第8話 六峰鬼神会 九州支部へ向かう

 関東支部会館で花形たちに見送られ、支部の人に会館からホテルまで車で送ってもらった。三宅もホテルまで一緒の車に乗って送ってくれた。

「また、春にはよろしくお願いしますね」

安住たちはお礼を言って別れた。


 ふと安住がスマホを気にして取り出した。

「あ、冷泉れいぜいさんからだ」

スマホを耳に、何か話している。

「え、そうなんですか? じゃあ、直接行くようにすればいいのですか……はい、わかりました」

スマホを切り、こちらを見る。

「なあ、すまないが……もう二、三日、付き合ってもらってもいいかな」

三人は顔を見合わせる。明美が、

「私はいいけど……」

と正男と美登里を見る。

「僕はいいですよ」

「私も予定ないんで……」

安住の顔を見る。

「そうか、ごめん、ごめん……せっかくの東京旅行だったのに、今から羽田に行く」

「え?」

「行き先は福岡だ」


明美と美登里が驚いた顔をして声をそろえて言う。

「え! 九州に行くって……」

「ええ? 今から?」

正男も驚いた。

このリアクション数日前に、どこかで聞いたセリフだった。


 さすがに安住も少し慌てている。ホテルをチェックアウトして羽田空港に向かう。飛行機のチケットは空港で、どうにかすることにして、とりあえず空港に向かったのだが、そこは何とかなった。福岡行きの飛行機が四人分取れた。

 正男と美登里は福岡に行くのは初めてだった。羽田から福岡まで二時間。こんなスケジュールで旅行するのも初めてだった。

「今度は九州支部会館ですか?」

「ああ、ごめんな。今晩は博多ラーメンだ」

安住の言葉に、明美が少し微笑む。


 飛行機の中、美登里は、また、新幹線で読んでいたホラー系の本を読んでいた。正男が、

「好きだね。そういうの」

というと、

「え?」

と首をかしげる。正男が本を指差して、

「東京に行くとき新幹線でも読んでたでしょ」

「ああ、あれとは、また、別の本」

「え?そうなの」

黒っぽい表紙に『〇〇島』だが、どうやら新幹線のときとは『別の島』らしい。美登里は本を読んだり、外を眺めたり……外といっても空ばかりだ。

 正男は眠たくなり、いつの間にか眠ってしまっていた。どれくらい経っただろう、目を覚ますと、隣で美登里が眠っていた。

 美登里はひざに本を置いて眠っていた。本が落ちたらいけないと思い、正男はひざの上の本に手を伸ばす……

ふと、美登里が目を覚ます。

「……エッチ。ひざ触ろうとした」

「ちがうよ」

美登里が微笑む。


福岡まで、まだ、もう少し時間がかかるようだった。安住と明美も眠っていた。


 しばらくして飛行機が高度を下げていくのがわかった。飛行機に二時間乗ったのは初めてのことだった。


そして初めての九州。

福岡に着いた。福岡の今日の天気は晴れらしい。


*これまでのすべての章*

黒田郡探偵事務所 第一章

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黒田郡探偵事務所 第二章

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黒田郡探偵事務所 第四章

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黒田郡探偵事務所 第五章

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