第十一話 ー二人は止められないー

ミクが書いた紙を見た三人は数秒固まった状態だったのを見て、ギルティは過去の自分のそうだったと思う。

ここで能力を明かしたのにはギルティ自身、理由はある。

ミクの能力は未来予知的なにか、はたまた未来予知的に関する別の能力か分かっていても絶対に防げない。

未来予知を考慮して動いていたとしてもその未来を見てしまうからだ。


「…あぁね」


フリーズしていた三人の中でアクラが一番最初に声を上げる。

アクラは基本的に冷静な部類、ありえないという考えをもしあったらという柔軟な考え方ができる分、ほかの二人よりも先に答えにたどり着いた。


「そりゃギルティが連れてくるんだ、なにかとんでもない能力なのは覚悟してたけどさ…まさか未来予知って言いたいの?」


「…マジの未来予知なのか、まじか…」


「…こんなのって」


タスクとテシアも次々に声を上げる。

しかしまだ何かの手品だと思っているのを感じ取ったギルティは追い打ちとばかりに補足する。


「さっきも説明した通り、こいつとは依頼できた貧民街で出会った、その時もこいつは俺の動きをすべて予知していた本があった、もちろんその時だけでなく、俺が手に取った時の状況まで細部とは言わないが書かれていた…それとも」


