第6話 宮下 夏目
miyashita、、、?
!!!!!!
もしかして宮下さんのことか!?
以前の件から不審には思ってた。 そして最近もあの日を境に上の空になっている宮下さんの姿をよく見る。
何かがおかしい、ひょっとして宮下さんも同じものを持っていたりするのだろうか?
だとしたら、それこそどういう経緯で所持しているのが分からなかった。
そんなことで頭がいっぱいになり、放心状態になっていると5限目の予鈴が鳴った。
「うお、まずい!」
俺はクラスへと走って向かった。
はぁあ、昼ご飯を食べてないからお腹がすく。
空腹状態で受ける授業など、頭には全く入らなかった。
授業が進み、クラスのみんなが黙々と板書をとっている中、何となく宮下さんの方が気になった。
目線を宮下さんの方に向けると、どうやらあっちも俺のことを気にかけていたようで目が合った。
そうすると、宮下さんはすぐさま視線を逸らした。
その挙動から見るに、恐らく先ほどのuser. miyashitaは間違いなく宮下さんを指していることに違いない思った。
尚更気になってしまう。あとで本人に直接聞いてみようか。
授業が終わるまでのもどかしい時間、とりあえずはノートを書き進める。
「じゃあここ、宮下分かるか?」
ボーっとしている宮下さんが先生に質問を投げかけられる。
「あっ、、、えっと」
「なんだ、分からないのか? なら先生が解説をするが」
「、、、すいません。お願いします」
いつもはいとも簡単に回答できるはずが、今は板書すらしない程に様子がおかしい。
そんなこんなで、授業が終わると俺は早速宮下さんの元へ向かう。
「あの、宮下さん。ちょっと話したいことが...」
「......要件はもう分かってる。でもここじゃあんまり話せない。 放課後、一緒に帰りましょう」
「あ、え? えっと...分かりました」
その時の宮下さんはすでにこちらの事情を察していたように見えた。
やばい、事情があってそうなったことは分かるがなんか心臓がバクバクしてきた。
心の中で軽くガッツポーズをし、6限の準備があるためその場を立ち去る。
湧き上がる疑問が常に頭に残るのと同時に、多少の興奮が入り混じっていた。
6限目も、授業の内容などさっぱり頭に入らなかった。
そしてやっとの思いで放課後となった。
少し浮かれ気味になっていると、宮下さんが話しかけてきた。
「遠島君、今日、私の家へ着いて来てくれる?」
「あ、はい。分かりました」
え? マジ!? 宮下さんの家行けんの???
2人は学校を出て、宮下家を目指した。
帰り際、特に話すことが思いつかず何を話そうかと迷っていると、宮下さんがこう言った。
「詳しいことは後で話すわ。 でも、これだけは今言える。」
「多分もう、何人かの人にはその携帯と時計見られてると思うの。だけどこれからは、あまり人に見せびらかさないでほしいの」
いつにも増して真剣な表情でそう話す。
なにとなく圧力を感じた俺は、無言でコクコクと顔をうなずかせる。
学校から歩くこと30分、宮下さんの家に着いた。
宮下さんの父親は家電製品の覇権を握る程の大企業の社長であるため、家はとても大きく、正面玄関からはとても気品を感じとれた。
「どうぞ、入って」
「あ、お邪魔します」
広々とした廊下を進み、宮下さんの部屋へと足を運ぶ。
すげぇ、これが女子の部屋か...。 しかも憧れの宮下さんの...。
その部屋からは、まさに想像していたようなおしとやかな女子が住んでいそうな部屋、という感じがした。
「今、飲み物を持ってくるからゆっくりしていて頂戴」
「はい」
束の間訪れる静寂。 部屋の中央ぐらいに位置する大きめの窓からはとても装飾の凝った中庭が見えた。
やはり金持ちというか、自分が普段生活している環境とはまるで違うことを肌で感じた。
まもなく、宮下さんが戻ってきた。
「はいこれ、喉乾いてるでしょ。 冷たいお茶を持ってきたわ」
「あ、ありがとうございます」
「そのNM.phoneとNM.watch、どうやって手に入れたの?」
!!!!
やはり存在を知っていた。
「、、、パソコンでネットサーフィンしてたら、たまたまこれがもらえるwebサイトみたいのを見つけて、、、そこから、、、。」
「ちなみに、どのように検索したの?」
「えっとそれはその、、、、」
「あぁ、ごめんなさい。つい驚かせちゃったわね。思春期の男子高校生だもの、言いづらいことだってあるわよね」
うーーん。 恥ずかしい、、、、。 なんか気まずいな。
けど、このちょっとゾクゾクするような気持ちは何だろうか。
「まあ、いいわ。 本題に移りましょう。 今日の昼、私たち”special mission”の”connect ”をクリアしたでしょう? もう分かっているとは思うけど、私も同じくNM.phone&watch を持っているわ。 だから、これをクリアできた」
「えーっと、、、。宮下さんはなぜ持っているのですか?」
そう問いかけると、宮下さんは顔を赤らめる。
「あまり真剣に聞かないでもいいから、少し話をさせて」
「私、中学校の時、彼氏がいたの。 その男の子を一途に愛して、毎日とっても楽しかった」
「でも、ある日を境から何かが満たされない、っていう思いが強くなったの。本当に愛してくれているのか、わからなくなっちゃった。そんな時、彼氏が他の女の人と話している姿を見ると、『自分はいらない存在なのか?』とか思っちゃって。結局彼とは別れて、私は自慰行為でその悲しみを打ち消そうとしたの。」
!?!?!?!?!?!?!?
え!?!? 自慰行為とか異性の前で普通いう!?!?
理解が追い付かん!!!!!!
「その時の自分は、何か快楽の先にあるものを求めていたというか、行為中は自分に対する嫌悪感とかのマイナスな感情がどこかへ行ってしまう。そんな感覚が忘れられなくて、ずっと続けてた。 でも、高校ではそんなふしだらなを自分を何とかしたいって思ってこれを見つけたんだ」
「、、、、ごめんね。気持ち悪いよね」
自分は何も発言することができなかった。
気持ちは分からなくもない。自分も、普段から降りかかるストレスを自慰行為によって打ち消そうとしたことは結構ある。
でも、俺のイメージしていた宮下さんはそこにいなかった。
このことだけで、俺の頭の中はいっぱいになった。
「ねぇ、遠島君」
「私たち、少しの間付き合ってみない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます