第2話 六峰鬼神会というところ 二

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六峰鬼神会りくほうきかみのかい 本部・支部 構成

§ 京都市内 §

総本部

第一支部 ~ 第三支部

§ 京都府内京都市以外 §

第四支部 ~ 第八支部

§ 大阪府 §

第九支部 ~ 第十三支部

§ 兵庫県 §

神戸支部

§ 東京都 §

関東支部

§ 北海道 §

北海道支部

§ 福岡県 §

九州支部

§ 愛知県 §

中部支部

§ 宮城県 §

東北支部

§ 広島県 §

中国支部

§ 石川県 §

北陸支部

§ 愛媛県 §

四国支部

§ その他各県 §

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「……と、まあ、こんなところだ」


安住登也あずみとうや浅村正男あさむらまさお小林美登里こばやしみどりに、『会』のパンフレットのようなものを持って来て説明した。

「へえ……全国にあるんですね」

安住登也と太田明美おおたあけみに誘われ、正男と美登里は明日から関東支部に行くことになっていた。

「ああ、まあ、おれは全部の支部に行ったことがあるが、みんな、それぞれの場所で頑張ってくれているよ」


思いついたように、ふと正男が聞いた。

「ところで、まだ、あんまり知らないんですけど……ここの『会』の一番偉い人って誰なんですか?」

「え? そうか……知らないよな。まあ心配しなくても、危険な組織じゃないから……宗教的とか、反社会勢力とか……そういうのじゃないから」

「……」

正男も、それはそうだろうとは思いつつ、知らないうちに、とんでもない組織に入っているのも困るという気持ちはあった。

登也と明美が顔を見合わせて笑う。明美が説明するには、

「ここは私たちが知っている限りでは、冷泉れいぜいという人が一番の指導者よ。冷泉宗祇れいぜいそうぎさん。あと女性で楊鏡妃ようきょうひさん、そして、私は会ったことがないけど、九鬼くきさんという方と那須なすさんという方がこの『会』のトップにいる人たちよ」

冷泉宗祇れいぜいそうぎさん、楊鏡妃ようきょうひさん、九鬼京寿くききょうじゅさん、那須紅蓮なすこうれんさん……『神会かみのかい』のだ。そのなかでも冷泉れいぜいさんだね」

「なんか……僧侶の方か何かですか?」

「え?」

「いや、なんか変わった名前」

「まあ、そういうこともやってるみただが、新興宗教じゃない。きちんとした宗派の僧侶で、うちの会員に対して、その宗派への入会とか言ってこないから……おれも言われたことがないし」

「私も言われたことがないわ。宗教的なこと……」

明美も言う。

ですか……」

「ああ、なんかアニメみたいだろう……」

登也と明美が笑う。

「四人いるから周りがそう言ってるだけよ」


正男はそれでもやはり気になる。

「代表は……でも、ここの『会』の代表は安住さんなんですよね」

そこが正男がこの組織について、今一つわからなくなるところだった。代表が安住なのに、まだ、その上に何人も上の人がいる……

「そうだ。雇われ社長ってとこかな……」

「?」『どういうこと?』

「まあ、この『会』を表……つまり会員の前で『会』を引っ張っていったり、みんなにいろいろ伝えるのがおれの役割。あと対外的に『会』を代表して、いろいろな人と会うのもおれってこと」

「え? じゃあ、その四天王って呼ばれる人たちは何をしてるんですか?」

「……本当の実権者だな……おれは……いや、ここの『会』は、みんなから……お布施やらといって……お金を取ってないだろう。どうやって組織を運営していくんだよ……今日の東京行きも、おれを含め四人の分の交通費と宿泊費は『会』の出張費としてもらえるんだ」

「……」

「不思議だろ」

「……ええ」

「不思議な人たちだから……四天王なんだよ」


『……いや、理由になってないですよ』

と言いたいところだが、これ以上聞いても明確な応えは返ってきそうになかった。


「ところで、急に誘ったけど、明日から東京……よかった? 予定とか……」

明美が気を遣って聞く。

正男は美登里と顔を見合わせた。

「別に用事なかったし……ねえ」

と美登里の方に視線を向ける。

「うん。特に予定なかったので……」


「そうよね」

明美が、二人を見て笑う。


正男は『? そうよね……って……どうなんだよ』と思いながら、美登里と顔を見合わせる。

二人とも、登也と明美の半ば強引な誘いは慣れていた。


 次の日の朝、四人は京都駅に集まった。白い毛皮のコートとマフラーを巻いた美登里。ショートボブで小柄な美登里はふわっとした感じの服装がかわいらしかった。

 新幹線のホームは『十一番のりば』と『十二番のりば』名古屋、東京方面のホーム。結構たくさんの人が新幹線を待っている。

『数日前、ここで神会かみのかいの会員である高校生の高橋が見知らぬ女性に首を絞められたのか……』そう思うと、周りの人が気になる『今日は大丈夫なのか?』という不安もある。

 線路を挟んで向かいの『十三番のりば』と『十四番のりば』が新大阪、広島、博多方面のホームに数人の男女が集まっているのが見えた。

「あ」

登也が何かに気付いたようだ。

「あれ」

向かいのホームを指差して明美に言う。

「あ、安田さんだ」

明美も知っている人らしい。

 正男は『誰?』と思ったが、どうやら『神会かみのかい』の人達らしい。どこへ向かっているのか知らないが、考えてみたら自分たちだって、あの人たちからしたら、どこへ向かっているかわからない旅行者だ。別に不思議に思う必要もない。

 東京方面行の新幹線が入ってきた。四人は新幹線に乗り東京に向かった。

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