第八話 ーアジトⅢー

「さて、行きましょうか、今回はそちらの歩くスピードに合わせて歩きますので何か気になることがあればその都度遠慮なく言ってください」


ラックスはお先にと言わんばかりに足早に入っていったを確認した後、

ギルティは少女に向かっていった。


「忠告だが、ここを通れば二度と明るい青春は来ないと思った方がいい。

もしここで逃げるなら、今から全力でお前を逃がすが、どうする」


「……愚問ってやつ」


「はは、そうか。じゃあ行くぞ」


少女にとって運命の分かれ目、そんな選択を少女は「愚問」と切り捨て迷いなく扉の先の空間、フォックスに足を踏み入れた


踏み入れた空間に入り後ろを見ると、さっきまであった扉は綺麗さっぱり消えていた。


「さて…ミクさんにはこれから先、このギルティさんとともに仕事をこなしてもらいます。表の明るい仕事に、裏の真っ暗な明るみに出ない仕事まで幅広いです…それでも、裏の仕事と表の仕事は4:6と言ったところです」


ラックスは歩きながら少女に説明した。


「…なんで裏が少ないの?」


「そうですね、裏の仕事ばかりを多くしてしまうと、さすがに気がやられる人が出てきます、それを解消するため、それと表の仕事をしていると何かと表の人たちに信頼されますし、何よりいいでしょう」


「…いつか誰かがばらすかもしれない」


「それはないとみていいです。ここにいる集団のほとんどがこの制度に大きな不満を持っているようですから、本当は裏の仕事を10割にしてくれって人は大勢います」


「それってそう思っていない人もいるってこと?」


「一定数は確かにいますね…まぁここに来る前の人生は十人十色、犯罪の海から来た人も入れば、行く当てがなく、仕方なくここにいる人、本当にたくさんの人がいるんです。誰かに声をかけてみるのもお勧めします」


「…考えとく」


「はい、そうして下さいね、ここの人とは交流を持った方がいいですよ。何かと教えてくれます…さて、」


ラックスが足を止めた先には大きな建物があった。


「最初はここです。ギルティ君は慣れ親しんでいるでしょう。ざっくり言うと宿泊施設となっています」


「…それにしては大きい」


「それにしては大きすぎないか?」


確かにこの宿泊施設、俺が最後に見た時もそこそこの大きさを誇っていたが、ギルティに違和感はあった


「えぇ、フォックスの人の出入りは激しいので、新たに入った人たちの部屋を毎回用意していますので」


「そんな作業、一朝一夕で出来るものか」


「ギルティ君の知っている時では難しいでしょうね、しかし最近はそっち方面に向いている方が…ちょっと失礼」


ラックス歩きをやめ、懐にあった携帯を取り出した。

そして二、三回相槌を打った後携帯をしまった。


「失礼、急用が出来ました、ここからはギルティさんが案内を頼みます。ではここで、ミクさんも早く慣れてくださいね」


「…うん」


変わらずニコニコしているラックスにミクは若干嫌がる目をしているような目をしているがそれでも返答するのは成長しているのだろうか。


「…怖い人」


「そう思っているならよかった。くれぐれもいい人だなんて思うなよ、それでどうする?行くか?」


「…今日はもう疲れた」


「わかった。では明日また案内はしよう。俺も疲れた」


実際のところそんなに疲れてないのだが、

ミクの方は子供、年齢不詳ではあるが子供であることには変わりはない


これほど濃密な時間はミクにとって初めての体験だっただろう、今までよく頑張ってくれた


「…ミクの部屋ってどうなるんだ」


ラックスにミクの部屋の詳細を聞いていなかったギルティは今日限りであるがミクを自分の部屋に入れよう


「まだお前の部屋が決まっていないわけだし、今回は俺の部屋にいてもらうがいいか?」


しかしミクは首をカクカクとしていて返事をしない。

もう限界なのだろう。


「あとは運んでやるから、もう休め」


「……」


ギルティの言葉も聞かず、ミクは最初から当たり前のようにギルティの腕の中で眠った。


「…俺もそこそこ疲れたしさっさと運ぶか」


ギルティはミクをお姫様抱っこの形で持ち上げて、そのまま宿泊施設に歩み始めた。





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