第5話 本気でめんどくさい!!
ギルドにはサキュバスを追い払ったことにした。
街への被害がなくなれば、真実だと判断しクエストクリアを認めてくれるだろう。
そして三日後、無事クエストクリアは受理されて、Bランククエストを成し遂げた俺は晴れてCランクへと昇格を果たしたのだ。
もちろん、スーノもである。
ちなみにあのあと改めて屋敷を探索したところ、地下に腐敗していた悪魔崇拝者たちの遺体があった。
なんでも、男には容赦ないサウムが、殺したらしい。
いくら召喚してくれた相手とはいえ、気に食わない人間と契約する義理はないそうだ。
だからって殺さなくても……な。
「というわけで、このままどんどんクエストをクリアしていこう」
酒場に少女三人を集め、そう宣言する。
ウェスタとスーノの問題はいまのところ大丈夫そうだし、きっとこのまま隠し通せるだろう。
「あなた様が望むなら、わたくしはどこまでもお供しますわ」
サウムがスリスリと体を寄せてくる。
ドキドキもんなのだが、恥ずかしいので人前ではやめてもらいたい。
それに心なしか、スーノが睨んでるし。
「サウム、離れて」
「あ〜ん、いけず〜」
リアクションが古臭いな。
さて、次はどんなクエストを受けようか。そう発言しようとしたとき、
「お、ウェスタじゃん」
体格のいい男がこちらへやってきた。
「ん、久しぶり」
「一匹狼のお前もついにパーティー入りか」
「まあね」
どうやらウェスタの知り合いらしい。
強そうだし、ウェスタ繋がりで仲間になってくれたりして。
「ウェスタ、この人は?」
「あぁ、前に一緒にダ……あー、えっとー、まあ知り合いよ」
ウェスタが気まずそうにスーノを一瞥した。
スーノは視線の意味を理解していないようだけど、俺はなんとなく、察してしまった。
男が口を開く。
「去年のダー」
「ぬわあああああ!!!!」
「え、なに?」
「すみません、トイレまで案内してくれませんか!!」
「え? あ、うん」
半ば強引に、男を酒場の外へ連れ出し、めちゃくちゃ頭を下げてお願いしてやった。
「本当にマジでお願いだからダークエルフの話題だけは絶対になんとしても本気で出さないでください!」
「な、なんで? ダークエルフ撃滅クエストに参加したことくらい別に……」
ほらやっぱり思った通りだよ。
「でないと俺のパーティーが崩壊するんです!! てか酒場に血の雨が降るんです!!」
「わ、わかったよ」
ウェスタはスーノがダークエルフ恐怖症だと思ってるから言葉を濁してくれたわけだ。
本当はウェスタ自身が、ていうか目の前のこいつもスーノの家族や仲間の仇なんだけど。
はぁ、マジで苦労するなぁ、パーティーを存続させるの。
男が立ち去り、三人のところへ戻ろうとすると、スーノがとてとてとやってきた。
「こ、ここにいたんですね」
「どうしたの?」
もじもじして、恥ずかしそうにスーノが告げる。
「あ、あの、まだちゃんと言えてなくて」
「なにを?」
「セントさんに出会えて、本当によかったです。セントさんがいなければきっと、私は永遠にDランクのままでした」
「そんなことないよ」
「そんなことありますよ! セントさんは凄いです。ウェスタさんから聞きました。どうやってサウムさんを倒したのか」
え、お前ら俺の知らないところで話してたの。
ヒヤヒヤする情報やめて。
「尊敬してます、セントさん」
スーノの顔が真っ赤に染まっていく。
そんな態度をされたら、こっちまで変に意識してしまう。
「ところで、サウムさんとはどういう関係なんですか? ずいぶん距離が近いですけど」
ものすごく低い声だった。
「もしかして、お付き合いされてるんですか? もしそうなら私……」
なんだよ、なにが起こるってんだよ。
てか付き合ってはいない。契約を結んだだけで、向こうは恋人気分なんだろうけどさ。
こ、これ、否定しておいた方がいいよね?
「あいつ男だよ」
「そうなんですか!?」
「女装が趣味なんだって。男同士だから距離が近いんだよ」
なんか変な嘘ついちゃったな。
「そうだったんですね!! よかった〜。私、これからも精一杯頑張りますね!!」
「よろしく」
まさかとは思うけどさ、サウムに嫉妬してる?
俺に好意を抱いてるのか?
だとしたらすごく嬉しいけどさ。嬉しいんだけどさ。
サウムも嫉妬深いんだよ……。
あーくそ、ここにも面倒臭い関係が生まれてしまった!!
ていうかスーノが爆弾すぎるんだよ!!
ウェスタとサウムの間には何もありませんように。
マジで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます