第8話 特訓後
「俺のスキルは、必中だって」
「私のスキルは、完全記憶って書いてある」
「俺は、スキル書いてねー」
今まで不安そうだったクラスメイト達が、楽しそうな顔をみせはじめる。
魔法を扱える事に興味のない者は少ないのだろう。
十話子達は、魔法を行使することに少しだけ胸を躍らせていた。
意欲があったためか、訓練の成果が出ていた。
数名だが、魔法で火を出したり、水を出したりできるものが現れた。
それを見て、クラスメイト達は盛り上がる。
「元の世界ではこんな事なかったから、ちょっとだけ楽しいかも」
城の者たちは、みなそんな十話子達に親切だった。
「勇者様、自分達にしてほしい事が何かあるならば、遠慮なくお申し付けください」
そのため、気づくと十話子達は、次第に状況を受け入れるようになっていた。
訓練で一息ついたころ、羽の生えたミニベアがコップに入った水をせわしなく配っていた。
十話子は手伝おうと思ったが、身振りで断られてしまう。
しかし、おっちょこちょいだったらしい。
ミニベアが、最後の一人にコップを渡す前に転んでしまった。
水をひっかけられた生徒、山田がびしょぬれになる。
「はーくしょん!」
「ださださだし!」
「日頃の行いの結果だし~!」
周りにいた人間がケラケラとその様子を見て笑っている。
十話子はそれを見て首をかしげる。
山田が被るはずだった水が、なぜか途中で見えない壁に当たったかのように見えたのだ。
しじゃし、その瞬間をしっかり見ていた者は十話子しかいなかったため、目の錯覚だったかどうか確かめることができなかった。
クラスメイト達は突如起こったトラブルに寛容だ。
しかし十話子は、ミニベアの行動をとがめるような視線を感じた。
辺りを見回す十話子だが、視線の主は見つからなかった。
遅れて十話子や他の生徒がかけよると、ミニベアは慌てて立ち上がる。
すると、シズというクラスメイトが気づいた。
ミニベアが怪我をしていることを。
転倒したときに、できたものだろうと十話子達は考えた。
擦りむいたひざに、覚えたての治癒魔法を使ってあげていた。
ミニベアはそれで元気になったらしい、ぴょんぴょんと跳びはねて喜んでいる。
十話子達はその微笑ましい光景を見て笑いあった。
目線「兵士」 場所「訓練場」
「勇者様達は行ったらしいな」
「ああ」
十話子達の訓練が終わった後。
はけていた兵士達が戻ってきた。
「世界を救う存在になるかもしれないっていっても、まだ子供なんだよな」
「ちょっと罪悪感わいてきちゃったよ」
彼らは、様々な話をしながら手早く行動。
使われた木剣や、的を回収していく。
十話子達が片付けるといったが、団長がとめたため、そのままそこに残されていた。
「はやく普通の仕事がしたいな」
「そうだな。っていっても、慣れないことばかりで疲れたのか、体が思うように動かないんだよな」
「ええっ、大丈夫かよ。ちゃんと夜は休んでるか」
最近入ってきた彼らは新入りのため、仕事より雑用をこなす事が多くなる。
そんな彼等は、汗を流しながら、作業に集中する。
しかし、訓練のあと片づけをしていた兵士は首をかしげた。
「こんなところで誰かが訓練していたんだろうか?」
訓練場から離れたところに、割れた木の枝がころがっていたからだ。
雷の魔法でうちすえた後だった。
兵士は、勇者達の中には、雷の魔法に目覚めた人間がいたのだと考える。
首をかしげつつも、仕事を早く終わらせるため、即座に回収。
「夜ご飯はなにかな」
「この城のご飯、おいしいから楽しみだな」
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