第34話 裁き


「バーン」

その時、突然どこからか銃声が響き渡った。

全員が周りを見回した。細田を抱えたケンがスローモーションのようにゆっくりと倒れていった。倒れていく途中に頭から肉片が、棒でぶっ叩かれたスイカのように飛び散り血がビュービューと噴出した。

そして細田を掴んでいた手がするりと抜け落ちた。

一発で頭を撃ち抜かれていた。ケンは即死だった。

撃ったのは轟だった。

轟はすごい形相でライフルを持ってやってきた。その後ろを刑務官、坂上と太野達がついてくる。

「よし、これでゴミ一匹退治。次はどいつにしようかな?」

ライフルを左手に持ち替えると今度は拳銃をホルダーからだした。

近距離での連射は拳銃が適しているからだ。

轟、念願の「ゴミ」掃除がはじまった。

「轟所長!私達を助けてくれるんですね?」

上崎は恐怖にかすれた声で感謝した。

轟は無表情のまま「そう思うか?」と答えると、ナイフを持って静かに轟に切りかかろうとしたサギの心臓部分を拳銃で撃った。射撃は冷静かつ正確だった。倒れこむサギにもう一発撃ち込んだ。サギは轟のギリギリのところで絶命した。

「俺の大学の後輩がさ、法務大臣しててさ、お前らのグループを守れ

といいやがる」 

そう言うや否やこっそり逃げようとしたジュンコを撃った。ジュンコ

はうめきながら倒れた。

「全く面倒くさい命令だよな」

今度は正面から向かって来るロクに向けて拳銃を不必要な弾数連射

した。乾いた音が何回も響きロクは血みどろで倒れた。 

轟は倒れ掛かるロクの身体を迷惑そうに向こう側に蹴り倒した。

「お前らが有名になればなるほど国家の財政赤字の解消になるらしい、

馬鹿げた話だぜ」

そして目に入ったジュンコを再び撃った。

「お前達は国家にとってスーパースターらしい。 ふざけた話だがな」

轟はそういうと弾倉を切り替え岡田を見た。 彼は傷だらけの身体を

引きずりながらゆっくりと立ち上がった。

「命を助けてくれてありがとうございます」

岡田に続き、他の移住組もゆっくりと立ち上がってお礼を言い始めた。


轟の任務はこれで終了だった。

ここで退去することを政府は望んでいた。


「まだ救ったなんて一言も言ってないよ」

轟はいたずらっぽく微笑んだ。

「え?」

岡田は何のことなのか分からなかった。 轟の顔つきがより一層険し

くなり怒りが沸々と湧き出してくるのが分かった。

そして轟は豹変した。

「俺はゴミ掃除が好きなんだ。お前らの助け合いをテレビでみるたび

に反吐がでそうだった。ふざけた目的で犯罪者とつるんで、好き勝手

やりやがって!ここは刑務所だ! 刑の執行の場所だ。

ふざけたショービジネスの舞台ではない」


轟はこの時を待っていた。彼は閻魔大王のようにこの地獄への入植者

達の命の行方を決めようとしていた。 

「今日は俺がこの話を終らすために監視カメラを停止してきた。

今日で放送は打ち切りだ!皆殺しにしてやる。

岡田!おまえから地獄に送ってやる。くだらん大志を抱きやがって! 

このクソボンボンが! さらばだ」

轟は勢いよく拳銃を岡田に向けた。

覚悟して目をつぶる岡田に素早く上崎が身を挺して覆いかぶさった。

轟は躊躇いなく引き金に手をかけた。

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