第12話
ひさしぶりに100均へ来た。自転車ですぐ、7分くらいなのだが、スーパーに行く前、あるいは勤めた帰り、あまり寄ろうとは思えないのだ。
疲れてるわけじゃない。
気分転換になると知っていても、どうせ100円でも買えないものは買えない。買わないものは買わない。
たまには実家に帰って食費や、寂しさでも何でもない空虚を埋めようかとおもったが、それはもっと後でもいい気がした。
今日は、ちょっと見て回るだけにしよう。
嫌な思い出もあるし。
seriaやDAISO、キャンドゥ、ワッツ、古きはレモン。色々あったらしい。
私の心の共はseriaだ。実用性ならDAISO。テレビでキャンドゥも見るし、たのしいけれど、今は部屋にテレビがない状態だ。スマートフォンでもテレビはダウンロードしていない。
みんなどこまでのサービスをどこまで享受しているの?
桜は高校しか出ていない。おまけに不登校気味で周囲がどこまでどんなアプリやサービスを利用しているか分からない。
好きなのは図書館や図書室。スーパーマーケットにホームセンターや100円均一。
本当はもっと好きなものがあるのかもしれない。
ブランドバッグやコスメだって目指せるものならパパ活で手に入るのかも。そんなことを考えている時、店につきながら。
こんな気持ちじゃあ、何だかもう、あの夢を見られない気がする。
そう思った。
なんの役にも立てなかったけれど、少しは便利グッズを紹介できたと思ったのだ。
その日の買い物は、何も買わなかった。
何か買うつもりだったけれど、見るだけで終わる。
タオルを買おうかと迷って今の枚数で十分だし、横にあるスリッパを見て。
素足で歩くなッ!!
父が家族や、とりわけ脂足の自分に怒ってきたのを思い出して鬱屈とした感情になり。
何も買えない。
揃えたいものはある。
おかずを乗せるわけではないけれど可愛い絵のプリントされた小さすぎるインテリアの小皿。玄関に置いたら可愛いだろう。スリッパだって冷たい思いをしないで上品に部屋で過ごしたいなら買うだろうが(父のことがあるが)、1Rでこれはお風呂上がりでも桜にはいらない。
インテリアコーナーで、おしゃれな造花を見る。これも壁にかけたら洒落たカフェのような雰囲気が出るだろうが、我が家の机は折り畳み。布団は自然と万年床で。
パイプ布団干し、いらないかも。
文房具売り場で粘土を見つける。鮮やかなレターセットたちも。何かを伝える時、粘土があったらよかったな。
1回目の夢。家にある赤い本の存在を深く捉えずに勝手に想像する。レンガや土の壁があるなら粘土で作って表現してもよかったはずだ。靴下売り場やハンガー売り場。お風呂の排水溝の髪キャッチ。台所用のジップロックや、アルミニウムを見る。この辺りまで来るとスーパーの方が安くて質のいいものがあるけれど、一人暮らしでまとめて買うならやはり100均は強い。
今度は、ホームセンターを見よう。
しかし。
楽しみはとっておいておいていいよね。
パーティーグッズのクラッカーや100円でもおもしろい!と称されるおもちゃコーナー。そして推し勝活用の缶バッチカバーやうちわ。キラキラのモールたち。
一日一箇所。それでもいいじゃないか。
今夜のご飯は、鶏肉をカレー粉で炒めたものにしよう。もやしも混ぜて。
かさましだ。あと、やっぱり汁物があるとだいぶ違うからお味噌汁も!
この頃から、レトルトの方が日持ちしていいことや鍋が入らないならタッパーに移して保管すればいいじゃない!という確実に懸命に賢く生きている自分に気づく。すべては。
生きる、ために?
私は知らなかった。だんだんと日が伸びてきているこの明るい世界で、リュックサックと銀色の自転車を相棒に生きる中。
次は魔法に出会うことを。
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