ」
はしゃぐスーノをよそに、サキュバスのサウムが耳打ちをしてきた。
「なんですの、あの子。あなた様に馴れ馴れしい」
そりゃそういう反応にもなるわな。
よし、ここは毎度お馴染み、嘘でやり過ごそう。
「あいつ男だよ」
「そうなんですの!?」
スーノにも使った嘘を、またついてしまった。
「女装が趣味なんだよ。馴れ馴れしいんじゃなくて男同士のスキンシップさ。ほら、女の子も友達と手を繋いだりするだろ?」
「な、なるほど……」
どうやら信じてくれたらしい。
やば、冷静に考えたらスーノとサウム、お互いのこと男だと思っちゃった。
うーん、まあ大丈夫だろう。
ぽん、とウェスタに肩を叩かれる。
「あんたも大変ね」
「聞こえてたのかよ」
「モテる男は辛いわね」
嫌味がキサマッ!!
言っとくけどお前もお前で面倒な人間関係の一人なんだからな!!
言えないけど。
そんなこんなで洞窟に到着、早速ボスゴブリンが出てきたのだが、
「わたくしにお任せを」
サウムのエナジードレインで弱体化させ、
「あとは私に任せなさい」
ウェスタが華麗に、ゴブリンたちを全滅させた。
あっけねえな。俺の出番なしかよ。
なんだよお前ら最強コンビじゃん。
ちなみにサウムのエナジードレインだが、効果範囲は3メートルとのこと。目が光ったら即発動らしい。
ボスゴブリンの遺体から槍を抜いたウェスタに、スーノがズンズンと駆け寄る。
「殺す必要ありました? 追い払うだけでよかったじゃないですか。ゴブリンにだって事情があったのかもしれませんし」
むー、ダークエルフの生き残りとしては、いくら人様に悪さをしたからと言って、殺すのは納得しかねるわけか。
「なに甘いこと言ってんのよ。追い払った先でも悪さする。そうでしょ? とくにゴブリンなんて、人間とコミュニケーション取れるほど頭が良くない獣なんだから」
「……」
不服そうにスーノは頷き、洞窟の奥へと入っていった。
なーんかギスギスしちゃったな。ここはガツンとみんなをまとめる一言を言ってやりたいけど、言葉が出てこない。
やがで、スーノは一冊の古びた本を手に戻ってきた。
あれが魔導書なのだろう。
「スーノ、それが?」
「はい。ここに呪文が書いてあります!」
じゃあ、とウェスタが提案する。
「私に攻撃してみてよ。どんなもんかこの身で試してみたいわ」
「危ないですよ?」
「平気よ、ほら」
渋々、スーノは本を開き、書かれている呪文を唱えた。
詠唱が終わると同時、スーノの杖から光弾が発射される。
「うわっ!」
ウェスタは防御する間も無く直撃し、吹っ飛ばされてしまった。
平気じゃないじゃん。
「だ、大丈夫ですかウェスタさん!!」
「いてて、弾き返すつもりだったけど、案外速いのね。スーノに殺されるかと思ったわ」
「ウェスタさんを殺したりなんてしませんよ!!」
そうだといいんだけど。
「あはは、わかってるって」
本当にわかってる?
なにはともあれ、このパーティーの完璧性が実証されたうえ、さらに質が上がったわけだ。
マジで無敵なんじゃないの? 俺のパーティー。
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クエストを終えて、俺たちは各々の家に戻った。
ウェスタは実家に、スーノは宿に。俺とサウムは別の宿に。
最初サウムは俺と同室にしたいと駄々をこねていたのだが、間違いなく揉め事の発端になりそうだったので、少し離れた部屋を借りてもらった。
できるなら俺だって同室がいいよ。サウム美人だし。
でもさ、俺の目的は彼女作ることじゃなくてギルドマスターになってドリングス迷宮をクリアすることだからさ。
もう誰も、その迷宮で命を落とさないようにさ。
あ〜、きっと俺、生き遅れるタイプなんだろうな。
「そんなことより」
自室のベッドで横になって考える。
いまのパーティー、完璧なのはわかっているが、やっぱりスーノの存在がネックだ。
とはいえ見捨てることなんてしたくない。
てかできない。
ウェスタとの因縁、上手く解消する術はないものだろうか。
「それがわかれば苦労はしねえよ」
地球を覆うくらいのでっかいため息が溢れた。
いっそあいつら、集まってるときだけ喋れなくなればいいのに。
なんてね。
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