お見合いで一目惚れ!? 6話
ダニエル殿下と一緒に居るときには感じなかったときめきを、レオンハルトさまには感じる……。我ながら、なかなか現金だとは思うけれど……、だってまさに好みの方にそう言われるとッ! ときめくのが乙女心ってものでしょッ!?
ちなみにダニエル殿下を好きになろうと努力はしたわ。努力はしたけど……、あれだけ浮気されたら愛情も枯れるってもんよ……。私の資産が増えたのはまぁ、良いのだけど。婚約破棄してからいろいろ考えていたのよね、これからのこと……。
「……ダンスパーティーの日は、ダニエル殿下の婚約者としての私を見て欲しくて、大きな宝石を身に着けておりました。ちょっとした意地、でしょうか。まぁ、その意地も虚しくこのような結果になったわけです」
眉を下げて肩をすくめる。レオンハルトさまは、私をどう慰めれば良いのかわからないらしく、おろおろとしていた。うふふ、そんな姿も可愛い。結構感情が表に出るみたいね、とても可愛いわ。共に人生を歩むのなら、こういう人のほうが良いな。絶対楽しい。
「……今では、ダニエル殿下に感謝しておりますの」
「え、感謝……ですか?」
「ええ。だって、こうしてレオンハルトさまとお近付きになれましたもの」
かぁ、と耳まで真っ赤になったレオンハルトさまに、にっこりと微笑む。婚約破棄バンザイ! ありがとう、ダニエル殿下、アデーレ嬢! あなたたちのおかげで、素敵な人に巡り会えました!
ダニエル殿下と結婚してから出逢っていたら悲惨だったわ! 私が!
それにしても、顔をこんなに真っ赤にされて照れているように見えるのは、レオンハルトさまが女性とあまり接してこなかったから? 私からぐいぐい行っているから? こういう反応を見ると、ぐいぐい行くのも結構イイ感じ?
「……ええと、その、こ、光栄です……」
顔が真っ赤で可愛い。
まさか婚約破棄をしてからこんな出逢いがあるとは思わないじゃない?
照れ隠しのように花を眺めるレオンハルトさまに、私はにこにこと微笑みを浮かべていた。目の前にイケメン、横を見れば綺麗に咲き誇る薔薇。なんて良いシチュエーション。
「失礼いたします、フォルクヴァルツ辺境伯さま、お嬢様、お茶とお菓子をご用意しました」
「ありがとう。ちょうど喉が渇いていたの」
「あ、ありがとうございます」
頼んでいたお茶とお茶菓子を用意してくれたメイドが、レオンハルトさまの言葉に驚いたように目を丸くした。それからすぐに、柔らかく笑み「いえ」と頭を下げ、手際よくお茶とお茶菓子をテーブルに広げる。
「なにかございましたら、お呼びください」
「ええ、そうするわ」
メイドが一礼して去って行く。その姿を見送り、カップへと手を伸ばした。
お茶を一口。喉が渇いていたから、水分が身体に広がるのを感じ、ほっと息を吐いた。レオンハルトさまもお茶を飲み、なにかに気付いたように顔を上げた。
「これは……ローズティーですか?」
「はい。お口に合いますか?」
「こういうものはあまり飲んだことないのですが……、思ったよりも飲みやすいのですね」
仕事中、どんなお茶を飲んでいるのかしら? いや、もしかしたらコーヒーかもしれない。
「良かった、ハーブティーは好みがあるので、レオンハルトさまのお口に合ったのなら、嬉しいですわ」
見た目も香りも華やかなお茶だし、味に関しては本当に好みとしか言えないから……。
レオンハルトさまはクッキーに手を伸ばしてさくりと食べた。幸せそうに食べる人だなぁと新しい発見に思わず口元が緩んでしまう。
こうしてまったりとした時間を過ごすのも悪くないけれど、その前に必要なことを済ませないとね。
「レオンハルトさま、現実的なお話をしましょう」
「現実的な、ですか?」
「はい。フォルクヴァルツ家に嫁ぐ前にやらねばならないことです。まず、陛下たちにご挨拶しないといけませんね。その日取りや結婚式の準備も始めないといけませんし……」
「え、エリカ嬢、ちょっと待ってください! その、自分で言うのもなんですが、そんなにぽんぽん決めて良いのですか!? 一生のことですよ!?」
慌てたようなレオンハルトさまの声。私はゆっくりと、大きく、首を縦に動かした。
「もちろん構いませんわ。私の一生は、レオンハルトさまと添い遂げるつもりなのですから」
レオンハルトさまは大きく目を見開いた。どうやら、私が本気だと悟ったようだ。
その姿を見て、小首を傾げて眉を下げ、問いかける。
「……大人しいほうがお好みでした?」
「……いえ、なんだかとんとん拍子過ぎて……、理解が追い付いていないみたいです」
レオンハルトさまに対してこんなに積極的な人も居なかったんだろうなぁ。こんなに素敵な方なのに。でも、私にとってはラッキーだったわね、本当に。
「……あの、日取りを決める前にやらなくてはならないことがあるので、少し時間をいただけませんか?」
「え? それは構いませんが……」
「すみません、それではその用事を済ませてきますので、また明日お会いしましょう!」
がたっと椅子から立ち上ると、レオンハルトさまは足早に去って行ってしまった……。
ぽつんと温室に残された私は、「……強引すぎたかしら?」と首を傾げることしか出来なかった。
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