第3話
果たして勤め先のスーパーのレジから自転車で20分。ここまでが絶対限界。季節の寒暖差も視野に入れての通勤の目処。手続きまでも大変だった。
〈早くコイツを外に出せッ!〉
あえて父のことは語らない。今はそう。
〈健康で文化的な最低限度の生活を目指しなさい。大丈夫。車の免許を取るお金が貯められたんだもの。貴女なら出来るわ。〉
それでも母も、最低限のことをする、というわけにはいかなかった。保証人の件は良かった。スーパーに勤めるパートタイマーだが、田舎の深夜。24時間営業の甲斐あって稼げているし勤続年数も2年、貯金もまあまあ。審査も通った。
この貯金で家のみんなが豊かになるかもしれない、と思っていたあの時の自分は、やはり、劣悪な環境でもそこから自立、自力で逃げられないまだまだコドモな、18歳だったのだろう。引っ越しだけは、お酒の入っていない楽しそうな父と、外に出て太陽の光にいくらか健康的に見える母が手伝ってくれた。やはり悪い家族ではないとおもってしまう、共依存になる前に。
貯めていた貯金の半分以上が契約やら、家電で飛んだ。残り10万ちょっと。次のお給料日まで。勤め先がスーパーで良かった。ドラッグストアのポイント倍の日も大好きだ。
ちがう。だいすきじゃない。ポイ活してるだけ。心身の健康を崩してお薬も飲んでいる。私はこの家で、丁寧な子になるのだ。ニトリで買った3点セット布団。枕はいらない。そして同じくビバホームで買った折りたたみ机。これは書き物や趣味、ご飯を食べる時に使う。
〈ちゃんと食べるのよ〉
家でだってろくに食品も食材も、買いに行くための千円札すらなかったじゃない。
利口に生きよう。でも早くも寂しくて、お金のことが不安で死にそう。YouTubeのルーティン動画やTikTokの育ち環境が近い子の動画を見ながら孤独と心ごとの、あらゆる貧しさに耐える。
翌日、私は、異世界を訪問する。
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