第15話 不自然な手掛かり
目線「十話子」 場所
十話子も、カガリと同じように、ほかの勇者について調べていた。
異世界に召喚されてから、十話子にはどこか引っかかる感覚があった。
それを解き明かすヒントが、知識にはあるはず。
十話子はそう思い。図書室に通っていた。
人生の中で問題が起きた時、十話子はいつも本の知識に助けられてきた。
だから今回も力を借りようと思ったのだった。
図書室の中、十話子は様々な書物に目を通し、欠けている情報を探る。
情報が「ない」という事実も、一つの立派な情報だった。
図書室を作った者や、管理している者の思惑をそこから読み取ることができる。
地道な作業の結果、十話子が分かったことは以下の点だ。
城の敷地内の管理記録がない。
城の区画が分かるものがない。
ほかの勇者の足跡記録がない。
秘宝の一部の記録がない。
特に分かりやすかったのは、秘宝の情報。
宝物庫にある秘宝の記録が合わない事。
いくつかの書物を合わせて読み込んでみると、削除されたデータがあることに気づいた。
あいうえお順に並んでいる辞書の単語が一つ、二つ欠けているようなものだった。
辞書に記されている単語の数を数えて、点検した秘宝の数を数えて、両者の数が合わないといった、そんな違和感が図書室にはあった。
それは時間のかかる作業だったが、幸いな事に十話子にとってそういった地道な作業は苦痛にはならなかった。
調べ物を終えた十話子は、図書室の外に出る。
すると、ミニベアのファイブがやってきて、伝言を知らせた。
それはクラスメイト達が集まって、話し合いをするという知らせだった。
話し合いが行われた結果、十話子達はその日からあることをするようになった。
目線「ペルカ 」 場所「王座の間」
赤い城の内部。
王座の間にいたペルカは、とある兵士に向けて、真剣な表情を向けていた。
向かい合う兵士たちは、しかしペルカの表情をまっすぐには見ていなかった。
「王女様、その命令は本気なのですか?」
「ええ、決断する時がやって来ました。この世界のために、私達は力を合わせなければならないのです」
ペルカは世界を救うために一生懸命だった。
「この世界が滅びるような事にはなってはなりません。だからこそ、やれることはすべてやらなければ」
それを兵士たちは知っていた。
だからこそ、彼らはそれ以上何も言わなかった。
ペルカは、兵士に命令を行う。
その命令で状況は動く事になった。
その日から一週間後。
異世界に召喚された十話子達は、ある大きな選択を迫られることになる。
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