第十話 ー自己紹介ー
「黙れ馬鹿が」
「どうしようギルティ!?私全然心の準備ができてないよ!」
しかしギルティの前にいる女性はまるでギルティの声など聞こえていないように一人で話し始める。
「どうしよう!全然記憶にない!いつ生んだかな、もうそれはいいや、今はこれからの事を考えないと!何が必要かな?ご飯は大丈夫かな?もしかしたら私のがまだ必要かな!」
「黙れってつってんだろこのビッチがぁぁ!!」
「痛ったぁい!!」
これにはたまらずギルティも感情を露わにしてテシアを頭のてっぺんから殴りぬける。テシアは頭を押さえギルティに泣き目を向けながら言った。
「なんで殴るの!?やめてよ!赤ちゃんがいる前でいきなり家族喧嘩!?」
「なめたこと言ってるんじゃねぇ、それによく見ろそいつは赤ん坊じゃねぇ、れっきとした子供だ、それに俺とお前の子供でもない」
よく見ろ。とギルティがテシアに言うと、テシアはミクの布団をはぎ取り、顔を数秒見た後、再度ギルティに向き直った
「…私って記憶が一年間ぐらい抜け落ちてる!?」
「……あぁ」
もうこいつは駄目だ。そう思ったギルティは一人で意気揚々に話しているテシアをよそに部屋から出ていった。
タスクなら何とかしてくれるだろうという淡い期待を込めて…
「お、帰ったか、大丈夫だったか?」
「……あぁ」
食堂に戻れば、料理を食べ終えた形跡を残していたタスクがギルティの帰りを待っていた。その容器は俺がいた時よりも多くなっていた。
「大丈夫か?なんか行く前とは打って変わってやつれてるというか…まさか」
「違う、まったく問題ないから、だからその手をやめろ行儀が悪い」
左手でわっかを作り、右手の人差し指を横移動しているタスクにギルティは
嫌気が差していた
「ははは、そうか…またテシアが何かやらかしたのか」
「まぁそんなところだ…ところであいつはどこだ、部屋に行く途中に見かけたぞ」
「あいつなら今飯が足りなかったとか言って取りに行ったぞ」
「そうか…一回あいつ呼んでくる」
重い足取りで振り返るギルティに対してタスクは「あぁ…」
と同情したような目を向け、ギルティの後ろ背中を見送った。
「ちょっと大変大変!!タスク!見て!」
「あぁテシア、ちょうどいいところに、てかなんだよいきなり…」
ギルティの足は止まり、俺の部屋方面から何かを抱えてタスクのいる食堂の方に入ってきたのを追いかけた
「私全然記憶にないんだけど!私とギルティのの子供ができちゃってるの!」
その時、食堂が凍ったように静かになった、テシアは間違いなく美人で人気がある
そのテシアに子供!?と大勢の人たちがこちらに一斉に注目が集まる。
周りからは「嘘だろ…」「まさか本当にそうだったのか」など様々な憶測が飛んでいるがギルティの耳には何一つ届いていない。聞くことすら放棄してしまった
ホラ!!といってテシアが見せてきたのは間違いなく子供ではあるが「…助けて」
とえらく感情表現のできる子供であることがわかりすべての状況を察した。
「ギルティ…一回お前の部屋に行こうぜ、ここじゃほかの目もあるしな…あいつ連れてくるよ」
「…あぁ、馬鹿テシア、お前も来い。ミクも連れてな」
「名前ミクちゃんっていうのねー私はママですよー」
「…助けてギルティぃ」
すまんミクもう少しそのままで我慢してくれとギルティは心の中でひそかに思った。
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他のやつらを連れて自室に入ったギルティはテシアの誤解を解消すべく一時間の死闘の末何とか誤解は解けた。しかしその間、テシアは何の疑いもせず自分はこの子のママですと言ってやめなかった。
「……つまり、ギルティは今のところ保護しているってことね、安心したわ。この子を産んだ覚えなんて私になかったからどうしようかと思っちゃった」
テシアは未だにミクのきれいな髪を投げ続けるが、当の本人は興味がないのか嫌がりもせず、かといって好んでされているようには見えない
「まずは自己紹介をした方がいいんじゃない?」
「そうだなアクラ、嬢ちゃん俺の名前はタスク…そしてこっちの髪がぼさっとしていかにもやる気と栄養が足りなさそうな奴は」
「アクラ、僕は【アクラ・デンリステン】よろしくねミクさん…」
「そして!この私!ギルティの将来のパートナーとなる!
