第九話 ー飯は一人で食べるものー


次の日、ギルティは朝早くから重いからだに逆らって食堂に来ていた

ちなみに、料理シェフは雇っている、大方ラックスが何とかしているので特に気にしたことはない。宿舎は単なる休む場所だけでなく、飯も提供しているので、皆ここで雑談に興じたりなのだが


「……」


毎日100人近く人が出入りしているので一人で飯を食べる奴などほとんどいない。

大抵一人で食べている奴を見かけたらほかのやつらが隣に座り雑談でも何でもして仲良くなるのがお決まりの状態であるのにもかかわらず、ギルティは一人で食事をしている


そう、ボッチではない。ギルティはボッチではないのだ、少し仲の良い友人などはいるが、10名にも満たない数。それもほとんどが危険度Sクラス。

ギルティは危険度Sの中でも最上位の男であり、その存在は一目置かれている。なかなか声をかけづらいという。


食堂にはいった瞬間のシン…とした空気が表情には出さないがギルティには刺さっていた以上を踏まえ、ギルティは一人さみしく、人並みサイズに盛られたカレーをほおばることしかできなかった。


「よっ」


ギルティは声のかけられた方向を見た。

当然声をかけたのはギルティを知らない新参者ではなく、怖いもの知らずでもなく

ギルティにとっては見慣れた奴だった。


「…タスクか」


【タスク】、ギルティに続く危険度Sを代表する者の一人。

体の色はやや褐色気味、そしてタスクの象徴する壁のような筋肉、ラックス特注の大きな服とインナーをよく着ている

その大きな巨体から放たれる渾身の大剣はだれにも止めることはできないとされているが実際はどうなのだろうか


「おうよ…隣良いか?拒否られても座るがな」


「好きにすればいい」


「それじゃあ失礼して…」


ドスッっと大きな音を立ててタスクは座る。

タスクの巨体が座るとギルティのカレーがカチャカチャと音を立ててこぼれそうになるのを見てギルティはタスクを睨みつけた。


「何回も言っているが…そんなにドスっと座るのはやめろ、毎回カレーがこぼれそうになるのは勘弁だ」


「そんなこまけぇ事いいだろうがよ、それよりも大丈夫だったのか、帰ってくるのが一昨日ぐらいだと思ってたからてっきり死んだのかと思ったぜ」


「馬鹿が、死なねぇ、俺には使命があるからな」


ギルティの言葉を聞いたタスクが言いずらそうに顎を撫でると

呆れたようにギルティに言った


「お前にも何回も言っているが、その使命ってのは一体何のことを言ってるんだ?」


「…さぁな、俺にもわからない、でも確かに誰かが語り掛けてくるんだ、使命に従え、それまでは絶対に死んではならないってな」


「まぁたそれか…耳にタコができるほど聞き飽きたぜ」


「本当だぞ」


「はいはいそうなんだな」


タスクはギルティの言葉を受け流すように相槌を打ち、目の前にあるステーキを一気に口に入れる。それだけでなく、ほかにもギルティならば食べる気すら失せるぐらいの量の料理が並んでいる。


「お前の胃袋はどうなっているんだ…本当に食べきれるのかそれを」


「あたりめーだ、自分の食べられる量を見極めてるっつの、第一自分が食べられるかもわからない量を頼んで結局食べられませんだなんて作ってる奴に迷惑だろ」


逆に、とタスクはギルティの料理に目を向ける、正確にはギルティの食べる量に目を向けていた。


「お前こそそんな量で足りるのか?絶対に足りないだろ。もっと筋肉をつけろ筋肉を」


「案外足りるものだ、それに筋肉筋肉言っていると頭を使う奴に足元救われても知らないぞ」


「余計なお世話だ畜生…」


少しずつだべりながら食べているとあることに気が付いた。

ギルティはタスクに問いかけた。


「おい、そういえばあいつはどうした、一緒ではないのか」


「あいつ?あぁあいつか。あいつなら確か食堂に行く前にお目の部屋に行くって」


「またあいつ、毎回毎回言ってるのだが…まて俺の部屋にいるのか?」


「あぁ、確かにいくって言っていたが…おい、どこ行くんだ」


最後の一口のカレーを一瞬でほおばり足早に食堂を去ろうとするギルティにタスクは声をかけるとギルティは焦ったように言った。


「俺の部屋に決まっているだろ!すぐに帰ってくるから待ってろ!ここで待ってろよ」


これはまずいと思ったギルティは全力で自分の部屋に向かう。

もしあいつがミクに気づいているのならば…


ギルティの頬にいやな汗が流れる。頼むから何も起こってないことを祈るギルティは今までで一番早い帰宅を見せた。


「おーいギルティ、何やってんのー」


「何でもない!今走りたい気分なんだ!」


「そーなの?食堂にタスクいるぅ?」


「いるぞ!」


今はだべっている暇はない。一刻も早く部屋につかなければ


「ミク大丈夫か!」


自分の部屋に着いたギルティはドアが壊れる勢いで開けると

そこには膝をついて手をわなわなさせている黒髪の女性がいた。


「おい!テシア!そいつには危害を与えるな!」


「……ギルティ、この子」


テシアと呼ばれた女性は振り返り未だてをわなわなさせたまま

ギルティに向かって言った。


「私、ギルティとの赤ちゃん作っちゃった!?」


「黙れ馬鹿が」


とりあえずテシアを無視してベットの方を見ると、ミクがすやすやと寝息を立てて寝ているのを確認したギルティは緊張が解けたように大きなため息をついた









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