第11話

 部屋に戻ってきた。どっと疲れていた。手には少し傷を負ってしまった、読めそうにない、赤い。


 本を持ってきてしまった。


 違う。


 夢じゃなかった。


 時計を見ようと思って、まだ買っていないことに気づき、スマートフォンの時刻表示は午前6時。


 またあと1時間は寝られるな。赤い本が気味悪くも、枕はないけれど枕元に置き、アラームが鳴るまでうたた寝した。


 果たして、マスクとブックカバー、B L小説、百合小説は。


 その日はうたた寝だったのであまり夢を見なかった。


 途中からレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返して。

 

 2人、あるいは何人かの女性が集まり、


しっ!


人差しを口元に当てて、みな笑っている。


ああ、まさか、こんなにはやく


でも最近どこか粗が目立たない?


いえ!しょうがないわ!だって、あの男爵と伯爵が


しっ!まだあの方達とはおもえないわ!


でもあの時の、落ち葉を払うあの手!あの時の相手をいたわる様子!あれは確実にっ


 もう、何人かは悶えて、尊きもの!と祈っている。


それもだけれど、と誰かが言う。


東の、麗人、これ以上は言えないわ。そして、西の奥様!あの2人!


それこそ言っては行けなくてよ?!


でも、あの方達のあの眼差しの向け合い方、あれは怒りではない、信頼と、そして、


愛よ!


ああ!!


 何人かは油紙に包まれて隠された本、1人なんかは鞄いっぱいに本の角が突きぬけそうなほどの荷物を持ちながら。


 たいへんだな。

 私は思う。今のブックカバーは透けてても良ければセロハンで本を守れるし、隠すなら柄付きのものを買えばいい。本屋さんにあるかな。私は安くて丈夫なら100均でいいけど。そういえば、そろそろ花粉の季節だ。部屋の中でパイプ製の布団干しをホームセンターへ見にいかなくちゃ。家から車借りよう。それにしても。


 あのトランクほど四角じゃなくて、バーキンよりはずっと大きくボロボロな、かばん。女性が持つには年季が入ってるな。時代柄かな。


 私はまだまだ、一人暮らしで安くて便利で必要なものを買わなければならない。Netflixやその他のダウンロードサービスはお金がかかるから、使うのに勇気も契約への怯えも、クレジットカードだって・・・・・・、とそこで7時アラームが鳴る。


 これから先、私に必要になるものは。


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