第4話 六峰鬼神会 関東支部

 十時過ぎに京都を出た四人は、ちょうどお昼頃に品川に着いた。ホテルのチェックインまで時間がある。

 品川駅周辺で昼食をすませ、六峰鬼神会りくほうきかみのかい関東支部の会館に向かった。タクシーですぐのところだった。これなら帰りは歩いて帰って来れそうだという話になった。


 関東支部会館に着くと関東支部の支部長をしている花形道雄はながたみちおという五十歳くらいの男性と副支部長の横山由美よこやまゆみという四十歳ぐらいの女性。三宅紀子みやけのりこという二十四、五才ぐらいの女性が迎えてくれた。この関東支部というところは、ここが拠点になっているが関東圏に百カ所ちかい集会所があるという。会員は総勢で二万人ほどいるのだという。

 これがこういう団体として多いのか少ないのかわからないが、多い少ないはあれ、各集会所に百人から二百人近い会員がおり、東京の大きい集会所、支部会館に五百人から千人いるとしたら二万人ぐらいになる。

 安住と一緒に明美、正男、美登里も応接室に通された。安住に対して支部長の花形と副支部長の横山が何やら活動の報告のようなことをしていた。お茶を持って来てくれた女性が正男や美登里にも丁寧に挨拶をしてくれた。

 花形は人のよさそうな男性で、終始笑顔を絶やさなかった。花形が安住に聞く。

「今度、冷泉れいぜいさんか楊鏡妃ようきょうひさんが来られるというのは本当ですか?」

「ああ、たぶんたいした用事ではないと思うけれど、二人で全国を見て回っているんですよ」

「何か準備することはあるんですか?」

「特にないけど、会員は全員出席して二人が挨拶したいと言っていたよ」

「全員にですか?」

「ええ」

冷泉れいぜいさんと楊鏡妃ようきょうひさんが? 集会所も全部ですか?」

「そこについては、また追って連絡があると思うけど、どこか大きなホールか何かを京都の総本部の方で押さえるから、そこに全会員に集まってもらうことになると思うよ」

「そうですか」

花形は少し怪訝けげんそうな顔をして言う。

「何か集会を開くということですかねえ」

「ええ、まあ、そんなところでしょう」


 その日は、支部長の花形、副支部長の横山、三宅と京都から来た安住たち四人で一緒に食事をすることになった。会館の近くに中華料理のおいしい店があるというので、みんなで食べに行くことになった。

 とりあえず、一旦、ホテルのチェックインを済ませ、荷物を置いてくることにした。ホテルの部屋は二部屋取ってあった。安住と正男、明美と美登里が一緒の部屋だ。

 料理はおいしかった。結局、ホテルまでタクシーで帰った。ホテルに着くとロビーでチェックインの手続きをしている人がいた。

 正男は驚いた。新幹線で正男たちの隣に座っていた二人だ。正男たちがエレベーターを待っていると、その二人もチェックインの手続きが終わったらしくエレベーターが一緒になった。女性が正男の方に視線を送り、少し会釈したように見えた。

 ふと美登里が、小声で言う。

「知ってる? ここ、このホテル出ることで有名なんだよ」

「他の人がいるのに、やめなさい」

明美がたしなめる。

「ごめんなさい」

新幹線で会った二人は顔を見合わせて微笑んだ。

「いいですよ。気にしませんから」

と女性が言った。


 安住、正男の部屋と、明美、美登里の部屋は隣同士だった。新幹線で出会った二人の部屋は、偶然にも、明美、美登里の部屋の向かいだった。

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