第二十六話 ーまいた種ー

「…なかなか汚いものだ」


ギルティの服に返り血が少しつく。

赤ともいえるし黒とも言うことができるその色はギルティにまた一つ罪を負わせた。


「…ム」


気づけば自分の連絡手段の携帯に通信が来ていたことに気づいたギルティはその通信を手に取り耳に当てる。


『やぁぁっと出たあぁぁ!!』


「……うるさいぞ」


耳の鼓膜が破けるかと思うほどのテシアの大きな声を浴びる。

ギルティは嫌そうに携帯を耳から若干放した。


『うるさいって!!どれだけ心配したと思ってるのよ!!まったくでないから死んだんじゃないかと思ったんだけど!!?』


「…俺が死ぬわけないだろう、それよりも、お前たちの方は大丈夫か」


『私たちの方は大丈夫、誰も捕まってないよ…それと聞いて、ラックスがもう戻っていいって言っていたわ、なんでか知らないけど』


「…そうか、まぁ何か考えがあるのだろう」


捕まることはほとんどないが、それでも絶対じゃない。

確実な情報が欲しかったギルティはひとまず安心した。


「俺にはまだやることがある、そちらもくれぐれも注意することだ」


『えぇ、そっちもね…誰にもばれないで帰ってね、ていうか早く帰らないとアクラがずっと追いかけられることになるわ』


「あぁ」


そうしてギルティは通信を切った後、アミ・ラズベリーの死体に触れる。

指紋などが残らないよう、手袋は忘れない。

正直見たくはないが…何とも無残な体がいやというほど目につく。


「…これは」


からだを調べていると服の左胸ポケットの僅かなふくらみにギルティは反応する。

決してそれは身体的なふくらみではない。

ギルティはポケットに手を突っ込み入っていたものを取り出す。


「……ふむ」


入っていたのは小さいキーホルダーのようなもの。

もっと詳しく見るためにギルティは外の明かりを利用してキーホルダーを色づかせる。


(銀色と金色が半々に分かれた鉄板、そして真ん中には何か書いてある、これは…)



何か書いてある、というよりはマークと言った方がよい。

大きな丸が三つトライアングル上に、そしてその上から十字の線が引かれている。

まるで意味の分からなかったギルティだったがそれでも何かあるのだろうと自身のポケットにしまう。


「さて…そろそろここを離れよう」


ギルティそう言ってダステル首相を投げ飛ばして割れた窓から外に出る。

幸い、追手はギルティの方に集中している。

民間人も多少は避難という形でいるためにをしているためばれることはないだろう。


「おい!お前何をしている!!」


そう思った矢先にギルティは声を掛けられる。

しかし何ら問題はない。


「私はアミ・ラズベリーさん率いるA会場のクリア者です。その証拠にこちらの金色のバッジがあります…あなたも見かけませんでしたか?」


「…貸してみろ」


目の前の男はギルティの持っていたバッジを手に取ると目を知覚したり離したりする。

そうして終わったと思うと、男はギルティに金色のバッジを渡した。


「確認した。確かにこのバッジはアミ・ラズベリーが渡したものだ。失礼する」


そういいおとこはギルティを捕まえるべく走り出していった。

皮肉にも最後はアミ・ラズベリーのまいた種でここの逃れることができた。



───────



そこからギルティはホテルに戻った。

ホテルに入った瞬間、受付に人がいなかった。

公にギルティがこの首都にいるというのが分かっているため避難しているのだろう。


「失礼します。あなたの名前は何ですか?」


ホテルに入っても、そこには捕虜機関の人間がいた。

それはそうで、ギルティが旅行客と題してきた可能性が高いからであろう。

恐らく一人一人確認している。


「アルクス・バンターニだ」


「アルクス・バンターニか…少し待ってください、確認します」


そう言って一度ぎるてぃのそばを離れ、受付の前でアルクス・バンターニがここにいるのか確認した後、こちらの方に戻ってくる。

そして一礼した後、結果を言った。


「バンターニ様がこちらのホテルに泊まっていたこと確認が取れました。ではこれをお持ちください」


「…これは?」


ギルティが渡されたのは小さな赤いカードだった。

その表面には何か文字が書いてあった。


「こちらはお客様が安全に自身の国に帰国なさるべく作りましたカードです。

いまはギルティが外で暴れていますのでお客様はギルティではないことが分かります。帰国なさる時にはこちらのカードを見せてください。そうしないとご自身が疑われてしまいますから」


「…そうか、助かる」


そういいギルティは捕虜機関の男の横を通り過ぎてエレベーターに乗った。

エレベーターの中には一人だけ、ギルティはテシアに電話する。


すると1コールで応答が来る。


『大丈夫?ちゃんと帰れた?』


「親かお前は、俺は安全に帰ることが出来た、もう戻らせたほうがいい…というかお前はどこにいるのだ」


『アクラは追手を振り払ってると思う、それでも能力があるから大丈夫だと思う。

タスクも最初に追手を分断させた後、もう戻ってる。私はミクちゃんとホテルにいるの、それにしてもあのカードみたいなやつ、大分面倒くさいこのになったわね』


「その口ぶりからして、お前も赤いカードをもらったのか?」


『そうよ、でもアクラはギリギリもらえてないかも…ギルティが消えたらカードがもらえなくなるらしいのよ』


「厄介だな」


『まぁアクラなら大丈夫…なんて言ってられない状況にはなってるわね』


「…あぁ」


もしもの場合、アクラをこの場所に置いていくことになるがそれは望ましくない。

ラックスだってそう思うだろう。


どうするか、そう考えた時だった。


「…む」


突如、何かを叩く音が聞こえた。


『何かあった?』


「…まさか」


その音は窓の方からであった。

ギルティは窓のそばまで歩き、勢いよくカーテンを開ける。


「……」


そこには人がいた。縦20メートルぐらいの外に張り付いていた。

しかしギルティの表情は変わらなかった。そのような恐怖の出来事は慣れた。

ギルティの窓に張り付く変態はあいつしかいないからだ。


「…やぁギルティ」


「……アクラ、とりあえず中に入れ」


「…うん」


ギルティは窓を開けてアクラを部屋の中に招き入れた。











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