第5話 connect
宮下さんの口調は明らかにいつものような感じではなかった。
なんというか、若干恥ずかしさが混じっていて、少し取り乱しているのが姿だけでなく口調からも伝わってきた。
でも、ただのスマートウオッチと思わせなければ、色々とまずいことになるというのを第一感で感じた。
「えっと、、、これ最近買ったんですけど、、便利で、、その、、、。」
何か嫌な予感がしたのでさりげなくスマートウオッチを隠そうとすると、つけている方の手を急にグッと引っ張られた。
驚く暇も与えず、少し冷たく、柔らかい感触が手首に伝わる。
「やっぱり、、、。」
小声で宮下さんが呟いた。
「あの、」
「これ、どこで見つけたの? どのような方法で? いつからこれを持っているの?」
喋ろうとしたのを遮られ、更に思考が追い付かない程の疑問を投げつけられる。
俺が固まっていると、再び宮下さんが話し出す。
「あっ、、、。 ごめんなさい。なんでもないわ」
先ほどまでの口調が落ち着き、いつもの凛とした宮下さんの姿を取り戻した。
「驚かせちゃってごめんなさい。私はこの後用事があるから家に帰るわね」
「あ、、はい。さようなら」
お互い別れを告げると、宮下さんは俺に背を向けて去っていった。
何だったのだろうか。あんなに取り乱した宮下さんを見たのは初めてだ。普段の姿からは想像できないような姿がそこにはあった。
「おーい! 泰斗!」
会計を済ませたアキマサが俺の元へ来た。
「どうしたんだよ急に、大声出したと思えば、急にいなくなって。探したんだぞ。」
「ああ、すまん。さっき、宮下さんを見かけてちょっと色々あって、、、。 大したことではないんだけどな。」
「色々って、、。気になっちまうじゃねえか」
「ほんとになんでもないよ。というか、うまく言い表せないだけだ。」
「んまあ、大したことが無かったんならいいけどよ」
「心配してくれてありがとな」
「おう、ってか、さっきから顔赤いぞ?」
やっべぇ、今になってめっちゃ心臓バクバクしてきた。
急に好きな人とあんなことになるなんて、思ってもいなかったしな。
「だから、何でもないって。どっかで飯食おうぜ」
「まあ、、いいけどよ。ならいつものとこ行こうぜ」
「ああ」
なんとか事を終えた俺は、アキマサといつものハンバーガショップに向かった。
「やっぱりここのパティ、ジューシーで肉厚だし、他のところと違って格別だよなー。って、聞いてんのかよ」
必死で紛らわそうとしても、やっぱり表に出てしまう。
「ああ、ごめん。そうだな」
「今日お前おかしいって。いつものお前じゃないぞ?」
「あ。お前、ひょっとして夏目さんのこと好きだろ。」
「はぁあ!?!? ちげぇし! そもそも俺が宮下さんと釣り合うわけがないだろ」
「はは、やっぱり。 態度があからさますぎだよ。お前は釣り合わないとか言ってるけど、別にそうでもないと思うぞ? みんなが知らないだけで、お前のいいところなんてたくさんあると思う。釣り合わないなんて誰が決めたんだ。自分を卑下するのは俺だって悲しくなっちゃうな。」
強い口調で言ったにも関わらず、アキマサは優しい声かけをしてくれた。
「ああ、、そうだよな。お前の言う通りだ。ありがとう」
「俺は思っていることを言っただけだよ」
ほんと、いいやつだよな。 男ながらにも惚れてしまいそうになりそうなぐらいだ。
ハンバーガーを食べ終えた俺たちは、中途半端な時間だったので解散することにした。
「じゃあ、また学校で。付き合ってくれてありがとう」
「おう、こちらこそ今日はありがとう。」
アキマサと俺は駅のホームで別れを告げた。
釣り合わないなんて誰が決めたんだ、、、か。 アキマサからそんな的確なことを言われるなんてな。
ちょっと勇気が沸いた気がする。ずっと自分には自信が持てなかったので、アキマサの発言は心に響いた。
「よし、もうちょっと、頑張ってみるか」
俺はオナ禁や自分磨きにより精を入れることを決意した。
家に帰ってから俺はNM.phoneを確認した。
そうすると、デイリーミッション達成していたようだった。
『デイリーミッション 女子にボディータッチされる を達成しました! 20pt獲得です!』
おお、たまたまの出来事でこんなにポイントを貰っちまったぜ。
ポイントに余裕があるし、NM marketでもう一回なんかを買ってみよう。
俺はそう思うと、”market”でフェイスラインとやらを改善するサプリメントを購入した。
すると、すぐさまピンポーン。 と音が鳴り宅配物が届いたようだった。
家には母がいたが、不審に思われたくないため自分が外に出た。
まあ、俺が出てる時点で不審だが。
早速部屋に持ち帰ってサプリメントを服用した。
だが目に見える効果はなかった。
「うーん、おかしいな、どういう効果なんだこれ」
結局効果は分からず、その日は寝る前に鍛godを飲んでダイエット兼オナ禁を強制にした。
翌日、顔が明らかにシュッとしていることが分かった。
「おお!やっぱり痩せているし、顔もいつもより断然いい!」
何だか自分磨きって楽しいな。自分がカッコよくなっていく姿を見るのが溜まらない。
そんな日々が続くこと数日、短期間で大分容姿が改善されたと思う。
体重も初期から10kg落ちた。 自分に自信がついてきた。
そして、学校に行ってもある女子が
「遠島くん、ちょっと前と比べて大分スリムになったんじゃない? 頑張ってるんだね!」
なんていわれちゃったよ。 うっひょー。
そんなことで浮かれていると、アキマサが話しかけてきた、。
「なあ泰斗、今日弁当忘れちゃったから購買について来てくれないか?」
「おお。いいぞ!」
購買に行くことを誘われた俺は、アキマサと一緒に教室の外へと向かった。
そうすると、俺と宮下さんの体が軽くぶつかった。
「あ、宮下さんごめんなさい」
「こちらこそ、あまり周りを注意してなかったわ」
ラッキー! さりげなく宮下さんとボディータッチ出来たぜ! たまには陽キャも役にたつじゃねえか。
興奮を隠しきれないでいると、NM.phoneから通知が来たようだった。
購買で昼食を買うことを済ませた後、俺はあまり人目につかないようなところで通知の内容を確かめてみた。
画面を見ると、次のようなことが書いていた。
『user. miyashita とコネクトしました! "special mission"達成です! おめでとうございます!』
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