自身作は自信作?

 顔バレしないよう認識疎外の効果があるフードかぶり、漆黒のコートを身に纏った俺は、夜の街の高い時計塔の上に立つ。 

 中指には作成した万能指輪をはめ、水色の光を薄く放つ神晶樹の刀を腰にさす。

 

「まずはこのコートに付与した魔法効果の確認をしてみようか。確か、認識疎外と物理障壁、魔法障壁、自動治癒・修復(治癒魔法)、主な能力はそれぐらいか」

 

 周囲を見まわし、ちょうど良い相手を探す。


「あれとか良さそう」


 目線の先にいたのは、悪そうなおっさんたちから襲われそうになっている少女二人だった。

 どこか既視感があったが深く考えず、作成した魔道具の性能を確かめに移動を開始する。

 悪い人間を倒すことは世界のためになるから一石二鳥だ。

 前に倒れるようにして落下する。


(超高い建物から降りるの憧れてたんだよな)


 落下の最中、手をひらげ風を全身に感じる。

 そして声を上げた。

 

「これぞ!紐なしバンジー!!」




「げへへ、嬢ちゃんたち遊ばなーい?」

「優しいおいちゃんについてきなよー」


 複数の男たちは下卑た笑みを浮かべながら少女へ近寄っていた。


「嫌です!」


 少女に拒絶された男はイラついたのか、その顔の笑顔がだんだん歪んでいく。

 

「ひどいなー。おっちゃんたちにそんなこと言うなんてー。お仕置きが必要だな?」


 一人の男が後ろにいた仲間らしき男たちに目配せをする。

 すると、後ろにいた男たちが動き、少女たちを囲むような配置になった。

 

「さあ、大人しく…」


 少女たちの方へ手を伸ばした男の動きが止まる。

 

「おい、何してんだ?」


 横にいたもう一人の男が不審に思い、止まった男に話しかける。

 だが、反応は返ってこなかった。


「おい!聞いてんのか」


 男が動かなくなった男の肩に手を伸ばした瞬間だった。


「うっ!な、なんだ!これ!?」


 男の手が裂けていたのだ。

 少女はその状況が理解できず、動きの止まった男を注意深く見る。


「糸だ……」


 極細の糸が男の体のさまざまな箇所を固定していた。

 これを仕掛けた人は恐ろしく強い。戦闘に詳しくない少女にもそう感じた。


「わけわかんねぇことしやがって!来いクソガキ!奴隷商人に売りつけてやる!!」


 男の一人が怒りながら少女に近づこうとしたその時。


「うるさいぞ」


 突如、無感情な声が響く。

 それと同時に動かなくなった男の隣に黒コートの男が現れた。

 それに気づいた男が胸倉をつかもうと叫びながら手を伸ばした。


「テメェ!何――」

「聞こえなかったのか?うるさいぞ」


 黒コートの男が胸倉をつかもうとしていた男を見ながら言うと、男たちは誰一人として動けなくなっていた。

 その理由は私にも理解できた。黒コートの男から溢れる膨大な魔力が原因だ。そのせいでこの空間が息苦しく感じ、手足が痺れる。

 

「我が名はゼロ。まあ、貴様ら程度は覚える必要はないな」

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