第十九話 ー試験ー

「さて、今からお前たちには体力テストをやってもらうッ!!」


アミ・ラズベリーが様々な種類の測定器具の前にギルティたちを並ばせ、これからやる事について説明を始めた。


「それぞれ分かれているABCD会場はやっていることは変わらないッ!!しかし、そこは問題ではないッ!問題なのは脱落までの基準だッ!!」


アミ・ラズベリーの話を要約すると、ABCDの会場はそれぞれの脱落基準というものがある。体力テストをして下から順に落とすというのではなく、脱落基準を超えた者が脱落するという事、故にまったく減らなければ、ものすごい数がいなくなることもあるのだとか。


「そして当然!!お前たちA会場の人間はその脱落基準がほかの会場に比べて明らかに高いッ!!落ちた者はそのままB会場、さらにそこで落ちた者はC会場と徐々に下に行き、最終的に自分がクリアできた場所にとどまる!!以上ッ!!何か質問はあるか」


「…じゃあ」


「お、なんだ前にいる少年!!」


「あんたはここに来る前、残った数十名はって言ったが、それはどうやって決めんだ。どんどん落下していく方式なら人なんて永遠に減りはしないぞ」


前の男の鋭い質問におぉと関心の声を上げたアミ・ラズベリーは指を立ててその質問に回答した。


「心配はいらない!A会場にいるのならば今はなっ!!最初には一番下のD会場に行った奴から消えていく!」


「そうか…まぁありがとうございますってやつだ」


「あまり納得していない様子ではあるが、大丈夫ならばよかった!!ほかには質問するやつはいないか!!?」


アミ・ラズベリーは周囲を見渡して誰も手を上げていないことを確認すると大きく声を上げた。


「よし!!ではいくぞ!!みな誠心誠意、心からお前たちの生き残りを祈ろう!!では始める!!」


─────────────────────────────────────





「きっついなぁ…」


「まじで…もう…むり、しぬ…」


体力テストだとアミ・ラズベリーは言ってはいたが体力テストと呼ぶには相応しくない。言ってしまえば、人間を超えることができないと合格できない地獄のようだとギルティは思った。


(しかし流石はA会場にいる奴ら、ここの体力テストでもなかなかにやる奴らが多いようだ)


そのような地獄のような体力テストでも落ちたのは100人の中の20名ぐらい。大体はギリギリで脱落基準を免れた者ばかりだ。


「おい、さっきのひょろいの」


声のする方向を見ると、そこにはさっきのギルティに話しかけてきた男が隣に座っていた。しかも、男は何も疲れている様子は見えなかった。


「てっきりお前はもう死んでC会場とかにいるのだと思っていたぞ」


「実は俺も今そう思っていたんだ。なんで俺がここにいるのだろうか」


「ずいぶん余裕そうじゃねか、周りがこんなに息を切らしているのによ。お前がこのA会場にいる理由が少しわかった気がするぜ」


「運だろうな、お前の方も余裕そうじゃないか。さすが大口を叩いただけのことはある」


「馬鹿が、もうくたくただぜ、汗もびっしりついてるぞ」


「よし!これで全員か!?では終了!!体力テストはこれで終わりだ!!」


体力テスト開始から実に二時間は経っているであろう時にアミ・ラズベリーの発した言葉に皆安堵の声を漏らす、やっと終わった希望にいささか心にゆとりができて、目に生気が宿ってきている……




|アミ・ラズベリーの言葉を理解していれば…


「……なぁ」


ギルティにいる隣のやつが何かに気づいたようにこちらに視線を向けてくる、

どうやら気づいたようだとギルティは男とともに答え合わせをする。


「あいつ今、、て言ったよな?聞き間違いか?」


「…いや、確かに言っていたな…つまり」


「まだあるってことか…」


だろうなとギルティは男の言葉に肯定する。そう答えを出した瞬間にアミ・ラズベリーの声が聞こえる。


「さて!!では次だッ!!」


アミ・ラズベリーからの言葉に皆目から生気が抜け落ちていくような感覚だった。

「次!?」と声に出せない声を上げる。

まだ序盤という事なのであろうか。


「しかし安心してほしい!!次は最後であり、もっと簡単なことだ!!戦闘をしてもらうッ!!」


不幸中の幸いというべきか、次が最後という言葉に皆生気が灯った。


「ルールは簡単だ!!私が少しの休憩を取った後、私がやめというまで戦闘を続けろ!!そして周りを蹴り落とせッ!!私がやめと言った時に最後まで立っている者はクリアだ!!しかし殺すことは禁止だ!殺した奴は即刻脱落だ!!」


では休憩!!と言った後、アミ・ラズベリーは近くの休憩室に足を進めた。


「なんだ簡単なことじゃねぇか。それなら通過点にすぎねぇな」


ギルティの隣の男は立ち上がり、ギルティから離れる前に一つ言葉を残した。


「最初は狙わねぇでやるよ」


「情けならいらないぞ」


「情けを掛けたわけじゃねぇ、俺はお前を信頼しているからな…ちゃんと上がって来いよ」


「お前こそ、最初から上がってくる前提ではないか、そんな油断すると痛い目を見るぞ、俺の知人にもそういうやつはいるからな」


「偉そうに…その貧相な体で上がってきたらその言葉は改めて頭に入れといてやるよ、じゃぁな」


そういい離れていった男をじっと見ていたギルティは休憩が終わるまで壁に寄りかかった。


─────────────────────────────────────



「さてお前たち!位置についたか!?」


休憩約一時間。立ち位置に立ったA会場のやつらを見たアミ・ラズベリーは声を張り上げて全体に響かせるように言う。


「改めてルールを説明しよう!私がやめというまで戦闘を続けろ!!

やめ言ったとき、立っていたやつがクリアだ!!殺すのは禁止!!最後まで戦おうじゃないか!…それではッッ!!!」


アミ・ラズベリーは両腕を大きく広げる。


「はじめぇぇぇ!!!」


両腕の手を勢いよく合わサルと同時に、そこから発せられるその風圧で会場が揺れた。数多くの大柄な男たちが大声を上げながら名も知らない誰かに向かっていったことにギルティは地獄絵図だと苦笑した。



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