第十四話 ー結成、最強の会社ー

「おや、皆さんお揃いで、一体どうしましたか」


事務室の椅子に深々と座りコーヒー片手に持っているラックスにそんなことを言われここにいる全員は意味不明と言いたげな表情になる。

ラックスが来てから丁度一時間が経過しようとしていた時だった。

タスクが入れられたパンチのダメージは歩いているうちに回復したがギルティのパンチを喰らって数十分で回復するタスクもタスクで変態である。


「ラックスさんがあとで来てくださいって言ったんじゃないですか」


「そうだぜ、ラックスが来いって言ってたんじゃないか」


 アクラとタスクがそういうとラックスは不可思議な表情を作り、ギルティたちに質問した。


「私が言ったのは今から大体一時間前ですよ、それなのにこの遅さは一体どういう事なんでしょうかねぇ」


「いやいや、ラックスさんもここに着いたのは今ぐらいでしょ?」


「一時間前ですが」


「「「「「……」」」」」


「一時間前ですがぁぁ??おかしいですねぇぇ、あとで来てくださいってちゃんと言ったはずですがねぇぇぇ???」


表情を歪ませて他人を煽ることに全集中したような表情。

ラックスの性格が悪い理由第一位の「他人のミスはとことん上げ足を取り煽る」

ラックスの思わぬ言葉にギルティたちは数秒固まり思考した。


いや、そもそもこれがラックスでなければ思考する余地もない、ラックスと常人の歩くスピードを比べるとラックスが8段遅い、故に皆は勘違いしていた。


ラックスが一人なのに常人と同じ速度で歩くことを誰も考えなかった。


「…まって」


張り詰めた空気の中で一人、ミクが口を開くと皆一斉にミクの方を向く。

ラックスはミクの方を鋭く見ると質問した。


「…なんですかミクさん、何か言い足り事があるのならばどうぞ」


大人でもうろたえてしまうような低い声でラックスはミクに質問するが、ミクは何事もない様に答えた。その顔や体からは一切の恐怖が見えないまさに勇敢な勇者だった。


「ギルティたちは悪くない、私が行ったことが原因なの」


「その原因は?なんなんですか」


「私がギルティにこの場所の紹介を頼んだ、あなたが昨日この場所の紹介をほったらかしにしたから」


遠回しにミクが上げ足をとるとラックスの表情がさらに歪んだ。

しかしラックスの表情の変化に気づいていないのか、それとも気づいてなおこの態度なのか、ミクは言葉をつづけた。


「遅刻問題に関してはお互いの共通認識をそっちは悪用した。ラックスは歩くのが遅い。だからそれを巧みに利用されこちらが遅刻したみたいな感じになった。でもそれってちゃんとした時間設定をしなかったあなたにも問題がある」


だからこれはお互いが悪い。と最後に言い放ちミクの言葉の弾丸トークは終わった

のを認識したラックスは「はぁ…」ため息をつく。興味がなさそうに髪をいじりながらギルティたちに、正確にはミク以外に言う。


「大の大人たちがなんで黙って、ここに一人いる子供に守ってもらっているのか…私は悲しいなぁとっても、あの危険度Sの称号を掲げる四人がなぁぁ…ていうのはもういいですかね」


「誰か反応してくれてもいいんじゃないですかね」と言いながらラックスは椅子を再度ギルティたちの方に向け、話を進める。

ラックスは基本的に起こることはしないのだがたまに怒ることがあるのだがそれがめちゃくちゃに怖いことを長く一緒にいるギルティたちは知っていたが故、声を出そうにも出せなかった。


