第13話 英雄の証



 場所 「宝物庫」


 数日後。


 赤い城の宝物庫で王女ペルカは、英雄の証について十話子達に説明していた。


 それは選ばれた勇者が身につけると、光を放つというものだった。


 ペルカは、訓練ばかりでは息が詰まるだろうと言って、城の中にある色々なものを見せていた。


 今は、英雄の証について話題にしている。


「さあ、これを身につけて見てください」


 ペルカが差し出したのは、小さなブレスレット。


 赤い宝石がはまった、金色の装飾品だった。


 しっかり手入れをされているようで、さびや汚れなどはない。表面はぴかぴかと光り輝いている。


 言われるがまま身につけたのは、戦闘訓練などでいい成績をおさめた者達だ。


 カガリとホノカ、十話子など。


 ついで補助として優秀な成績を残したシズ、その他のクラスメイト達だった。


「特別な証と召喚された勇者! これはイベントの匂いだぞ!」

「匂いとかしないし~」

「また山田が変な事言ってるし~」


 みな順番に見につけていったが、異変が起きるものとそうでないものがあった。


 ブレスレットにはまった赤い宝石が光るのだ。


 特定の人間が身につけた時にだけ。


「私とお兄様がはめた時、光りましたわね。後はシズさんと十話子さんも」

「これに何か意味があるのか」


 ホノカは不思議そうな表情で、カガリは険しい表情でペルカを見つめる。


 ペルカは大きくうなずいて説明した。


「これはこのお城に先祖代々残されてきた秘宝です。いずれ世界を救う勇者たちを予言してくれるものですよ」


 ペルカがブレスレットをはめると、赤い宝石が光った。


 そして自信に満ちた表情で、「私達五人がやがて世界を救う事になるかもしれませんね」と言った。


「なん、だと。俺達は光らないぞ」

「山田ざまぁだし~」

「マジ受けるし~」


 ペルカは、「皆さん、世界を守るために頑張りましょうね」と言った。


 そして、使命感に満ちた表情で、世界の平和について熱く語った。


 英雄の証は、各自が所持することになった。


 ホノカが不安そうに尋ねる。


「王女様、こんなに大切なもの、私達が持っていて問題ないんですか?」

「大丈夫です、私達は勇者様を信じていますから」

「そう、ですか」

「もちろん、いつも身に着けていてほしいわけではないので、普段は箱の中にしまっておいてかまいませんよ」


 今まで保管されていた箱もと、ペルカから一緒に渡される十話子達。


 十話子は、そんな中でも保管庫にある不自然な空き区画に気づいた。


 何かがおいてあった事を示すように、四角い跡がのこっていた。


 埃のつもり具合からして、それは最近誰かが持っていったように見えた。


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