とあるおっさんは騎士団長
雷属性の剣技と魔法を扱う女騎士?さんの相手をしていると突然、強そうな雰囲気を纏ったおっさんが現れた。
銀髪のツーブロックと目つきが怖く、年齢は30代前半っぽい。イメージは漫画に出てくるような893のボス。
「ふぅ、雷が一瞬見えたから急いで来てみれば正解だったようだな。リリの嬢ちゃんがここまで追いつめられるとは……。そこのお前がやったんだな?」
おっさんはこちらを睨みながら、異空間から大剣を取り出した。
その大剣はシンプルなデザインだったが、武器が纏う魔力…いや、神力のおかげで神器だと理解した。
「神器か」
「ほう、よくわかったな。これは俺の神器、次元剣だ。見た目は全く神器っぽくはないが…一瞬で見抜くか。師匠みたいだな」
大剣を構えたおっさんはこちらをジッと見続ける。
おそらく俺の出方を見ているようだ。
(女騎士さんの方の技はどれも演出が良くて魅力的だったが、この人のはどうかな?)
俺も鉄剣を構える。
「団長、気を付けてください。彼は…ゼロと名乗ったあの男は危険です」
女騎士さんがおっさんにそう言う。
「ああ、ゼロとやらが放つ膨大な魔力のおかげですぐに理解できたよ。本当に危険な人間だとな」
おっさんが大剣を握りしめ、こちらを再度睨む。
(睨み怖、でも、女騎士さんところの団長なのか…このおっさん……)
いつまでもおっさん呼びだと失礼かなと思ったので、名前を聞いてみることにした。
「俺はそこの女騎士から聞いた通りゼロだ。お前は何者だ?」
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は白騎士団団長のホルム・ダンベローグだ」
予想通りおっさんは団長だった。
団長なら神器を持っているのはわかるのだが、なぜ女騎士さんまで?外見は俺と変わらないぐらいなのに……。もしかして、英雄の子孫という設定なのだろうか?
(どちらにせよ神器もちすぎだろ。この場所に着いて1時間もしないうちに二人も神器持ってる人間を見つけられるとか)
神器はもしかするとあまり珍しいものではないのかもしれないと考えていた俺に、ホルムが声をかけてくる。
「おいおい、目の前に俺がいるってのに、違うことを考えているな?」
「これは失礼なことをした。だがしかし、残念なことにお前程度じゃ興味を持てないのも事実」
煽るようにそう言うとホルムの顔が少し険しくなった。
どうやら、プライドはあるようだ。まあ、プライドがない騎士団長など、この世に存在はしないだろうが。
「言ってくれるじゃねぇか。そんなこと言われちゃ俺も手加減ができないな。殺す気でいくぞ?」
「どうぞお好きなように」
俺とホルムの間に沈黙が訪れる。
どちらも微動だにせず、ただ見つめあう。
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