「この度は皆さんお集まりいただきありがとうございます、今回は分け合って皆さんにしかできない私からの頼みごとを持ってきました」


これはまた珍しいことだとミク以外は思った。

ラックスが人に頼み事というのは仕事以外では大変珍しい事である。

その根本は「借りを作ったらめんどくさいから」だそうだ。


目を丸くしているとタスクがラックスに聞く。


「頼み事だ?またどっかからの依頼ってことじゃねぇのか」


「えぇまぁ…簡単にいますと、私はこの地位を降りようと思っています」


ラックスの言葉にまたもや石像になる四人をよそに今度はミクが聞く


「…なんで降りるの、今の地位がそんなによくない?」


「いえ、満足していますがこの場所というか会社と言いますか、私自身が大きくしたわけではないんですよね、なんなら少し無理やりでしたので」


そう、ラックスがこの地位に付く前、ほかのやつがラックスの地位に座っていたのだが、ずいぶん前にこの地位をラックスに預けたのだ。机の手紙を読んでみると

「旅に出る」

とただそれだけが書いてあったらしい


「単刀直入に言います。私が新しく作る会社に皆さま入ってほしいんですよ。

この五人で最強の会社を作りましょう」


ニコニコ営業スマイルを向けられる。


「……何をする会社なんだ」


ギルティが聞く。


「…絵をかくとき、皆さんは色々な色を使いますよね」


そんな何も脈絡がない話の始まり方に困惑するギルティたちに気にせず、ラックスは自分の話を始めた。


「赤色、青色、黄色、これは光の三原色と言われる基本的な色からほかの色まで様々な色があります。そうして色を使っていくとこにより絵は完成していく。

私は会社もそうだと思うんです」


「結局何が言いたいんだ」


タスクの言葉にお構いなしに続ける。


「会社も同じだと思うんです。色という様々な人材と企画を経て、絵という会社は完成されてくる。ですが今回私が作ろうと思う会社は色は二色しかないんです」


ラックスは右手を地面に置き指を二本立てる。


「圧倒的な白か、圧倒的な黒の二つです…圧倒的な光の仕事か、圧倒的な闇の仕事かですよ、どうですか」


「…僕はいいよ」


最初に声を上げたのはアクラ。


「正直な話、ラックスさんについて行った方がなんか面白そうなことが起きそうだし、僕はいいけど」


「…まあいいか。俺たちは与えられた仕事をこなすだけだ、ラックスの命令ってなら仕方がねぇなぁ」


「俺は…」


ギルティは決めあぐねていた、ラックスの言っている白と黒の世界というのは生半可な仕事では決してない、想像を絶するような仕事がこの先待っていうことになるのは明白である、それにパートナーのミクがその仕事に耐えられるのかどうかが問題である。


「…正直な話、ミクさんにはとても荷が重い、悪い意味でギルティ君の相方になったからには私についてきてもらいます。しかしここで降りるのならばすこしでもおりやすい様に色々やりくりしてあげますが…まぁその必要はなさそうですかね」


一瞬も隙を見せないミクの顔にラックスは微笑した。

これほどまでに覚悟が決まった子供は初めて見たと内心面白いと感じた

ラックスは視線を後の二人に移す。


「それで…あとはお二人ですが、どうしますか」


「…俺は」


出会ってまだ一日ぐらいしかたっていないがそれでも危険な仕事をこんな子供に任せるのはどうなのだろうかとギルティは思う。


「…ミクはいいのか何が起こってもおかしくない世界なんだぞ。そんな世界でお前は正気を保っていられるか」


「…愚問ってやつ、私はビビらない。ここに来た時からずっとこの世界で生きるって決めてる。これからも…」


覚悟の決まったミクを見てギルティは内心不安だったのが消え息を整える。


「ミクが覚悟を決めてるんだ。行かないわけにもいかないだろう」


「じゃぁ私も行くわ!!ギルティと一緒に行くわ」


ギルティの言葉を待っていたテシアが大きな声で手を上げながら言った姿を見てラックスは全員の確認が取れたとみて、五人全員の前に紙を飛ばした。


「ありがとうございます。では皆さんその紙に記入して、明日また全員でここに集まってください、次回は正午でお願いします。ちゃんと言いましたよミクさん」


「…うん」


「では皆さん、そちらの紙はよく読んで書いてくださいね。ではもう戻っていいですよ」


事務室のドアから全員で出ていったのを確認したラックスは自分の風貌とは似つかない脱力の仕方で机の前に倒れる


「とりあえず…第一段階は終了ですかね。あとは何とかしてくれるでしょう」




















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