第二十三話 ーダステル首相の願いー

ギルティはダステル首相の家にある長い廊下を一人歩く。

今頃、俺のことを模倣したアクラとそのままのタスクが外で暴れているはずなのでここには最低限の警備すらいなかった。


「……」


ダステル首相のいつ部屋の位置は分からないため一つ一つしらみつぶしに探していくしかないためギルティは一つ一つの部屋を慎重に開けていないのを確認して占めるの繰り返しで多少面倒くささを感じていたがそれもここまで、ギルティは最後のドアも前に立った。


「……さて」


残った最後の部屋はいかにもここにいますよと言いたげなほどにドアには華やかさがあった。

ギルティはドアノブを誰にもばれないようにゆっくりと音をたてないように回すがドアは開くことはない。


「……」


(ここにだけカギがかかっているという事はそういう事なのだろうな)


しかしどうしたものか、ドアのかぎのありかはギルティは知らない、ここで音を立てても潜んでいるかもしれない捕虜機関に気づかれる可能性もある。


「…ふむ」


今からカギを探している暇などない、アクラとタスクが捕まえられる可能性だって絶対にないとは言い切れることはない。


(…まぁ、なんとかなるだろう)


ギルティは数歩ドアの前から離れると一つため息をつく。

その次に右足に力を入れて前に飛ぶ、前に飛んだ反動の力の流れを右こぶしに流すような意識でドアを見据える。


「……失礼!!」


ギルティの拳が当たった瞬間、ドアが粉々になり音を立てて崩れ落ちる。

砂埃の先には一人の男がいた、誰もが一度は見たことがある存在。


「初めまして、ダステル首相。言っておきますがドアの修繕費は出しませんよ」


「……」


相手にとって絶望的な状況、ここにギルティがいる時点で計画がばれているのは分かっている、それなのに目の前にいるダステル首相は優雅にお茶を飲んで、まるでさわやかな昼時のような感じだ。


「…なるほど」


手に持っていたカップをテーブルに置き、

ダステル首相はテレビでも馴染みのある声で話し始めた。


「あなたは何者か…大体予想が付く、外にいるギルティの仲間なんだろ?それに俺たちの計画の事も知っているとなると恐らく俺を殺しに来たのだろう」


「……」


ダステル首相は苦笑の笑みをギルティに向けた。


「しゃべってくれよ、俺が悲しい奴みたいになっているじゃないか」


「俺はお前を殺しに来た、これは何の比喩でもなく言葉通りの意味だ」


「…ほぉ、俺が殺せると?では一つ、問いたいことがある」


「……!」


ギルティが感じたのは無。

ダステル首相からは何も感じないほどの虚無を喰らったギルティはほんの少し足を広げ、いつでも臨戦態勢を取れる状態にする。ダステル首相の能力がいまだにわからない以上、迂闊には触らせないし近づかせもしない


「…遺言程度なら聞いてやろう」


「そうか…じゃぁ」


ダステル首相は腕を大きくやや上にあげるように広げた。

それに反応したギルティは能力を使ってくると予想してさらに腰を落とし、完全なる臨戦態勢を作る。


(腕を大きく広げた、何かを放出する系統の能力者か、それとも何か別の能力か

まだわからない、ギリギリの距離まで近づかせて出方を見てから判断する。ダステル首相はなんの能力だ)


ギルティは頭で考えながらダステル首相の行動をうかがう。


………。


「……ッ!」


ダステル首相さえ自分が動いたと認識したと同時にギルティは距離取っ手見計らう

と同時にもギルティの思考は止まることを知らない。ギルティにはそれがスローのように見えた。


ーまだ何かを見せたしぐさはないー


ー上半身を完全に倒した。地面に触れることで発動する能力かそれなら地面からの攻撃が定番ー


ーそのまま下半身まで完全に倒した、いったいなぜ?こちらを油断させる作戦かー


ー頭まで完全に下げた、何をやっているのだー


ダステル首相の行動はギルティにはあまりなじみがない行動だった。

足を完全におり、上半身を倒しているその姿、さながらであった。

そしてそれを確信づけるかのようにダステル首相は叫んだ。


「俺を助けて下さぁぁぁぁぁい!!」




                                                  



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