第4話 王女ペルカの説明



 数分後、部屋に人が入ってきた。


 武装した兵士達と、ドレスの少女。


 それを見た雑学少年山田が「権力者が世界の一大事や国の一大事に召喚魔法を行使! 正に王道展開だ!」と興奮しながら叫んでいた。


 部屋に入ってきた者達は、そんな突飛なセリフに動じない。


「ようこそ異世界へいらっしゃいました勇者様! 私の名前はペルカ・フェルナンド・クラティカルです。これからよろしくお願いしますね」


 十話子達に声をかけたのはペルカという王女。


 中学生である十話子達より、一回り上の世代の人間だった。


 見た目は、豪奢なドレスとキラキラした装飾品を身にまとった、お姫様だ。


「どうやらここからは、美人な王女自らの説明回のようだ」

「美人とか説明いる~?」

「山田ぁ、目がハートだし~」


 ぶつぶつと何かを呟き続ける山田にとって、目の前の状況は特別おかしな事ではなかったらしい。


 十話子は、首をかしげる。


 向こうにとって十話子達は、子供とはいえ素性の分からない者だ。


 そんな者たちの前に、王女のような身分の者が簡単に姿を表すだろうかと十話子は思った。


 十話子達はまだ、何も聞かれていないし、身体を調べられたりとかもしていなかったにも関わらず。


 やわらかな笑みを浮かべるペルカの内心は、十話子には分からなかった。


 ペルカは、この世界を脅かす邪神の存在を伝えてきた。


 数週間前、長い間封印されていたそれが目覚めてしまったのだと。


 だから、強力な力を持つ者を異世界から呼んで、倒してもらうのだと。


 この世界の兵士では太刀打ちできないからと。


 ペルカはそんな邪神を、十話子達に倒してほしいと言う。


「邪神エルランテは強大です。私たちだけではどうにも歯が立たなくて。情けないお話ですが、あなた方の力が必要なのです」


 そして、討伐した勇者には、何でもするし、何でも与えると約束した。


 ペルカは、十話子達にそれができる力があると、信じているようだった。


 邪神を倒せば、その後に、元の世界へ帰すと述べた。


「非常に心苦しいですが、今はどこを見ても手いっぱい。送還用の魔法を用意する時間がないのです。それまでに世界が平和でいてくれるかどうか」


 その言葉を聞いたクラスメイトたちは動揺する。


「元の世界に変えるためには、この世界の平和を守らないといけないってこと?」

「隠れてるだけじゃだめなのか?」

「でも他に方法がないんじゃ、しょうがないんじゃ」


 しぶしぶだが、元の世界に帰るため、十話子達は協力するしかないと判断した。


 そこでカガリのお腹がぐうとなった。


 冷静さをとりもどしたホノカが、あきれた声を発する。


「お兄様、こんな時に」

「だってしょうがねーだろ。腹の虫に空気読めって無理だし」


 張り詰めていた空気が、少し和らいだ気がした。


 羽のついたクマ、ミニベアという生物がお辞儀をして、果物のようなものを差し出してくれる。


 リンゴに似た形の食べ物だった。


 かじってみると、味も似ていた。


 身に染みるようなおいしさだった。


 十話子は緊張で喉が渇いていた事を実感する。


「まずはご飯ですね。コックたちに用意させます。それまではしばらく、お部屋で休んでいてください」


 その後、十話子達はお客様用の部屋に案内された。

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