第二十七話 ーファーストワーク終ー
「…それで、何故俺の窓なんかに張り付いていた」
窓開け、アクラを部屋に入れたギルティは当然の質問を投げかける。
「いやーね、追手の撒くことは何とか出来たんだけどね。どのホテルも避難のために閉まってたんだよ。どこに行こうかーってなった時にギルティの部屋でいいじゃんて思ったんだよ、このワイヤー優秀だね、めっちゃ自由度高い」
アクラは腰につけていたワイヤーを手に取りワイヤーの方をもってぶらぶらとさせる。
『ギルティ、何かあったの?』
電話を切っていないから、携帯電話からテシアの声が聞こえる。
それにアクラは反応する。
「ん、テシアと電話してたの?」
『その声、アクラ?なんでギルティの部屋にいるのよ』
「別にいいでしょ、もう説明面倒くさいからしない」
『はぁ!?ちゃんと説明しな』
ギルティはそこで通話を切る。
後々面倒くさいことになるがいまアクラの話を聞くためには仕方のない事である。
そう、別にうるさいからではない。
「いいの?切っちゃって」
「後々面倒くさいことになるがいいだろう…それで追手から逃れられたのはいい話だが、怪我は大丈夫か」
「大丈夫だけど何?心配してくれてるの?」
「あのギルティが?」とアクラはニマニマした表情を向ける。
「仲間の状態を心配しないほど俺は薄情じゃない。お前に怪我がなくてよかった」
「…そ」
アクラはつまんないと言った表情でやや下を向いた
ギルティをからかいたかったのだろうが、予想とは違う反応だったのだろう。
「お前が無事ならそれでいい。問題は帰りだ」
「帰り?何かあったの」
アクラが小首をかしげる。
「お前は知らないとも思うが、ここにギルティがいたと分かった時、赤いカードをもらったんだ。そのカードがなければ帰国できないのだ」
「赤いカード?知らないね」
「だろうな。ギルティを見失ったという情報があれば即刻そのカードの配布を辞めているのだろう、そうすればギルティは帰国時にカードを持っていないことになる」
一通り説明が終わるとアクラは手を顎に当ててじっと黙っている。
そして数秒した後、何か納得した表情を浮かべていきなり窓の外に向かっていった。
その支離滅裂な行動にギルティが声を上げる。
「どうした?」
「いや別に…カードの事教えてくれてありがとうね、でも心配はいらないよ。
ギルティは明日のご飯もことでも考えててよ」
そう言い、アクラは窓の外から飛び降り、ワイヤーを壁に突き刺して地面でギリギリで止まる。
ワイヤーを戻して地面に降り立つと窓の外から見ていたギルティに手を振り、自分のいたホテルに戻っていった。
────────────────────────────
そして帰国の日。
はやりギルティのが出現したという事はとても衝撃的なことだ。
その事実を裏付けるように空港には数多くの捕虜機関の人間がいた。
しかし、本物のギルティには赤いカードがある。
空港にいる人間はギルティだとも知らずに赤いカードを見たらすぐに通してくれた。
そのから流れるように飛行機に乗り帰国した。
ほかの四人とは別々の飛行機に乗っている。
後々ギルティの乗った便が調べられ、全員があぶりだされることになりかねない。
「……さてと、二日ぶりか」
ギルティの目の前には馴染みの館があった。
本当もっと滞在する予定だった。
しかしダステル首相がこちらの依頼の情報を見透かしたように協定という名の主従関係を結ぼうとしていたことでこんなにも早まったしまったのだ。
「ギルティ!大丈夫だったの?」
声の聞こえた方向、後ろを見るとそこにはテシアとミクがいた。
「おぉ、無事に帰ってきたみたいだな」
「私のセリフなんだけど…まぁいいわ」
「…ギルティ大丈夫だったの?」
ミクがギルティに言う。
「大丈夫だぞ、まぁ心配かけたな」
「…うん」
ギルティはミクの頭を撫でる。
ミクは何やら嬉しそうな声を出していた。