ギルティは目の前にいる三人に鋭い視線を向けて言った。


「俺の言葉が信用できないか?」


感じ取ったのは研いだナイフのような鋭い殺気と沈み込んでしまいような深さの目

に、危険度Sの三人でさえも肌がビリビリとしてしまう感覚を覚える。

これがギルティ、危険度Sの最高位である。


「…ま、ギルティがそういうのならそうなんだろうね」


その中でもやはり一番最初に声を上げるのはアクラ。


「…まぁ、こんぐらいの能力じゃなきゃギルティがパートナーにするはずねぇし、

そもそも連れてこねぇか」


アクラとタスクはじゃあしょうがないと納得したがテシアだけはまだ何か言いたそうだったの感じたギルティはテシアに言った。


「なんだテシア、まだ何か言いたいことでもあるのか?」


「…何でもないわ、もう認める。ギルティのことは好きだけど、好きな人の嫌がることをしたくないの」


手をひらひらと扇ぎ降参と言いたげ行動にギルティは殺気を解いた。


「理解してくれるようで助かる。わかっていると思うがミクの能力は今までに見ない能力だ」


「言うなってことね」


「てか言ったらそっちが嬢ちゃんがかわいそうだろ、そんな能力全員ほしいぜ。

必ず奪いに来る」


「まぁ私はどっちでもいいんだけど、ギルティが言うなってなら言わないわ…ミクちゃんよろしくね」


「…ありがと」


ミクの安心した表情を見てギルティの一息つく、時計を見れば針は10時20分を指していた。

昼飯時にはまだ早いとギルティが思っていると部屋の扉が開いた。


「おぉ皆さんお揃いで、ちょうどよかったです」


そこには扉の端から顔だけを出しているラックスがいた。


「なんだラックス、また依頼か?」


ギルティがそういうとラックスは手を横に振った。


「いえいえ、今回は依頼ではありません。今から皆さん全員で実務室に来ていただけませんか?」


「俺はいいが…」


「俺も何もやることねぇしな」


「僕もー」


「私も今日は何もないから…」


「では先に行っていますので後で事務室にお集まりください、それでは」


そういうとラックスは足早に部屋の前から姿を消したのを確認したタスクは

椅子から立ち上がりギルティたちに言った。


「…さて、あと一時間ぐらい猶予があるが、お前たちはどうする」


「特にやることもないし、僕はここでゴロゴロしてようかな」


「私はギルティと一緒に寝る」


「俺はある、ミクはまだここのことを知らないからな、一時間もあればこの場所を十分に教えられる」


ミクが付かれていたため中断していたが、そういえばまだこの場所のことを紹介しきれていないことに気づいたギルティはミクを連れて外に出る。


「そういう事なら俺もついて行くわ、お前らはどうする」


「うーん、みんなが行くなら行くかなーテシア次第」


「もちろん行く」


「じゃあ僕も」とアクラは椅子から立ち上がった


とは言っても、紹介するだけなら一時間もかからない、この場所の施設と言えば、

この宿舎とあと一つしかない


「つっても、この場所はここ以外だったらあと一つしか教えるところないしな、しかも嬢ちゃんにはいかにも無縁って感じの場所だ」


「それでも紹介しておいた方がいい、場所がわかるならなるべくその近くにはいかない方がいいというのがわかる」


「…なんて場所?」


ミクがギルティにそういうとギルティは答える。


「簡単に言えば闘技場だ」


───────────────────────────────────




闘技場というより、鍛錬場と言った方がいいだろう。

はっきり言って、この場所には戦闘狂が多い。

皆自分の力を確かめたいのか、それとも自分の欲を満たしたいのかは定かではないが、それでも熱い戦いってのを望んでいる奴らは多いのだろう


内装は基本的に三つ、

一つ目は筋トレ器具。能力だけじゃ強くはならない、能力は体の質と比例すると言われているため、よくここを使う奴らは多い。

二つ目は



「…ここが闘技場?」


「闘技場というよりも、鍛錬場と言った方が正しいな、皆自分自身を強くするために鍛錬している」


「…みんなも?」


ミクは後ろにいる三人に問いかける。


「俺はよく使うな、そうしないとうまく扱えない能力だしな」


「僕はめったに来ないね、ここにきて鍛錬をするとかじゃなく練習でどうにかなる能力じゃないから」


「私も大体そんな感じかしら、時々使うけど大体は体のケアを目的としてるわ。ここに来るのは剣を使う人とかがよく来てるイメージがあるわね」


「ギルティ、これは?」


「それはランニングマシーンだ。体力をつけるためによく使われる」


「これは?」


「それはペンチプレス。上半身の筋肉をつけるためにあるがくれぐれもやろうとは思うなよ」


近くにある器具を興味深そうにあれこれ触るミクはようやく年相応の動きを見せてくれたと思ったギルティは、ただ無言でミクの動きを見ていた。

大人びた性格からはそんなにはしゃぐとは思わなかった。


「悦に浸っているところいいかギルティ」


タスクが声をかける。


「悦には浸ってないがどうした、何かあったか」


「…テシア、今何時だ」


「え、いま?今は10時40分ぐらいね」


只今の時刻を確認したタスクはふんふんと声を鳴らしギルティに向かって言った


「今から少し運動しようと思うんだが、どうだギルティ。一緒にやらないか?」


薄着になり屈伸や上半身を伸ばしているのタスクを見てもよくわからなかった。

確かに時間があるが、それになぜ俺を誘うのか。

様々な憶測が頭をよぎっているギルティに対してタスクはわかりやすく言った。


「…お前とじゃなきゃできないんだよギルティ、ちょっとしたをしようって言ってんだぜ」


タスクの言葉を完全に理解したギルティはタスクに挑発するように言った


「いつも言っているがもう少しわかりやすく言ったらどうだ。ギルティさん僕と一戦お願いしますとな」


「そんな言葉望んでねぇくせによく言うぜ、今回は勝たせてもらうぜ」


「いつもそういって地べたをはいつくばっているのは誰だろうか。頭を使わないと俺には勝てないぞ」


「「…あぁ」」


またかとテシアとアクラは同じことを思った。

この闘技場兼鍛錬場は戦闘狂の集まりである。

もはや恒例行事、そこにはギルティもタスクも例外ではなかった。


タスクは本能むき出しにしている変態で、ギルティはいやいや風ではあるが確かに戦いに性を実感している変態である。二人とも一番この闘技場を使っていると言っても過言ではない。


「……なにこれ」


「近づいちゃダメよミクちゃん、あれは馬鹿同士がやる奴だから、私たちは見ているだけでいいの」


「あれに近づこうと思うのが無謀だけどねぇ」


異変に気付いたミクが二人の近くに近づこうとすると静止する。

ミクも絶対に近づくなオーラを放っている二人にミクは何も言わなくなった。


こうなったらもう遅い。この死合の結果を見届けるのが外部の人間にできる唯一の事だった








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