【テシア・リザルティス】。これからよろしくねミクちゃん」
「…タスクに、アクラ…そして勘違いおばさん」
「はぁこのくそが」
「黙れテシア、ミク、そんな言葉づかいはよくないぞ」
「…本当の事」
ミクはテシアの元を離れてギルティの隣に座った。
ここで気づいたのはテシアひとり。
ミクはここが自分の位置だと見せつけるようだったのだ。
「あのねぇ、嫉妬する気持ちも分かるのだけれでどもうギルティの隣は私で埋まっているの、たまたま拾われただけの子供じゃ荷が重すぎるのよあなたの方こそ勘違いよ」
「…いや、こいつは俺もパートナーだぞ」
「あ、やっぱりそうだった?」
「やっぱそうか」
「…はぁ????」
恐らく予測を立てていたアクラとタスクは腑に落ちた表情。
しかしテシアはというとそうではなかった。
長く一緒にいる俺たちでさえも過去最高に図太い声を発したテシアはギルティに迫った。そして焦ったように早口で言った。
「ギルティさ私がパートナーだよね約束したもんね私が一人前になったらパートナーになるって言ったのよね、私待ってたんだよ一体いつギルティから打ち明けてくれるのかな思ってたんだけど、ねぇ」
「……落ち着けテシア、一回待て冷静になれ」
テシアの豹変ぶりにギルティは静止の言葉を掛けざるを得なかった。
これにはいつも静止をかけてきたタスク、アクラもびっくりして動かなかった。
今動けば自分がやられかねないと感じさせられるほどの殺気がビンビン飛び出ていた
少しの豹変は何とか慣れてきたギルティだがこのレベルの豹変はどうしたものかと頭を悩ませるていたが
ふぅと思いのほか冷静を取り戻して息落ち着いたテシアはギルティに問いかけた。
「もしその子が本当にパートナーならその子にはギルティを惹かせるほどの何かを持ってるんだよね」
「……確かにそうじゃん、僕も気になる」
「嬢ちゃん、教えてくれねぇか」
ミクはギルティの方を見た。恐らく言っていいのか言っては駄目なのか悩んでいるのだろう。
確かに、この場所では自分の能力を明かさない奴が大半、明かしていても仲良くなって信頼するに足りるぐらいまでの話で、能力が割れれば対策される。ここでの殺し合いはまだ聞いたことがないが、それでもあらゆる可能性を考えて動いている以上能力は言わない…
「…私はいいけど」
「大丈夫だ、しかしまぁ…実践形式のほうが分かりやすい…ほれ」
そういいギルティはミクに紙とペンを渡すとミクはそれを受け取り、
スラスラとペンを走らせ、テーブルに裏向きに置く。
「…テシア」
「なぁに?ミクちゃんもしかして私にギルティ渡してくれるの?」
テシアはミクに笑顔を向けるがミクは真顔でテシアに言った
「…ギルティは巨乳好き、勘違いおばさん貧乳なんか好きじゃない」
「おいそんなことは」
「このガキぃ!言わせておけばぐえぇいった!」
ギルティの声をかき消すようにテシアの声が鳴り響く
ミクの言葉にテシアは机に乗り出すが、自分の座っていた椅子に足が絡まり目の前の机に顎をぶち当てた。その反動で机の上にある紙は宙を舞う。
「おいおいテシア大丈夫かよ、嬢ちゃんもなんで急にそんなこと」
「…え」
アクラが声を漏らす。その声は二人にも聞こえテシアとタスクはアクラが持っていた紙に視線を向ける。
【テシアは私の言葉に感情を表して机に乗り出すが、座っていた椅子に足を持ってかれそのまま顎をぶつける、宙に舞った紙はアクラの手に渡る】
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