家族ができた
これからどうしたものか。
そう考えたあと、すぐに思い付いたのが衣食住の住、つまり家だった。
でも、私に今、家はない。
だから、誰かに泊めてもらう必要があるが……。
そんな時、一人の女性が路地裏を通った。
遅刻しそうなのか、走っている。
助けて
そう言おうとして、改めてどうやって話しかけようと思い出す。
すると、女性は私のことなんかガン無視で走り去っていった。
次に来た男性は、話しかけてもガン無視だった。
そして夕方。諦め始めた時、男の子と、そのお母さんが歩いてきた。
その二人は私に気づくと、
「どうしたの?家は?」
と質問してくれた。
私はホッとしながら、事情を説明する。
すると、そのお母さんは、私を家にいれてくれた。
感謝はしているが、そんなに不用心で大丈夫だろうかと心配にもなった。
そしてその人の旦那さんはいい人だった。二人とも優しい人同士で、気があったのだろうか。
そして、私を養子として迎えてくれたのである。
養子となった私は、まず名前をもらった。
意味は、色んなところで人生の歯車が狂っちゃっていたけど、また勉強、運動も狂った、スーパー人間になってほしい……ということだ。
まあ、正直適当らしいけど。
とにかく私は、家事などに励むようになった。
たまに、弟の
それに二週間後には、近くの小学校に通えることになった。
小学四年生の一学期の途中からの転校生となるが、絶対目立つだろうなあ、と陰鬱に思う。
まあ、我儘も言ってなんかいられない。一輝だってその学校の一年生だ。少しは上級生らしくしないと。
二週間後はお母さんが行きだけ付き添ってくれるらしいが、帰りは仕事だから、付き添いは無理らしい。なので、一輝と帰るため、一輝が迎えに来てくれるそうだ。
校舎の構造を全部覚えたんだと、自慢気に話していた。
正直、いやもう正直とかでもないけど、滅茶苦茶心配だ……。
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~二週間後~
お母さんと一輝と一緒に、学校へ出発する。
ランドセルなど必要なものは、お父さんが急いで買ってくれた。
とりあえず、五回くらい確認はしたから、忘れ物はない……はずだ。
お母さんと歩く道を、しっかりと覚えながら進んでいく。
一輝を信用していないわけではないが、一応だ。
学校についたら、職員室へ行き、先生に会って、チャイムがなったので教室へ向かう。
そして廊下で待ってろと言われたので、廊下で聞き耳をたてながら待っている。
まず朝の会(?)とやらがあり、それのあと、先生がみんなに、
「じゃあ、先生からお知らせがありまーす」
と言い出す。
転校生でしょ、とみんな騒ぎだす。
みんな噂で知っていたようだ。
先生は、私の話をしはじめる。
「その子はな、親に捨てられて、記憶損失になったところを、親切な人に拾ってもらったんだ。みんなも、そういう人達のようになれよ。みんなも、そんな事情があるから、優しくしてやってくれな。じゃ、入ってきてくれ。」
先生に言われて、私は教室にはいる。
でもその時、私の気分はこれ以上ないくらい最悪だった。
先生に勝手に知りもしないのに私のことを喋られ、優しくしてやってくれって……。
冗談はやめてほしい。そもそも個人情報なのに、勝手にみんなに喋っていいのだろうか?
私が大人だったら、即クレームを入れてるさ。
とにかく、この学校生活は最悪のスタートだった。
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