第二十一話 ーRe,ファーストワークー

まっすぐホテルに帰ったギルティは下で昼食をとった後、足早に部屋に戻った。


「…む」


違和感を感じたギルティは自分のポケットに手を突っ込み目的のものがないと分かった。


「…鍵がないじゃないか」


カギというよりはカードではあるがそんなことはどうでもいい。

ギルティはドアを開けようと力づくで押すが、ガチャガチャと音が鳴るだけであった。当然ギルティはカギをポケットに入れており、今日の行動を振り返ってもカギに触れたことはない…まさか盗まれたか、しかし誰に?ギルティに気づかせずにカギを抜きとれる奴…


「あれ?どこ行ってたのさ」


「…おまえか」


一人だけ可能性があるとすればこいつ、アクラだけであった。

アクラは気の抜けた奴だが、やるときはやる男だとギルティは改めて認識した。

それもギルティのポケットからカードを取れるぐらいの技量を持ち合わせているのがこいつの謎なところでもある。


「なぜ俺のカードキーをスルような真似をした」


「だってギルティ、僕たちが行きたいって言っても入れてくれないでしょ?」


「当たり前だ。俺たちは別人として来ているんだ、誰かに怪しまれでもしたらどうするつもりだ」


「かたいなぁギルティは、まぁそこらへんは何とかなるよ。皆いるからさ」


ギルティの部屋を我が物顔で使っていることはこの際無視して、ギルティは自分の部屋に入と、3人の大きな声が聞こえてきた。


「おいテシア!てめぇズルしてんじゃねぇだろうな!?おい!」


「ほっほっほ、負け犬の遠吠えってやつね!!自分の運のなさを呪うがいいわ!」


「…見苦しい」


「嬢ちゃんこと、その未来を見る能力使ってるんじゃねぇだろうな!?」


「そんなことない、見苦しい」


タスクが苦しそうな表情を浮かべ、あとの二人は勝利の顔を浮かべている。

床にはトランプの数々が散乱していた。


「ちょっと、僕が来るまで待っててって言ったじゃん、てかタスクまた負けたの?弱すぎでしょ」


「ちげぇ!!何故か勝てねぇんだよ、やっぱりこいつらズルを」


「もぉいいよタスク、はいはい次やろうね」


トランプを集めて次なるゲームを始めようとするアクラ達にギルティはベットに座って気になる事をアクラ達に聞いた。


「お前たちは一体いつからいるんだ、俺のカギを抜き取ったなら一体いつごろからここにいるのだ」


トランプを配り終えて次のゲームを始めようとするアクラがギルティの質問に答える。


「さぁ、何時ぐらいだっけ、確かに時間ぐらい前じゃなかったかな…

あ、そろった…終わった」


「「「はぁ?」」」


ミクとテシア、タスクから気の抜けた声が漏れる。アクラの手を見てみるとそこにトランプはなく、ギルティが床にあるアクラのトランプらしき物を見ると神のいたずらかのようにすべてのトランプがペアになっていた。


「お前、やっぱりズルしてるだろうが!おい最初からだ。今度は俺が配るからな!」


「その前にいいか…」


この部屋にいること、トランプをしていることはギルティにとってそんなことはどうでもよかった、しかし気になる事があった。


「ただ一つ聞かせろ。ダステル首相の家はどのような感じであった?」


そもそもそのためにダステル首相の家を見に行ったのだ。

ギルティの言葉にまずタスクが反応した。


「…そうだな、特に変わらない普通の家って感じがしたが、ただ広い家って思った」


「あぁそうよ、あの家、なんか違和感あったのよね」


「違和感?なんだそれは」


トランプを引き、そして捨てる動作を止めないでテシアはギルティに自分の感じた違和感を教えた。


「一回ね、能力を飛ばしてみたんだけど、言いずらいんだけど、


「消えた?それは打ち消されたという事か?」


「多分そんな感じなんだけど、それじゃおかしくない?私たちが言うのもあれだけど、もし襲われた時、防衛兵の人たちが能力を使えなくなっちゃうじゃない?」


本当にギルティたちが言えたことではないがそれでは本末転倒。


(しかし厄介、もしそうだとするのならば能力を使えない)


「でもそんなこと、ダステル首相が考えていないはずなくない?僕は何かの結界があるんじゃないかと思うんだけど…ほいあと一枚、引きなタスク」


「クッソまたかよ…だがアクラ、お前の言っていた結界とか言ったか?そんな技術は聞いたことねぇぞ」


「受け入れないのは思考放棄を同じだよ、あった時を考えるとそうとしか思わないんだよねぇ」


「…なるほど、ほかにだれかわかったことはないか」


ギルティがそう言うがそれでもギルティの声には誰も反応しなくなっのを見て情報が切れたことを確認した。


「クッソ!また負けた…」


「ほんとうによわすぎてちょっと心配になってきたんだけど、大丈夫?」


「…かわいそう」


(逆に言うのならば何もないただ質素な家つくりなのが国民が親近感をわきやすくなるのが狙いか…それなら逆にありがたいか)


そうギルティが思っていると、突然ギルティの携帯が鳴る。

電話が鳴っているのはラックスからであった。


「どうしたラックス、また何かあったか」


『ギルティ君ですか、すみませんがテレビをつけてくれますか?」


「テレビ?ミク、頼む」


『皆さんと一緒にいるのですか?それもいいですがあまり関わらないようにしてくださいね』


「それは俺も言ったんだが…」


「…あ」


ミクの声が聞こえたギルティは音が鳴っていたテレビに視線を向ける。

そこには速報と書かれた文字とその情報を伝えるアナウンサーがいた。


『速報です。西の国アソトのダステル首相が他国との協定を結ぶことを正式に発表いたしました。その国というのが…』


ギルティはそこでテレビを切った。

一見すると何とも素晴らしい事、しかしギルティたちからすればこれが何を意味するのかなど容易に想像できた。

そしてギルティはラックスに問う。


「情報が漏れたのか?」


『生憎と、私には分かりません、しかしこれでは…ばれたと考えた方がよいでしょう。それか…向こうには頭の切れる人がいますね』


ラックスは困ったように言葉をつづける。


『しかしタイミングは今しかなくなりましたね…どうします』


「どうしますじゃない…行くぞ、今晩ダステル首相を暗殺する。各自連絡手段を持ちそれぞれ行動するように」


「しょうがねぇな…トランプはまたいつかな」


「まぁ速攻で終わらそうよ、ちょちょいとね」


「面倒くさいわね…行くわよミクちゃん」


「…うん、じゃあね」


「あぁ、またいつかな」


それぞれ自分の持ち場に戻っていくことを確認してギルティも自分の準備始めた。


(今回の依頼、今までにないほどのスケールだ。失敗すればこの国民の人権はなくなりはしないが、無いに等しくなるが故、絶対に失敗は許されない)


もし邪魔するやつがいるのなら、必要な犠牲として殺すだけだ。








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