第12話 いまだ



 十話子達は、町の外の戦闘を経て順調に成長している事を知った。


 そんな中、共に召喚された勇者の一人シズが、治癒魔法を劇的に高めていった。


 それは勇者の中でも異例の速度らしい。


「短期間でここまで力を伸ばされるとは」

「シズ様は、これまでに召喚された勇者様達の中でもかなり成長が早いお方ですな」

「さすが勇者様です。これなら、この世界の未来は安心できます」


 それを知ったペルカ王女は言った。

 本能的に、危機感を強く感じ取るためだと。


「やはり勇者様達は分かるのですね。邪神が暴れている土地は遠くにありますが、ここにいても感じ取れるものがあるのでしょう」


 王女は真剣な顔で述べる、邪神はそれほど強いものなのだと。


 それを裏付けるように、怪我をした兵士たちが帰ってきた。


 遠くの地で邪神と戦った後、他の勇者の魔法で転移し、この地に帰ってきたらしい。


 気になった十話子は、その勇者と話がしたい、と言った。


 しかしペルカは、勇者様は今は忙しいので、と断った。


「しばらくはお暇をとれないでしょう」

 

 シズは怪我をした兵士達の手当てを手伝ったが、その時十話子の目には、兵士達が少しだけ罪悪感を抱えているように見えたのだった。


 彼等は一様に元気がなかったが、ふがいなさで視線を落としているようには見えなかった。


「お礼を言われた時に、目線が合わなかったの」とシズはのちに語る。


「シズさん、あんまり頑張りすぎないでください」

「ありがとうございます。ホノカさん」

「俺達の内の誰かが治癒魔法を使えればいいんだけどな」

「大丈夫ですカガリさん。自分の限界は分かっていますから」


 シズは召喚初日からずっと、目覚めない少女ネズを気にかけていた。


 治癒魔法を上達させることで、目覚めの手助けをできないかと考えていた。


 だから、特訓がない日も自主的に訓練を行っていたのだった。


 ネズはシズにとって、親友だった。


 二人は名前が似ている事がきっかけで、仲良くなった。


 異世界召喚された時、倒れてからまだ目覚めないままの友人を気にかけるのは、シズにとって当然の事だった。





 十話子達は、ネズのためにあれからも色々な事をしいている。


 早くよくなってほしい、という思いで千羽鶴を折ろうとしたが、異世界では用紙は貴重品だった。


 そのためできるのは、花瓶の花をかえたり、毎日その日あった事を報告するくらいだった。


 さすがに長すぎるということで、この世界の名のあるたくさんの医者が城にやってきて、ネズを見るようになった。


 そのうち厳重な検査のためと言われて、ネズの見舞いができなくなった。


 場所もどこかにうつされてしまった。


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