第2話新しい門出

時は遡って



記憶を取り戻した5歳の誕生日、キッカケは平民を馬車で引き殺したのを見た時だった。



子供を庇って引かれ死体となった肉と泣き叫ぶ男の子。馬車から降りた筋肉質の男がゴミを扱うように乱雑に車輪に絡まった腕を取っ払った。

グロテスクな光景に吐き気が襲う。



「うぅ、ぉえ」



「大丈夫か?モータル、、」



父に背中を擦られて落ち着こうとする。父は息子のモータルに甘々なため、すぐに馬車を止め様子を伺うと同時に運転手に文句を言い始める



「おい!おまえ!モータルになにかあったらどうする!おまえの雑な運転のせいで、、、、」




父が怒鳴りつける最中も目の前の光景は進んでいく。




「やっちまったよ、まただ」



「ここらじゃ、よくあることさ。荷物が無事でよかった」



「おい!クソガキ!どこみてんだ!」



怒りを爆発させ、親の血で染まった子供の怯え顔を睨む姿は、権力を傘に、たるんだ理屈を転がす舐め腐った態度は、モータル自身に憤りを感じさせた。


社会人という立場で無理難題を課せられて納期に間に合わなければぐちぐちと文句を言われる理不尽な環境に身を置いたからこそ芽生える気持ち。衣食住のため給金目当てに言うことを聞いていたあの頃ですら湧き上がる憎しみと今すぐにでも殴り飛ばしたい衝動をおさえていた。自分は大人だからと我慢に我慢を重ねて人のためにと仕事をこなした。


未来の世代を担う子供たちのために、義務を果たしたし、年々上がる税にも耐えていた。しかし蓋を開けてみれば私利私欲のために作られた既得権益を守るシステム上の歯車であったと理解したとき、なにもかもが腹立たしかったあの頃と同じ感覚。




「おまえは今日をもって!「父さん」」



「ど、どうした!モータル!?」




どうして皆間違った構造を叩き壊そうとしないのか、間違った社会に革命を生み出そうとするものに畏怖嫌厭の情を起こして止めようとするのか。



「どうして」




一人じゃ何もできない事実に今も昔も、なにもしなかったから思うのだ。



「こんなにも不甲斐ないのでしょう」





喉元まできた吐しゃ物に不快感を感じながら、無意識に目の前の光景から目を逸らした。




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この世界には魔法があるらしい。

目では認識できないが、確かに存在する。今までの記憶と合算して、政治や宗教、町の特色や歴史からこの世界が何かに似てるとすぐに気づいた。



「魔法があって、政治も中世っぽい。加えてこの意味わからん歴史もドンピシャだよな、最悪だ、」



頭を抱え自室で紙にメモをとって整理していく。



「これ愛アリだよな」



前世で知り合ったネットモに進められ、たまに家にオンラインで一緒にやった、ミステリー恋愛ゲーム「愛とアリバイのミステリー」



難易度は簡単で主人公のロット グレート メインの能力がそれ能力にする必要ある?って感じの能力だった。


その能力はゲームオーバーになった時に時を戻せるという設定だった。

広報が酷かったのか、プログラマーの力不足かわからないが、最初に告知されていた主人公の特殊能力が明かされた発売日、ユーザーからすればただのセーブなのだ。


しかし、そんなおかしさからネットで話題になり、意外にストーリーがいいと評判が良かった。



やっぱり、物を売るときは中身の密度より、イメージが良いが1番なのだと実感したものだ。


それに付随して思い出すのは、就活に失敗した誇り高い自宅警備員の言葉。




「まずは、このモータルってやつぶっ殺すんだよ。したらいっぱいヒロインとのイチャイチャが見れるんだよwへへへ」




なるほど



「この設定がさ、ヒロインのこれがいじめられて、トラウマを抱えちゃうのよ。10年もだぜ!それからヒーローが登場って感じ。まぁなにもしなくても死ぬイベント来るから、いんだけど。忙しいならこのルートが1番だな」



まずい、非常にまずい。予測したより、遥かにやばい。



このままだと普通に絶命まっしぐらだ。



どうするかと、悩むも答えはありきたりなものばかり。


悩んだときは要相談と。




夕方の食事時父に何気なく質問をなげる。




「父上、質問があります。」



「なんだモータル」




「もし、絶体絶命の危機がくるとしたら、父上はどうしますか?やはり戦わねばならないのでしょうか?」



この父の言葉が僕の心に強く残った。



「逃げればいいんだ。お前が守りたいものがあればそれを連れてな。しかし守るものが多いと足は重くなる。昔から大切なものは作らないようにしていたがお前のような宝は意識していてもできてしまう。私からのアドバイスはそれだけだ、どうせ人は守るものができるのだからな。」



「じゃ、じゃあ勝てそうな相手にはどうすれば」



「ぶっ殺しなさい、」




「はい!」



父上の言葉がこれからのやるべきことを鮮明にさせてくれた新しい門出になったのだった。








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