家族ができた

これからどうしたものか。



そう考えたあと、すぐに思い付いたのが衣食住の住、つまり家だった。



でも、私に今、家はない。




だから、誰かに泊めてもらう必要があるが……。




そんな時、一人の女性が路地裏を通った。


遅刻しそうなのか、走っている。




助けて




そう言おうとして、改めてどうやって話しかけようと思い出す。



すると、女性は私のことなんかガン無視で走り去っていった。







次に来た男性は、話しかけてもガン無視だった。






そして夕方。諦め始めた時、男の子と、そのお母さんが歩いてきた。



その二人は私に気づくと、







「どうしたの?家は?」







と質問してくれた。



私はホッとしながら、事情を説明する。



すると、そのお母さんは、私を家にいれてくれた。


感謝はしているが、そんなに不用心で大丈夫だろうかと心配にもなった。



そしてその人の旦那さんはいい人だった。二人とも優しい人同士で、気があったのだろうか。


そして、私を養子として迎えてくれたのである。


養子となった私は、まず名前をもらった。


狂花きょうかだ。


意味は、色んなところで人生の歯車が狂っちゃっていたけど、また勉強、運動も狂った、スーパー人間になってほしい……ということだ。



まあ、正直適当らしいけど。



とにかく私は、家事などに励むようになった。


たまに、弟の一輝いつきとも遊んでいる。




それに二週間後には、近くの小学校に通えることになった。




小学四年生の一学期の途中からの転校生となるが、絶対目立つだろうなあ、と陰鬱に思う。


まあ、我儘も言ってなんかいられない。一輝だってその学校の一年生だ。少しは上級生らしくしないと。



二週間後はお母さんが行きだけ付き添ってくれるらしいが、帰りは仕事だから、付き添いは無理らしい。なので、一輝と帰るため、一輝が迎えに来てくれるそうだ。



校舎の構造を全部覚えたんだと、自慢気に話していた。


正直、いやもう正直とかでもないけど、滅茶苦茶心配だ……。


◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊◇◈◊


~二週間後~


お母さんと一輝と一緒に、学校へ出発する。




ランドセルなど必要なものは、お父さんが急いで買ってくれた。


とりあえず、五回くらい確認はしたから、忘れ物はない……はずだ。


お母さんと歩く道を、しっかりと覚えながら進んでいく。



一輝を信用していないわけではないが、一応だ。



学校についたら、職員室へ行き、先生に会って、チャイムがなったので教室へ向かう。



そして廊下で待ってろと言われたので、廊下で聞き耳をたてながら待っている。


まず朝の会(?)とやらがあり、それのあと、先生がみんなに、




「じゃあ、先生からお知らせがありまーす」




と言い出す。


転校生でしょ、とみんな騒ぎだす。


みんな噂で知っていたようだ。


先生は、私の話をしはじめる。






「その子はな、親に捨てられて、記憶損失になったところを、親切な人に拾ってもらったんだ。みんなも、そういう人達のようになれよ。みんなも、そんな事情があるから、優しくしてやってくれな。じゃ、入ってきてくれ。」






先生に言われて、私は教室にはいる。



でもその時、私の気分はこれ以上ないくらい最悪だった。


先生に勝手に知りもしないのに私のことを喋られ、優しくしてやってくれって……。


冗談はやめてほしい。そもそも個人情報なのに、勝手にみんなに喋っていいのだろうか?


私が大人だったら、即クレームを入れてるさ。












とにかく、この学校生活は最悪のスタートだった。

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