#4【ふたり】約84%の死

 「っっっ!!!……」

「上光……」

犬音と沙耶石は、上光の凶行になす術なかった。二人を見ながら外池の死体に近寄ると、上光は何かを拾い上げた。それは、ボタンだった。

「コレ、オバサンノカ?」

上光は、すぐに押した。犬音達には、作動しているのか全く分からない。少しして上光は、結果を発表した。

「ホォ、ナンヤ、ツカエルンカ。」

「なに!?」

「タニンノボタンハ、ツカエンノカト、カッテニオモイコンドッタワ。」

「つまり、お前は空砲の場所を知ってるのか!」

「マァナ。テカ、オサンクテモ、ワカルヤロ。」

「………………」

確かに上光の言う通り、分かる。外池が挑戦した時点で、空砲が真上に来ていたことは明白。そこで、上光だけが押していれば位置が変わる。空砲が進んでいる上に発射されたとすれば、恐らく5発目。ただし、懸念事項がある。犬音は沙耶石に、小声で確認する。

「外池さんが挑戦する時、ボタン押した?」

「いいえ……」

「本当に?」

「はい。」

「信じるよ。」

「ありがとう、ございます。」

「………………………………」

「………………………………」

「ナニヲ、コソコソ、シトンノヤ!」

二人の不穏な動きに、上光は声を張り上げる。犬音は向き直り、上光に話しかける。

「どうするんですか?」

「ナニガヤ?」

「空砲に、たどり着く方法ですよ。」

「ソラ、カンタンヤ。」

「どうやって?」

「オマエラフタリ、シネバチョウドヤ。」

上光は、ニヤリと笑う。確かに、挑戦者と上光の能力で2発進む。それが2回で、4発進む。あとは自分が挑戦すれば生きて出られる。

「タダ、モンダイガアル。」

「問題?」

「ソコノオジョウチャンノボタン、ナンヤ?」

「!?」

「イマダニ、ツコウテナイヤロ?」

「確かに。」

「ソレト、オマエヤ。」

「自分が空砲の位置をズラせば、アンタは死ぬ。」

「ソヤ。マァ、デキルンダッタラノハナシヤケド。」

「くっ……」

「イママデサンザン、イノチヲマモロウトシタモンナ?」

「………………」

上光の言葉に、犬音は黙るしかなかった。みんなで助かろう、命を大切にしよう、と言ってきた人間が殺しの片棒を担ぐ事は出来ない。上光が死ねば、犬音の言葉は嘘になる。しかし、このままではどうしようもない。

「アッ。」

「?」

「コレデ、イッセキニチョウ、ヤ。」

「???」

上光の言葉に困惑する犬音だが、すぐに考えるのをやめさせられた。いきなり上光の片脚が、犬音の体に撃ち込まれた。大きく吹き飛ばされ、椅子にぶつかりながら床に転がった。痛みに悶えながら起きあがろうとすると、すでに上光が近くに来ていた。そして犬音に馬乗りになると、力任せに拳を振り下ろしまくった。

「オラ!オラッ!オッラ!」

「ガッ……グッ……ギィ…………」

「ヤリカエサンカイ!」

「ウゥ…………」

上光の容赦ない猛攻に、犬音は両腕で、顔を庇うしかなかった。流石の惨状に、沙耶石は止めに入る。

「やめて下さい!」

「ジャマヤ!ドケェ!!!」

「キャーッ!」

沙耶石は上光に突き飛ばされ、悲鳴を上げながら倒れ込んだ。

「沙耶石さん!」

「タニン、キニシテルバアイカ?」

「!!!」

「ダオラ!」

グシャッと鈍い音が、部屋に広がる。上光の拳が、犬音の顔に思い切りぶつかる。すぐに上光は立ち上がると、犬音の腹を何度も振り付けた。

「シネシネ、シネヤ!」

「ングフッ……」

犬音は横に転がり、踏み付けから逃れる。しかし、大の大人の本気の暴力で受けた痛みは、半端ではない。踏まれた腹を抑えて、苦しむだけだった。上光は犬音に近づき、服を漁る。そして、何かを手にした。

「コレガ、オマエノボタン、カ。」

「グッ……」

取り戻そうと手を伸ばすが、全く届かない。

「コイツトホウジョウヲクミアワセリャ、カッタモドウゼンカ。」

「…………!!!」

「フタツモドシテ、コノママイドミャ、カンペキヤ。」

「やめろ!」

「スグニハヤラン。」

「えっ?」

「オジョウチャンガ、ナニスルカワカランカラナ!」

上光は、沙耶石に近づいた。逃げようとするも、すぐに手首を掴まれた。

「離してください!」

「コトガ、スンダラナ。」

「いや!!」

「カンネンシィ。」

「やめて!!!」

「アバレンナ。ボタンサエオサナキャ、ナンモセン。」

沙耶石の手を引きながら、もう片方の手で上光はボタンを押す。犬音から奪ったボタンと死んだ北条のボタンを押して、上光は空砲を真上に移動させるつもりだった。そのまま助かれば、ボタンを持ったまま居なくなる。そうすれば、沙耶石のボタン以外は無くなり、ほぼ挑戦しても死ぬしかない。暴れる沙耶石を引っ張りながら、とうとう上光は磔台の前に立つ。

「コレデ、オレノカチヤ!」

「やめろー!」

犬音は立ち上がり、上光が挑戦できないように突きとばす。よろけながらも犬音を掴み、取っ組み合いになる。グルグルと回りながら、振り回しながら、犬音は妨害する。上光は犬音の背中を殴ったり、腹を蹴ったりする。二人の戦いが続く中、沙耶石は犬音に加勢しようと体をぶつける。流石に上光1人でも、よろめいてしまった。よろめいた先には、幸か不幸か、磔台があった。


ガチャ


金属がぶつかる音が、磔台からする。全員が音の方向を見ると、磔台の手首を固定する金具がしまったのだ。上光の手首が、しっかりと固められていた。ただし、通常とは逆の手であった。右の手首を固定する金具に、上光の左手首がはまっていた。

「ナンヤコレ!!!」

「…………」

動けなくなった上光を、犬音と沙耶石は離れた場所から見つめる。ガチャガチャと外そうとするも、ガッチリと固定されていて動けない。

「ドウスンネン、コレ!」

文句を言いながら、上光は暴れる。すると、部屋が暗転しだした。上からモニター、下から銃が、現れた。きちんと全身が固定されないまま、挑戦が始まってしまったのである。


《挑戦者が決まりました。》


「オイ!マダヤ!」

上光が叫ぶも、止まらない。そのまま、いつも通り挑戦が進行される。


《生き延びる事が出来るのか。それとも死か。》


「デモ、ネネノカ。」

「しまった……」

「サキニ、イクデェ。」

「不完全とはいえ、挑戦が始まってしまった。」

「フタリデ、ナカヨウ、シネヤ!」

「くっ……」


《では、開始です。[ルーレットリボルバー]!》


空砲が真上で、上光が挑戦すれば生き残る方法は無い。犬音は諦めながら、隣の沙耶石を見る。両手で口を抑えながら、上光を見つめていた。勝ち誇り、残った二人を煽りながら、上光はニタニタしながら、銃を見る。不自然な状態とはいえ、空砲なら生き残れる。ギギギと音を立てながら、銃の引き金が引かれる。バンと破裂音が、部屋に響き渡る。そして、ゲームマスターの声が響く。


《参加者、

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