自身作は自信作③
その瞬間、私は雷の出力を上げ、ゼロに向かって攻撃を仕掛ける。
「雷光一閃」
全身に纏った雷で自身の機動力を向上させ放つ高速の一閃。並大抵の人間ならば防御をとる暇もなく倒せる。のだが…。
男は何事もなかったかの様に無傷で立っていた。
(最低でも上級騎士と同等か…。もしかすると、団長並みの可能性も…)
ゼロの戦力分析をしていると、彼は何かを思いついたように呟く。
「ふむ…雷魔法は使い方次第では面白いことが出来そうだ…」
その呟きは私の耳には届かない。
すぐさま雷魔法の構築を始め、完成したと同時に再び攻撃を仕掛ける。
「紫電一刀」
雷で刀身を覆い、強力な一撃を放つ。
ゼロはこの攻撃を防御するのかと思いきや、動かなかった。そして、私の剣も動かなくなった。
なぜならば、私の剣がゼロを守るようにして展開しているバリアを破る事ができなかったからだ。
「魔力障壁!?こんな固いのか」
「惜しい、これは魔力障壁と物理障壁の二枚重ねだ。この程度も破れないとなると、貴様が俺に勝つ未来なんて1%も訪れないな」
すぐさまゼロから距離をとる。
(なんて男だ。どちらの障壁も一般的な強度は、微弱な魔力を通した鉄の剣をギリギリ止めるくらいなのに、魔法刀技でも壊れないなんて…)
この男には、生半可な武器じゃ勝てないと判断した私は切り札を使う決断をした。
「雷光」
真上に雷魔法を放つ。
一筋の光が空に向かって飛んでいく。
これは合図だ。とある武器を召喚するための。
次の瞬間、空が光った。
「ん?」
ゼロはただ静かに空を見る。
数秒すると空から刀のような物が雷を纏い、落ちてくる。
手のひらを天に向ると、雷が手に落ちる。
「へぇー、演出はいいな」
男は感心したような声を出す。
私は目を開け、自身の手を見た。
そこには電気を帯びた、刀があった。
「サーマルライト家に伝わる神器が一つ雷命刀。これを使うことになるとは思いませんでした」
刀を握りしめ、居合の構えをする。
「ここからが本番というわけか」
ゼロも鉄剣を構えた。
(何だ?見たことのない構え方だ。この国に存在する流派では無い)
私は体全体に先程よりも多くの雷を纏う。
神器を持つことによって、雷属性の魔力が強化される。
(これが私が現時点で放てる最高の技)
狙いをゼロに定め、一気に距離を詰める。
「お前の全力を見せてみろ」
距離を詰めた私にゼロはそう言った。
まるで私の動きを余裕で追えている。そんな感じがした。
「雷切!」
刀が生きているかのように強く鼓動し、雷の魔力が溢れ出る。その魔力を利用し放つ斬撃はまるで神の裁き。
砂ぼこりが舞い、周囲の様子が見えない。
(ここまでの速度がでちゃうなんて、私にも想定外だった…でも、これなら…。あの化け物に致命傷を与えれ――)
「まだまだだな」
その声を聞いて、全身から冷や汗が噴き出した。
圧倒的な実力差を前に私が感じたのはただ恐怖だけ。
ゆっくりと振り返る。そこにいたのは無傷のゼロだった。
「そ、んな…」
私の力のない声が響く。
この男には、勝てない…。絶望が私を襲う。
「騎士リリよ!その程度で諦めるのか?」
突然、声が聞こえたかと思えば、倒れている私を守るようにして立つ人がいた。
音もなく、気づけばそこにいる。そんな事ができる人物は、私の知っている中に一人しかいない。
「…え?……団…長?」
この国でゼロに対抗できるかもしれない唯一の人物。白騎士団団長のホルム・ダンベローグが目の前に立っていた。
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