第十七話 ーファーストワークⅢー

早朝におきたギルティは自身のホテルを出て目的の首相の家に向かったギルティは今一度この国の状態を見渡す。

早朝でも活気があるこの国。特にギルティたちが目的としているダステル首相の家というのは首都アノというところにあり、そこに近づくと比例するようにその活気は増していくようで、首都とそうでないところの格差は少なからずある。


目の前の男二人を少しからだを半身にして避けたギルティだったがなぜかその男二人はギルティとわざとらしくぶつかった。


「おい、いてーじゃねぇか」


「……」


活気が増していくというのは人口が増えるもの、当然このような陳腐ちんぷな輩もいちいち相手にする必要はないと思ったギルティは気にする様子もなく首相の家めがけて歩く。


「おい!てめー無視してんじゃねぇよ」


こうなってしまえば仕方がないと思ったギルティは男二人がいる方向へと振り返る。

タスクに比べれば少し細いが、そこら辺の人を威嚇するぐらいなら造作もないだろう。


「すまない、先を急いでいるんだ。何か用か」


「用か?じゃねぇんだよ。ぶつかってきたのに一言も謝りもしないのか?お前ちゃんと教育ってもん受けてきたのか?」


「教育は受けてきたが、生憎お前たちのような人間に謝りましょうとは教わっていないんだ。すまない」


「てめーがぶつかってきたんだろうが!!あーあぁ俺の腕が折れちゃったなークソいてーなーお前のせいで折れちゃったなー」


わざとらしく腕を押さえて痛い痛いアピールをかましてくるのに便乗するようにもう一人の男が声を上げる。


「てめー謝れよ、どうだな有り金全部こっちに渡して土下座なら許してやるよ。どうするよ。した方が身のためだと思うけどなぁ」


ニタニタと気色の悪い顔を浮かべているがラックスの顔を日々拝んでいるギルティにはどうも思わない。真顔で最初からそれが目的かと思ったギルティは、面倒くさいとため息をついてから男たちに言った。


「そうだな、なら一つ勝負をしないか?」


「あぁ?勝負だと」


「そうだ、なるべくそっちに有利そうな腕相撲で勝負してやる」


路地裏に来い。とギルティは男二人を置いていき路地裏にへと足を運んだ。

それに引き続き男二人は何かを話し合った後に路地裏に入った。


「さて、じゃあこのドラム缶で」


「死ねぇぇぇぇ!!」


だろうなと内心苦笑したギルティはこれを読んでいるかの如く男の攻撃を前にはねて避ける。


「物騒じゃないか。手っ取り早く腕相撲で勝負しようとしたが」


「手っ取り早い?そうだなこっちの方が手っ取り早いと思うがね!!」


目の前の男達は臨戦態勢になっていることを悟ったギルティは男たちにおちょくるように言う。


「確かに手っ取り早いな、腕相撲などしなくてもお前たちの事など二秒で倒せる」


「そんな貧相な体で調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


「おとなしく金を渡しやがれ!」


ギルティに向かって走り出す男たちを見てギルティは嘆息する。

日々のタスクの速さ、パンチとみて対処しているギルティからすれば

この男たちなど1+1を解くことに等しかった。


ただ単にその自慢の力で弱者をぼこぼこにしたような動きに決まった型など何もない。向かってくる男の顎に合わせるだけの簡単な事。


「ぁ…」


糸が切れたように一人倒れる。


「は?」


男は何が起こったかわからかった。

しかし目の前のギルティが牙を隠した獰猛な獅子、狩られるのはこちらの方。

気づいたときには目の前を仲間を見捨てて路地裏から逃げるべく走っていた。


「まぁいいか、先を急ごう…まぁここでいいだろう」


目の前にいる男をごみ袋を布団代わりにしてそこに男を置いたギルティは路地裏を抜けてダステル首相の家に歩き出した。


─────────────────────────────────────



「おぉ…これがそうか」


目的の場所に到着したギルティは圧巻の声を上げた。

でかい、その一言に尽きる。

今ギルティがいる位置がダステル首相の家から100メートルぐらい離れた門の前で、門と通ったその先がもうダステル首相の敷地内らしい。

当然中に入ることは許可されていない。


ギルティがパンフレットを見ながらそんな風に思っていると横から見覚えのあるやつが視界にちらつく。大柄な男は隣にいるギルティが小柄に見えてしまう錯覚を覚えてしまうような。


「…よっ」


「よ、じゃない。ここでは俺らはそれぞれの観光客として動いているんだ。あまり話しかけるな」


「へいへい」


しかしまた隣に二人の親子のような女性がこちらに歩いてくる。

そしてギルティの隣に来てから歩みを止めた。


「「…よ」」


「よ、じゃない。なんでお前らの話しかけてくるんだ」


「「…暇だったから」」


はぁとため息をついたギルティは一度ダステル首相の家を離れる。

そうすると、目の前からまたもや見覚えのある顔が向かってくる


「あれ、何やっているの」


「…お前こそなんだその服装は」


「服?まぁ買ったんだよね、てかすごいよ近くのマーケット。まじで何でもそろってる」


ひらひらと一回転するアクラにギルティは先ほどよりも大きいため息をついてその場を後にした。


「バンターニどこ行くんだ」


「俺にはやることがある…お前らは引き続き探索しろ」


ギルティは四人の返事も聞かずに自身のホテルに戻っていったのを確認した四人は顔を見合わせてそれぞれ散開した。



─────────────────────────────────────


「ラックス、本当にやるのか?」


ホテルに戻ったギルティは電話機でラックスに問う。


「えぇもちろんですとも。ギルティ君には予め作戦を伝えておこうと思いましてね」


「そうか、しかしこれ、本当に俺がやらなくちゃいけないのか?」


「そうですね。今回の依頼、ギルティ君の実力がカギになります。

これはギルティ君しかできない役割ですよ」


「…そうか」


「ではギルティ君さようなら」


「あぁ」


電話が切れたことを確認したギルティは動きやすい服装に替え再度ホテルを出てあるところに向かった。














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