第十二話 ー危険度S VS 危険度Sー

場所は皆がよく知っている闘技場、この闘技場には様々な施設があるが

主に使われているのが戦場と呼ばれるこの空間。


ただ真っ平な広い空間には障害物などは何もなく、本当に小細工なしの殴り合いとなっているこの空間は自分と他人の優劣をつけるためにはもってこいの場所である。


そんな空間にひときわオーラを放つ場所がある。

そのオーラを放っているのは世界最高危険度を持つ二人の男。

ギルティとタスクの死合がひときわ目立っており、それを目撃した周りのやつらは動きを止め、始まろうとしていた運動しあいを傍観していた。


それはほかの二人アクラとテシアも例外ではない、危険度Sでもあるこの二人でさえもあの中に介入するのは死を意味していた。


「…なんか、人が多い」


「まぁ、最高位の危険度を持つギルティと危険度Sのタスク、目撃者がどんどん人呼んでるんだろうね」


「…へぇ」


ギルティとタスクの死合は決まってこのようなことが起きる。

いつの間にか大観衆の前で戦い事が多いのだ。

そもそも危険度S同士の戦いが珍しいのでその中でもギルティとタスクの死合は見ていて価値あるものでぜひ見てみたいという人が多い。


「……どっちが勝つと思う?」


ミクは二人にそう言った。

ミクはギルティの強さを完璧に把握しているわけではない、

以前は力の片鱗を見ただけでミクにはどちらが強いかなどわからないのだ。

それにタスクは未知数すぎる。


「正直な話、ほとんどの確率でギルティが勝つよね」


「そうね、タスクは能力も身体能力も強いんだけど、やっぱりギルティが別格ってところ。負けてるところ見たことないわ」


二人の準備運動を見ながらテシアとアクラの言ったのをミクは少し疑問に思ったことがあったのを聞いた。


「ギルティの能力って何なの?」


それは時々ミクが思っていたことであり初めて会ったギルティから今までのギルティには能力を使っている様子見られなかったからである。


「…それ聞いちゃう?」


「…それ聞いちゃうかー」


二人は顔を見合わせた後失笑をした。そして二人はミクに衝撃の事実を打ち明けるとミクは自分の耳を疑うことしかできなかった。





「ギルティはね、今のところ無能力者何も持っていないなのよ」



─────────────────────────────────────


戦場と呼ばれる広場の中央付近、ギルティとタスクが話していた。


「それでルールは?」


「ルールは基本と同じ。有効打が一撃でも入れば入れた方が勝ちだ。武器の使用は禁止」


「能力の使用は?」


「当然ありだ、それじゃ実践向きとは言えないからな」


「いつもそのルールでやってはいるが、そろそろルールを変更してみるのはどうだ、たまにはお前の得意になるルールでもいいのだが」


「……なぁ」


「どうした」


遠く広い戦場と呼ばれる場所の端で準備運動をしていたギルティにタスクは何とも言えない表情で話しかける。


「…俺は何でお前に勝てないと思う?」


タスクはギルティにも体格でもパワーでも勝っていると自負している。

何故に勝てないのかという素朴な疑問を聞いたギルティはゆっくり口を開いた


「俺は力任せに攻撃しない、確実に当たる瞬間まで待つからその差だ、体格的に大きなダメージが入らないと思っているからだ」


「仮に聞くが、俺がすべての自分の欠点を克服したとしても、おれはおめぇに勝てる未来が見えないのはなんでだ」


「そんなのは自分自身の考え方の問題だ。欠点がなければどんなに強い敵でも勝てる。勝負というのはいつだって欠点の突きあいだ」


「そういう答えが聞きたいんじゃねぇ、俺とお前には圧倒的は壁がある、それが何なのかって聞いてんだ」


「答えろよ」とタスクはギルティのことを少し睨むが、

当の本人は全く気にせずタスクがいる方向と逆側に歩き出す。


「…それは本当にわからないが一つ言えるだけ言えることがある」


数十歩歩いた後、ギルティはタスクの方に向き直り微笑を浮かべながら言った。


「もし壁があるとすれば、その壁は俺の自覚なき中に眠っている能力のせいだ。

では来い、タイミングはそちらの都合に合わせよう…」


「なめやがって。あとで言い訳しても知らないからな」


苛立ちながら言ったタスクをさらにギルティは反論した。


「俺のセリフだ、こんなにもハンデをくれているのだ。そろそろ勝ってくれないとこちらが困ってしまう」


タスクが戦闘の構えをとるのに対し、ギルティは直立不動で何も動かない。

その姿を見てさらに苛立ちを募らせたタスクはすでに右手が震える。


「…ッ!」


タスクの体格から放たれる巨大な力は腕だけでなく足にも当然ある。

息をつく暇さえないタスクの移動と右腕の突きは間違いなく一級品である。


しかし、そんな突きでさえもギルティには左手で簡単に受け止められてしまう。

爪楊枝つまようじが隕石を受け止めるように異様な光景だった。

受け止めた瞬間、常人ならば吹き飛ばされてしまうような風圧が周りの観客まで巻き込む。


「本当に思うんだが、お前は身体能力強化系の能力じゃないか、俺のパンチをやすやすと受け止められると奴なんてそうとしか考えられない」


「能力の吟味をしている暇があるのならば少しは俺に攻撃を当ててみるのはどうだ、これは有効打ではないぞ」


「そうですかいッ!」


タスクはフリーになっている左腕を胴に叩き込むがギルティはこれを片手で防ぐ。

防ぐたび先ほどのような風圧がギルティの後ろのいる奴らに台風のようにぶつかる。


「ウォォォラァァ!!」


「……ゥ」


自分の想定範囲外の攻撃を受けたギルティは数十メートル先までほぼ地面と平行に吹っ飛ばされるが、ギルティはうまく勢いを殺してややしゃがんだ状態で地面にきれいに着地する。その顔は意外にも余裕と言った表情。


「さすがに強いな、その能力ちから。少し使い方がよくなってきているんじゃないか、ほかのやつらとはまるで感じが違う」


「だべってる暇あるならこちらから行かせてもらうぜ!」


タスクはまたもやギルティの前に一瞬で近づき能力込みの正拳突きを繰り出すが、

ギルティは地面を強く踏み込み空中に舞い上がる。


しかしそれを読んでいたのかタスクも同様に大きく舞い上がりギルティに背面蹴りを喰らわし、ギルティは腕で受け止めるが大きな音を立てて吹っ飛んでいく。しかしきれいな着地にタスクは若干呆れる。


「まじでおめぇの能力、なんなんだよ、俺のパンチを受け止めて、なおかつあんな速度で吹っ飛ばされてるのによゆーそうに着地なんてよぉ」


「知るか、さっさとこい、もう降参か?」


「馬鹿言うんじゃねぇぞ!」


タスクはもう一度ギルティの方に向かっていく。

この攻防、果たしてどちらが勝つか、そればかりを注目していた観客達は息をすることさえ忘れるほどであった














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