第17話 王女との戦い
「こうなったら、力ずくで言う事をきかせればいいだけだわ」
騙せないと分かったペルカは、良い王女の仮面をすぐに捨てた。
ペルカは、勇者を確実にこの世界の味方に引き込むには、洗脳する方法が一番だと考えていた。
しかし、それが叶わないなら、力づくで脅して戦わせればいいと思っていた。
襲撃犯である賊と、それに対応していた兵士たちも演技をやめる。
それらは、始めから全てが芝居だった。
多くの者たちが十話子達の敵にまわった。
「洗脳されていたほうがマシだったと思えるように、教育を施してあげる」
愚かな選択をしたと、あざけるように嗤い声をあげて、ペルカ達が十話子達に襲いかかった。
「あなた達、この者達を捕らえなさい!」
この世界では、王族も勇者と同じような力を持っている。
王族は、昔召喚された勇者様の子孫だったからだ。
だから王女も、魔法を使って戦うことができた。
氷の魔法を使って、十話子達を追い詰めていく。
「私はあなた達より力の使い方がうまいわよ。大人しく降参するなら今のうちだけれど?」
ペルカは氷のつぶてを作り、十話子達へ放つ。
しかし、十話子が炎の壁を作ってそれを防いだ。
「記録にあるより、威力が強いわね。過少報告していたのかしら」
十話子達は、ペルカの事を怪しんでいた。
だから、ここ最近は魔法の本当の実力を隠すようになったのだ。
「けれど、経験が違うの!」
しかしペルカは、巨大な氷のつららを作り出して、十話子達へ放った。
数十メートルほどの大きさもあるそれは、到底避けられるものでも、ふせげるものでもない。
しかし。
どこからか、雷撃が放つ。
直撃した氷のつららが粉砕された。
「まだ何か隠していたようですね。けれど、それならこれはどうです?」
ペルカは兵士に合図を出す。
すると、城のどこかで治療を受けているはずのネズが連れてこられた。
兵士の一人がかかえるネズ。
その首筋には、剣がつきつけられていた。
人質だった。
ネズを人質にとられた事で十話子達は、窮地に立たされてしまったかのように見えたが。
隠れていたミニベアのファイブが、その兵士に体当たりした。
兵士は、ネズを落とすが、そのネズは床には激突しなかった。
宙に浮かぶようにして移動しファイブと共に、十話子達と合流する。
ネズは起きてはいない。
眠ったまま。
ペルカには、意識があるようには見えなかった。
ペルカが、動揺する。
「ばかなっ。一体何が起こったというの!?」
ペルカに一撃を加えたそれは、見えざる勇者の一手だった。
カガリ達が種を明かす。
異世界召喚された者達は、ペルカが見えている人数通りではなかった。
実際は一人余分に多かったのだ。
その人物は、ネズの魔法によって、透明化したまま今まで解除されずに、この城ですごしていた。
ネズは強い才能の持ち主だったため、召喚されてすぐに魔法を扱うことができた。
そんな彼女は、召喚当時にすぐ、城の様子に不信感を抱いたため、クラスメイトの一人を透明化させていたのだ。
不可視の存在になったクラスメイト。それはノミトという少年だ。十話子が、異世界召喚直前に、教室で目撃していた人物。
しかしそれでいて召喚後、城の中では見ていなかった人物。
そんな彼は、城の中で自由に行動できたため、なんとかして十話子達に真実を告げようとしていた。
それが、一食分余分になくなる食事だったり、たびたび発生する盗難事件の原因だった。
そしてその人物は、携帯を使う事を思いつき、ホノカにコンタクトをとることに成功。
十話子達は、ペルカの企みを知ることができたのだった。
ノミトは、奴隷にされていたミニベアのファイブに協力をとりつけ、雷撃を操って奴隷の首輪を無効化。
ネズの救出に、一枚かませた。
そんなノミトの出現に伴ってか、ペルカが持っていた英雄の証が光りだす。
それは一人でに移動し、ノミトの手の中に収まった。
英雄の証は、そこで光を放ち続けている。
「そんな、嘘よ」
呆然とした様子でペルカがその場に膝を落とす。
「私が間違っているというの!?」
それは、世界を救う五人が、十話子、カガり、ホノカ、シズ、ペルカはではなくなった瞬間だった。
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