「…てい!」
「何だテシア」
テシアはギルティの手をミクの頭からどかす。
そしてギルティの手を自分頭に置いた。
「…はいどうぞ」
「するわけがないだろう。お前は大人なんだ、あまり子供じみたことはするな」
「差別!?差別よ!私頑張ったんだから!誰よりも頑張ったんだからね!ねぇお願い!」
こうなったテシアは面倒くさいことはギルティは知っている。
ギルティは仕方がないとあきらめた表情でテシアの頭を撫でる。
当の本人はとてもご満悦と言った感じだ。
「おーい!おまえら大丈夫だったのか」
するとさらに後ろからタスクがギルティたちのもとにやってくる。
「あぁ、大丈夫だったが…アクラはどうした?」
「さぁ?わからねぇ…まさか」
考えたくもないがその可能性が一番高い。
アクラが捕まった可能性。
確かに、アクラは大丈夫だと言っていたが、もしかしたら大丈夫じゃなかったのかもしれない。
タスクは両手を平を合わして空を仰ぐ。
「アクラ、お前は俺らの心の中に永遠に残り続ける、今までありがとうな」
「いや殺すな、勝手に殺すな」
「びっくりした!?アクラなんでいるの!?」
突然出てきたアクラにテシアが驚く。
その行動にアクラはため息をついた。
その腕には拷問をされた後や、
「あのね、なんで僕が殺されてることになってるの?」
「だっておめぇ、あのカードはどうしたんだよ」
「カード?あぁもしかしてこれの事?」
するとアクラはポケットの中から俺たちが持っていたようなカードを取り出した。
そこにいる四人はアクラがカードをもっていることに驚愕した。
その不可解な出来事にテシアは質問する。
「なんであんたがカードを持っているのよ!?」
アクラがカードを持っているわけがない。
アクラはギルティの偽物として東奔西走としていたのだ、
捕虜期間の人間はギルティを見失った段階でカードを配ることを辞めている。
アクラがカードを持っていることは不可能。
持っているわけがない。
「何言ってるのかわからないけど…簡単じゃん、奪ったの」
「奪った?」
タスクが反射的に声を上げるとアクラは答える。
「そ、まぁ誰でもよかったんだけど、一番安全に奪えるのは僕のホテルにいた女子二人組だったね」
「それ、その片方ギルティとしてとらえられるんじゃないか?」
「まぁそうかもしれないけど、たぶん大丈夫だよ。考えてみてよ、女子二人組の片方のカードを奪われた。当然その人は捕虜機関の人間に言うよね、なくしたってさ。その証拠にホテルの写真を撮った時間帯の見たら捕虜機関の人間の納得せざるを得ないんじゃないかな」
アクラは一番安全にカードが奪えて、なおかつその人たちにもリスクが少ない人間を選んで奪ったのだ。
なかなかにリスクリターンの関係を考えていないとできないことだ。
しかし、ギルティは疑問に残った。
「もし、その女子二人が写真を撮っていなかったらどうしたんだ」
「んー…それは知らない、僕も帰ってくることに必死だったから、正直誰でもよかったんだけど、まぁ写真の件に関して言えば賭けに出たって感じかな」
「…そうか」
確かにアクラは関係者の中で一番安全はやり方を選んだ。
しかしそれが失敗してもよかったのだろう。
成功すればよかったね。失敗すればまぁいいかと…それがアクラの考えだ。
「まぁ大丈夫でしょ…さ、入ろうよ」
アクラはそう言い我先に館の中に入っていった。
ほかの四人も同様にして、アクラの次に館の中に入っていった。
─────────────────────────
アクラはあの空間フォックスに入りるべくドアを開ける。
「……は?」
アクラは目の前のことに体が止まった。
まるでわからない、何故こんな事が起こっているのか。
嘘つきの空間フォックスに入るべく開けた扉の先はただの小さな汚い部屋になっていた
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